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創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第34章 ミーディアス王国侵攻編・出陣。
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34-1 会談。②

「それでは、南方侵攻軍について、クロムワルツ侯爵、頼む。」


続いては、南方侵攻軍の説明だ。


「南方軍は、クリシュナ殿下、近衛師団の他、王都の騎士団を率いて、

 南方より攻め込みます。

 まずは、山を登り、ミーディアス王国に入ります。」


クロムワルツ侯爵は、白い駒をミーディアス王国の南方に移動させる。

ミーディアス王国の南方には山が存在しており、これを越える必要があるのだ。

ただし、この山は通常の交易路としても使われているので、登山及び下山は比較的楽なのである。

山を越えるまでの日数がかかるのが難点なのだが。


「山を移動するため、約5日かかる見込みです。

 そして、最初の都市に移動するまでに、3日。

 こちらも、敵の数は、多くないと見込んでおります。

 敵軍はこちらの3万の軍勢に対応できないため、籠城する可能性が髙いでしょう。

 そこで、各都市を落としていきます。

 各都市移動に、3日。

 籠城した都市を落とすのに、3日。

 破城槌を使うので、時間はかかる見込みです。

 合計で、23日程度ですな。」


クロムワルツ侯爵は、白い駒を王都へ近づける。


「破城槌は、山を越えられるのか?

 かなり大きなもののはずだが?」


クリシュナの質問に、クロムワルツ侯爵が回答する。


「問題ありません。

 組み立て式のものを用意しました。

 山越えの際は、パーツとして持っていきますので、

 大きな荷物にはなりません。」


「なるほど。

 組み立て式とは考えたものだな。」


クリシュナは感心する。


「では、話を続けますぞ。

 我らは王都に向かう途中で、ルーク様同様、3万程度の敵と戦う可能性があります。

 ほぼ同数程度の敵とぶつかるわけですから、ここは軍事力次第となるでしょうな。

 ちなみに、援軍は望めるのでしょうかな?」


クロムワルツ公爵は、クリシュナに確認を取る。


「援軍については、父上に要請済みだ。」


「承知しました。

 もし南方侵攻軍が負けた場合は、一つ前の都市に下がる予定です。

 そこで、籠城しつつ援軍を待つことになります。」


クロムワルツ侯爵は、敗北した時の動きもきちんと考えていた。

白い駒を動かし、最後に落とした都市に移動させる。


「もし、南方侵攻軍が敗北し、且つルーク様が王都に王手をかけた場合、

 我らの方に進軍してきた敵軍勢が引き返すことも考慮せねばならないでしょう。

 下手をすると、ルーク様の軍が背後から突かれる可能性もあるでしょうな。」


「なるほどな。

 そうなると、ルークの北方侵攻軍が窮地に陥ることになる。

 王都侵攻どころではなくなるな。」


クリシュナも考える。


「一つ策があります。

 聞いて頂けますか?」


ルークの言葉に、皆が注目する。

ルークは袋の中から、箱を取り出して、テーブルの上に置く。

そして、箱を開けて、宝珠を取り出す。


「これは?」


「これには、“軍団魔法(コープス)”の魔法が封印されています。

 この宝珠には、ラインクルド王国で使用したものと

 同じ効果を持つ魔法が封じてあります。

 これをお使いください。

 これで、敗北はありえないと考えています。」


クリシュナは、宝珠を受け取り、眺める。


「君というやつは、とんでもないことを考えたものだな。

 だが、今回の戦争は負けられないからな。

 使わせてもらおう。」


クリシュナはうなずいた。


「では、予備も含め、渡しておきます。」


ルークは、袋から残り二つの箱を取り出し、テーブルの上に置く。


「ふむ、これだけあれば、西方攻めにも使えそうですな。」


クロムワルツ侯爵は喜々として述べる。


「これで、南方侵攻軍の負けはなくなったな。

 ルークたちが背後を突かれる可能性もなくなったわけだ。」


クリシュナは、懸念が無くなったことを喜んだ。


「王都制圧後、ルークは合流を待ってほしい。

 南方侵攻軍に合流した後、西方への侵攻について相談するとしよう。」


「わかりました。」


ルークはうなずく。

これでおおまかな侵攻作戦は決まったのだった。



「今回、南方侵攻軍の指揮は、クロムワルツ侯爵にお願いすることにしよう。

 私は、お飾りとして総大将を担うことになっただけだ。

 指揮を執るつもりはない。」


これには、クロムワルツ侯爵が驚く。


「殿下、何をおっしゃいますか!!?

 皇帝陛下は、殿下が活躍される姿をみたいのですぞ!!」


確かに、今回クリシュナに総大将を任せられたということは、クリシュナの活躍を期待してのことだった。

だが、肝心のクリシュナは、軍事に疎いこともあってか、指揮権を譲ろうとしていた。


「これは、ここだけの話として聞いてくれ。

 私は、軍事には疎い。

 そんな私が総大将に選ばれた時、

 これは私には到底できない話だと思い込んでいた。

 内政と異なり、自信がわかないのだ。

 それに、戦場に立つのが怖いのかもしれない。

 剣もロクに握れん、ただの頭でっかちの皇子なのだからと、

 何度も回想するんだ。」


クリシュナは一息つくと、言葉を続ける。


「今回の戦争、私は無理矢理参加することになった。

 これは受け入れよう。

 だが、指揮を執るには、私は経験不足だ。

 状況判断も皆に任せきりになるだろう。

 そんな自分が、指揮を執っていいのか、疑問なのだ。

 だから、今回は、侯爵殿に全て任せようと考えたのだ。

 私では、荷が重すぎる。」


クリシュナはため息を吐いた。

少しの間、静寂が訪れる。

だが、その静寂を破ったのは、ルークだった。


「クリシュナ殿下、お飾りでもいいじゃないですか。

 ここは一つ、指揮を執ってみてはいかがでしょうか?

 無論、侯爵殿やベルガー殿、レヴィ殿や、

 家臣たちの意見を聞くことを前提にしてです。

 殿下は、判断能力に優れています。

 ですから、剣を握らずとも、その判断能力で戦争を動かすことは可能ですよ。

 僕だって、ラインクルド王国で軍権を与えられて、

 最初はとまどっていましたけど、何とかなりました。

 きっと、殿下も、何とかなりますよ。」


ルークの言葉に、クリシュナは何かを得たような心地になっていた。

それが何なのかまではわからないのだが。


「殿下、我らにも初めてのことは必ずあります。

 私も侯爵になって、何度か戦争で指揮を執りました。

 初めての時は、本当に怖かったです。

 ですが、なんとかなるものですぞ。

 今も、指揮を執るときは、気を引き締めなくてはできませんからな。」


クロムワルツ侯爵は笑って見せる。


「そうか。

 誰しも怖いものなのか。

 それでも何とかなるとは、滑稽なものだな。

 ・・・わかった。

 指揮を執ってみよう。

 皆に頼ることになるが、よろしく頼む。」


そして、クリシュナは頭を下げるのであった。



その後、細かい打ち合わせを行い、解散となった。

戦争の方針は決定したのであった。

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