35-2 都市攻略。
1万の軍勢は壊滅し、生き残った者たちは、都市内部へと逃げ込んだ。
それでも、数はわずか200名たらずだった。
1万の軍勢は、全滅に近かった。
都市周囲には、死骸が無残にもさらされていた。
ルークの北方侵攻軍は、まずは、三か所の城外門を包囲した。
包囲が完了すると、ルーク自らが動き始める。
正面の城外門に近づくのだ。
その後方には、内部より攻め立てる騎士の軍勢500名が揃っていた。
メリッサも無論、控えていた。
ルークは、城外門に触れるや、呪文を解放する!
「“振動破砕”!!!」
途端、触れていた門の片側が、粉々に崩れ去ったのだ!
内側にいた兵士たちは驚きのあまり固まる。
瞬間だった!
ルークが城外門内部に入り込み、ことごとくの騎士たちを斬り裂いたのだ!!
それは一瞬だった。
全滅していた。
ルークは、全員殺害したことを確認すると、騎士500名に指示を下す。
途端、隊長2名と400の兵士が動き出し、中央広場へと向かっていく。
そして、中央広場で別れ、他二か所の城外門を内側より攻め立てるのだ。
残ったメリッサ率いる騎士100名は、ルークに従い続くのみである。
ルークらは、城に向かい、前進するのみであった。
城には、約50名の敵兵士が固めていた。
門が閉じられていたので、ルークがあっさり破壊する。
そして、門の内側に入り込むや、全員斬り裂くのだった。
これで、50名の兵士は全員殺されたのだった。
ルーク1人でやったことに、皆驚くばかりだった。
「これが、英雄の実力なのか・・・」
そう呟く者もいた。
「では、城内部の探索をお願いします。
メリッサ殿、指揮をお願いします。
僕は、謁見の間に行きますね。」
「承知しました。
では、皆の者、敵城主及び家族を見つけたら、生かして捕らえよ!
兵士は斬り捨てて構わん!
執事やメイドは歯向かうようなら、殺害を許す!
行け!!」
「「「はっ!!」」」
100名の兵士は、城内に入り込むと散っていくのだ。
ルークは、謁見の間へと足を運ぶ。
メリッサも従うのであった。
謁見の間には、誰もいなかった。
メリッサも“情報整理”で確認していたが、別の場所に、城主やその家族がいることを確認している。
そこをこちらの騎士が取り囲んで、取り押さえているようだった。
「ルーク様、ここの城主及び、家族が捕らえられたようです。
いかが致しますか?」
「とりあえず、地下牢に閉じ込めておきましょう。
どうするかは、後で殿下に聞いてみますよ。」
「承知しました。」
ルークは玉座に座ると、待つことにした。
既にできることはない。
制圧もほぼ完了であった。
その時、騎士が1人やってきた。
「閣下、城主及びその家族を捕らえました。
いかが致しましょう?」
「地下牢に閉じ込めておきなさい。」
メリッサが命令すると、騎士はうなずき、すぐさま行動に移す。
「さて、全員捕らえたようですし、執事とメイドをここに集めてください。
説明の上、彼らには我らに従ってもらいましょう。」
ルークがそう告げると、メリッサが動き出す。
制圧戦は既に終了した。
後は、ここに100名の兵士を置いて、次の都市の制圧に動くのみであった。
夜。
ルークのテントには、騎士たちが数人やってきた。
首実験である。
今回は、手柄を立てたものが多かったのだ。
騎士隊長の首がかなり運ばれたのだ。
ルークは“情報整理”で確認し、間違いないことを確認する。
そして、騎士たちを褒めるのであった。
残念ながら、報奨金はここでは渡せない。
まだ戦争中だからである。
領地に帰還してから、報奨金を渡す予定となるため、記録係に記録させていた。
その中に、クロウとゼルディアがいた。
クロウは3つの首をもってきた。
1つは騎士団長の首で、残り2つは騎士隊長の首だった。
「見事だ、クロウ殿。」
「はっ、ありがとうございます。」
そして、ゼルディアも3つの首をもってきた。
1つは、大将を務めていた騎士団長の首だった。
残り2つは、騎士隊長の首だった。
「見事だ、ゼルディア殿。」
「はっ、ありがとうございます、閣下。」
クロウとゼルディアが、一番首を獲った者たちだった。
この2人の活躍により、隊の士気は更に上がるのであった。
「流石は、閣下が魔剣を授けた者たちですな。
大活躍を果たしてくれましたな。」
グレッグ団長が嬉しそうに言う。
「そうですね、これほど活躍してくれると思っていませんでした。
ですが、これで、四都市の軍事力は大きく低下したことを
意味するでしょうね。」
「そうですな。
これならば、残り3つも、問題なく制圧できるでしょうな。」
マクドフェルド伯爵も嬉しそうだ。
今回、1万の軍勢を初回壊滅したことにより、兵士の士気は高くなっていた。
この調子でいけば、残り三都市も、あっという間に制圧できる見込みだった。
だが、ルークは油断していなかった。
情報収集は一切怠りなく、進めていたのだ。
そういう意味では、メリッサはルークの意を汲んでいた。
メリッサは、戦争終了後も、周辺の情報収集を行っていたのだ。
ルークならば、必ずやるだろうと見越してである。
「いいですか、士気が上がったのは良いことです。
この調子で、残り三都市も制圧していきましょう。
ただし、油断は禁物ですよ。
僕とメリッサ殿で周辺調査をしっかり行っています。
臨機応変に対応すべき時もあることを心得てくださいね。」
やはり、この方は油断していなかったと、メリッサは思った。
だからこそ、強いのだ。
この方に油断という言葉はない。
一切の油断なく、物事を進めるのだ。
これがルークの強みでもあったのだ。
「そうですな、さすがはルーク様。
この程度で浮かれていてはいけませんな。」
マクドフェルド伯爵は、ルークの言葉に納得する。
「さて、ルーク様、明日以降の行動ですが・・・」
ルークたちは、明日以降の行動について再確認する。
再確認後、解散となり、それぞれのテントへと戻っていくのだった。