34-3 メリッサの帰還。
ルークが王都より戻った、翌日。
ルークは、メルディナより、メリッサから届いた最新の情報内容を読んでいた。
西方側は五つの都市があることが判明した。
軍事力もそこそこあり、約2万の軍勢があるとのことだ。
ただ、その内一つの都市は、酷いダメージを負っているとのことだった。
どうやら、ここで、皇太子が反抗していたようだ。
その皇太子だが、噂通り殺されていた。
内乱は既に終結しているとのことだった。
元より助ける気はさらさらないので、そこは気にしない。
それから、西方の2万の軍勢が王都に向かっているという情報が書いてあった。
どうやら、こちらの宣戦布告を受けて、防衛のため軍を集めた可能性がある。
敵も、ちゃんと備えているようだ。
それはそれで構わない。
これで王都ミルディアと南方を制圧した時点で、軍事力は無いに等しい状態となるからだ。
後は、王に降伏宣言を発表させれば、西方の貴族たちが降伏する可能性が髙くなる。
こちらの予定は変更する必要がなくなった。
となると、後は、メリッサの帰還を待つのみである。
来週には軍を動かすことになる。
それまでに戻るといいのだが。
翌日。
ルークが仕事をしている時だった。
「ルーク様、聞こえますか?」
「メリッサ殿ですか。」
「はい。」
メリッサからの“思念連結”であった。
「先ほど、都市ルクサスメリルに戻りました。
これより、ルクサスメリル騎士団の隊舎に戻りたいと思います。」
「わかりました。
後程、僕も隊舎へ向かいますので、その時はお願いします。」
「承知しました。」
“思念連結”は切れた。
無事、メリッサは帰ってきた。
ルークは、仕事に集中するのだった。
午後。
ルークはルクサスメリル騎士団の隊舎に来ていた。
すると、隊舎からメリッサが出てきたのだ。
「ちょうどよかったですね。」
「はい、お待ちしておりました。」
「じゃ、団長の執務室に参りましょう。」
「わかりました。」
二人は、団長の執務室へと赴く。
ドアをノックし開けると、グレッグ団長がいた。
「おや、閣下にメリッサ殿。
どうかされましたかな?」
「少し、話をしようと思いまして。」
「そういうことであれば、どうぞ。」
二人は中に入ると、椅子に座る。
「まず、メリッサ殿、情報収集ありがとうございました。
ミーディアス王国はいかがでしたか?」
ルークがミーディアス王国の雰囲気について、問う。
「そうですね。
内乱が収まったとはいえ、戦争に対して嫌悪する者が多かったですね。
やはり、王族同士の争いだったため、
民衆から双方支持されているわけではないですから。」
「なるほどね。
ちなみに、各都市の状況はどうでしたか?
やはり、傭兵や兵士が多かったのでしょうか?」
ルークは、細かい部分について聞いてみる。
「はい、兵士は多く行きかっていました。
傭兵も多かったと思います。
国民は不安がっているようでしたね。
戦争が落ち着いたとはいっても、
ルーニアが攻めてくるのでは?という噂が流れていましたからね。」
既に、ルーニアが攻めてくる噂が流れているようだ。
となると、国民は不安の真っただ中にあるということだった。
これは、早めに戦争を終結させる必要がありそうだ。
「ちなみに、ルーニアに関する噂って、攻めてくるのみでしたか?」
「うーん、そうですね。
他にこれといった噂はなかったと思います。」
どうやら、いつ攻めてくるとかといった情報は出回っていないようだ。
「一つ気になっているのですが、西方から出陣した2万の軍勢は、
今どこに展開しているかわかりますか?」
「確認してみます。」
メリッサは、“情報整理”で確認する。
「王都ミルディアに展開していますね。
動く気配はないようです。」
となると、東にも南にも動けるようにしているということになる。
これは、戦争をしながら、メリッサに随時確認してもらうしかないようだ。
「わかりました、ありがとうございます。」
ルークは、そう告げると、ショートソードを取り出す。
「これは?」
「これはメリッサ殿に渡すために持ってきました。
魔剣です。
さぁ、どうぞ。」
ルークはメリッサにショートソードを渡す。
メリッサは柄とかを見ながら、剣を引き抜く。
薄い紫がかった美しい刀身が、彼女の目に入る。
「綺麗な刀身ですね。」
『ありがとうございます。』
「えっ!?」
メリッサは、ルークを見やる。
「その魔剣の名は、ムーンライトと言います。
その魔剣には意思があります。
あなたとのみ、会話が可能です。」
ルークは、“思念連結”をムーンライトにつなぐ。
「ムーンライトよ、本日より、彼女があなたのマスターとなります。
彼女に尽力してあげてください。」
『承知しました。
ルーク様の言葉に従い、メリッサ様に仕えましょう。』
「ありがとう、ムーンライト。」
メリッサはお礼を述べる。
「メリッサ殿、この剣は魔剣です。
戦争まで期間は短いですが、使いこなしてみてください。
なお、一度僕が剣の強度を確認済みです。
魔力を多く流しても、その魔剣はしっかり制御しますので、
安心してください。」
「そのような魔剣を頂いてもよろしいのでしょうか?」
「構いませんよ。
使い手あっての魔剣です。
これをメリッサ殿が使いこなせると判断したので、あなたに渡したのです。
よろしくお願いしますね。」
「承知しました。
使いこなしてみせます。」
メリッサは、一礼する。
「それから、メリッサ殿には、戦争の間、僕の傍に仕えてもらいます。
参謀という形で、情報収集に集中して頂きたいので。
よろしいですね?」
「承知しました。」
ルークはうなずくと、立ち上がる。
「では、出陣まであとわずかですが、頼みます。」
「はっ!」
これにて、メリッサにも魔剣が渡された。
そして、メリッサの役割も決まった。
ルークは城に戻るのだった。