35-3 采配。
翌日。
クリシュナは、朝食を摂ると、体を少し動かす。
鎧にはまだ慣れていない。
剣は重いが、こちらには慣れてきた。
レヴィは、テント内にいたが、ルークと定時連絡を取っている最中だった。
今頃、ルークは一つ目の都市を制圧している頃だろう。
こちらは、やっと山を下りたばかりだった。
本日には一つ目の都市に到着する予定だった。
「殿下、ルーク様との定時連絡が取れましたので、ご報告します。」
「あぁ、わかった。
その前に、軍議を開こう。
状況を全員で確認したい。」
「わかりました。
では、全員に招集をかけます。」
レヴィは、テントを出ていく。
クリシュナは、紅茶を飲みながら待つのだった。
軍議は開かれた。
招集されたのは、クロムワルツ侯爵にベルガー、ミルドベルゼ子爵に他貴族や、騎士団長たちだった。
テーブルには、ミーディアス王国の地図が乗せられていた。
「まずは、昨日の北方侵攻軍の動きを報告します。」
レヴィの報告が開始される。
レヴィは、白い駒を、東側一つ目の都市に近づける。
「ルーク様の軍は、約1万の敵軍勢と遭遇したそうです。
その1万の軍勢と戦闘となり、壊滅させたとのことです。
壊滅後、そのまま都市を包囲した後、制圧に成功したとのことです。」
これには、「おおっ!!」と驚きの声が上がる。
「1万の軍勢を壊滅させたのか。
自軍の損耗は?」
クリシュナがすかさず質問する。
「損耗はゼロです。
ルーク様は、“軍団魔法”を使ったとのことです。」
「損耗ゼロ!?
さすがは、ルーク様ですな。」
クロムワルツ侯爵が喜々とした表情を浮かべる。
クリシュナも同じ思いだった。
「向こうは順調のようだな。
こちらも後れを取るわけにはいかない。
本日には、敵軍の都市が見えるはずだ。
我らも、負けずに攻略を行うぞ。」
「左様ですな。」
クリシュナの言葉に、クロムワルツ侯爵がうなずく。
クリシュナもまた、ルークに負けないように事を進めることにするのだった。
南方侵攻軍は、進軍を続けたところ、一つ目の都市が見えた。
城外門は完全に閉じられており、籠城する模様だ。
ここで、城外門を中心に包囲した後、軍議が開かれる。
「レヴィ、内部の状況を教えてくれ。」
「はい、説明します。
敵兵力は、約3千です。
一つの城外門に、約500の兵力が集っています。
残り1500名が、城を守っている状況ですね。」
「では、三か所の門を同時に攻めれば、敵は分散できるのだな?」
「はい、可能です。
破城槌については、侯爵殿の説明が必要かと。」
レヴィは、クロムワルツ侯爵に話を振る。
「破城槌は準備済ですぞ。
三か所の城外門を一気に攻めることも可能ですとも。
門を破壊次第、内部に突入し、城外門を抑える形になるでしょうな。
その後、他の城外門に兵を回し、三か所の城外門を支配することにしましょう。
余った軍勢は、城を囲み、破城槌を運びます。
そして、城の門を破壊します。
ここまではセオリー通りとなりますな。」
「では、破城槌による門の破壊、及び城外門の支配を目標としよう。
全軍に通達!
破城槌にて門を破壊せよ!
門を破壊した後、城外門の制圧に動け!」
「承知しましたぞ!」
クリシュナの号令一下、破城槌による門の破壊が実行されるのだった。
破城槌とは、門を破壊するための兵器である。
正面から見ると、三角の形をしている。
それに車輪が複数ついており、それで前後に動くことが可能である。
無論、人力で動く。
かなりの人数の人間が三角の中に入り込み、前へと動かす。
無論、押す力が強ければ、その分、前に進む。
破城槌は木材でできているため、火矢に弱いが、その辺は、侯爵が対策済だった。
燃えにくいように、ちゃんと加工されていたのだ。
よって、死角はない。
破城槌は、門に取り付くと、巨大な槌で門を叩き始める!
無論、槌も人力で動かす必要がある。
思いっきり引っ張って、押し込むのである。
それにより、門が大きくひしゃげ始めるのだ!
槌は何度も何度も、門を叩くも、簡単には壊れない。
だが、侯爵の準備した特別製の槌は、先端に鋼を取り付けてあったのだ。
結果、早い段階で、門にヒビをいれていたのだ!
やがて、門が破壊され、人が数人入れる状態となる。
すると、今度は、兵士が乗り込む番だった。
後ろに控えていた兵士たちが、開いた穴より、敵軍へと乗り込んでいく!
一つの門で、戦線が勃発した!
他の門もまた、穴が開き始め、又は門が砕け、兵士たちが乗り込んでいく!
内部の敵兵士たちは徐々に倒されていき、やがて、城外門は全て、南方侵攻軍によって支配されるのだった。
支配確認後、門が開かれ、破城槌一台が、城に向けて前進する。
次は、城の攻略だったが、ここで夜になってしまったのだった。
都市内部までの制圧が完了したのだった。