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創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第34章 ミーディアス王国侵攻編・出陣。
358/526

34-4 出陣前日。

一週間が経過した。

城内でも、戦争の準備が着々と整っていた。

そして、今日、騎士団と周辺都市より集った兵士が、都市外で集結することになった。

兵士は、合計で1万5千となる。

ルークも明日には出陣である。

鎧は魔法で出すだけなので、準備は不要だった。

ルークは剣を取り出し、レーヴァテインを乾いた布で磨く。


「いよいよ戦争だ。

 出番は少ないかもしれないが、頼むぞ、レーヴァテイン。」


『お任せください。』


短く言葉を交わし、レーヴァテインを鞘に納める。

ルークは当日、普段着ではなく、魔法騎士の制服を着ていく予定だった。

無論、メイド数名が付いていく。

ルークの身の回りのお手伝いをするためだ。

また、ルーク専用のテントも用意されており、荷馬車に積まれていた。

都市外では、既にテントが張られており、兵士たちが休んでいた。

明日の朝には、テントが片付けられ、荷馬車に乗せた後、出陣となる。



出陣の前に、ルークは仕事の引継ぎを行う。

内政関係は、ガイマンとメルディナにお願いした。

ちなみに、メルディナは戦争に参加はしない。

一応魔導士ではあるが、招集はかかっていないのだ。

魔導士隊は別にいるため、メルディナの力は不要だった。

といっても、魔導士隊は数が少ないので、戦争での役割はほんのわずかであったが。



次に、領内の警備については、騎士団に残る訓練生たちに任せることになる。

訓練生とは言っても、10代の若者ばかりだ。

統制はきちんととれていた。

隊長代理は、既に引退した騎士におまかせすることになる。



それから、城のことは、花嫁たちに依頼済みである。

貴族がやってくることはほぼないだろうが、その対応はアリシアらに任せてある。

問題はないだろう。



もろもろの引継ぎは終わっており、後は、明日を待つばかりであった。

紅茶をすすりつつ、のんびりと過ごす。

そう言えばと、何かを思い出す。

ルークはズボンのポケットから、懐中時計を取り出す。

懐中時計はきちんと時を刻んでいる。

メイリアから渡されて以降、きちんとネジを巻いていたのだ。

魔法を封じる効果があるが、全く使っていない。

一応、顔も知らぬ父親の遺品であるから、魔法を封じる気にはなれなかった。

ただのアンティークとして使っていたのだ。

これも持っていくことにした。



その日の夕食。

ルークが席に着くと、食事が用意されていく。

ルークはのんびりと食事を楽しむ。

ところが、誰もしゃべることなく、皆だんまりだった。

ルークとしては、特に気にしなかった。

また隠し事かとも一瞬思ったのだが、メイドたちに変化もなかったので、無視していたのだ。

その時だった。


「ルーク様。

 今夜、お茶会を開いてもいいでしょうか?」


リリアーナがそう告げたのだ。

これには、他の女性陣が驚いた。

どうやら、予定外のことのようだ。


「はい、いいですよ。」


「ありがとうございます。」


リリアーナはぺこりと頭を下げる。


「えっと、リリアーナの部屋に集合でいいのかな?」


「はい、私の部屋で行います。」


リリアーナははっきりと答えた。

ミレーナたちは顔を見合わせていたが、うなずいていた。


「わかりました。

 では、後程、伺いますね。」


会話はこれで終わり、ルークは食事に集中するのだった。



夜。

ルークはリリアーナの部屋を訪れていた。

すると、メイリアのみいなかった。

珍しいこともあるものだ。

そして、少なからず、皆の表情が陰って見えた。

どうかしたのだろうか?


「ルーク様、お茶をどうぞ。」


その時、リリアーナがお茶をテーブルに置いてくれた。

早速、一口飲む。


「うん、おいしいよ。」


「ありがとうございます。」


リリアーナは笑顔になる。

ここで、他のみんなの顔を見るものの、やはり元気がない。


「えっと、どうかした、みんな?」


ルークが声をかけると、びくっとしたのか、皆驚きの表情を浮かべる。


「ううん、なんでもないよ。」


ミレーナが代表して告げるが、やはり何かありそうだった。

ルークは困ったものの、聞いてみることにした。

ルークはミレーナを見やると、聞いてみる。


「何かあったんですか?

 そんな表情をされると、何かあったようにしか見えませんよ?」


ルークが優しく問いかけると、ミレーナの表情が少し変わる。

泣きそうな顔をしていたのだ。


「帰って、くるよね?」


ミレーナは、そう呟く。


「無論ですとも。

 僕は前回も無事に帰ってきました。

 だから、大丈夫ですよ。」


ルークはミレーナの頭に手を置き、優しくなでる。


「そ、そうよね。

 ルーク様は約束を守るものね。

 必ず帰ってくるもんね。」


ミレーナは無理矢理笑顔を作る。

ただ、悲しい顔は隠せなかったようだ。


「大丈夫ですよ。

 だから、帰ってくるまで待っていてくださいね。」


ルークは笑顔でそう述べるのだった。

その時だった。

アリシアが近づいて来て、ルークに抱き着いたのだ。

明らかに泣いていた。


「アリシア、大丈夫だよ。」


ルークは頭を撫でてやる。


「私も信じています。

 ルーク様が無事帰ってくることを。」


ミシェリはそう言う。

泣きそうな顔をしていた。

ルークは、手を伸ばし、ミシェリの頭を撫でてやる。

体は完全にアリシアに抑えられていたため、両腕のみしか動かせない状況だった。


「ミシェリ、大丈夫ですよ。」


すると、ミシェリがルークの手を掴んで、泣き出したのだ。

ルークはすっかり動けなくなってしまった。

リリアーナのみ、笑顔でみんなのことを見ていた。


「リリアーナもおいで。」


ルークがそう言うと、リリアーナも、アリシアの次に抱き着く。

左腕はミレーナに、全身はアリシアとリリアーナに、右腕はミシェリにそれぞれ捕まり、動けなくなった。

皆、ルークのことを心配していた。

ルークが無事に帰ることを信じているようだ。

だが、それでもやはり心配で、泣いていたのだ。

そして、しばらくルークに会えないことに対しても、泣いているのだった。

ルークはそんなみんなの思いが嬉しかった。

だからこそ、無事に帰ることを誓うのであった。



夜も更け始めた頃に、ルークは解放された。

ルークは四人をそれぞれしっかり抱きしめると、寝室へと移動するのだった。


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