33-6 魔剣の修行の成果。②
「次は、ゼルディア殿、お願いします。」
「はっ!」
ゼルディアは、結界の中に入ると、剣を引き抜く。
「いくぞ、ディルンウィン!!」
『承知です!』
途端、ゼルディアの剣に風が纏わりつく。
逆巻く風は、急激に伸びていく。
瞬間、ゼルディアは横薙ぎを放つや、全てのかかしもどきが斬り裂かれる!
凄まじい威力だった。
ルークは、すぐさま、かかしもどきを復帰させる。
ゼルディアはそれを確認すると、剣を正眼に構える。
剣に風が纏わりつき、と同時に、ゼルディアの両足にも風が纏わりつく。
ゼルディアが地を蹴った瞬間、ゼルディアが前方向に回転しながら突き進む!
しかも、かかしもどきをことごとく薙ぎ倒していくように、斬り裂いていく!
かなり早い速度であった。
ゼルディアは、回転を止めると、元の位置に戻る。
ルークは再び、かかしもどきを復帰させる。
「ディルンウィン、風を纏え!」
ゼルディアがそう告げた瞬間、ゼルディアの周囲に風が纏わりつく。
ゼルディアはその状態でかかしもどきに近づいた瞬間、かかしもどきが斬り裂かれる。
どうやら、攻防一体の陣を極めたようだ。
ルークは試しに、結界の中に入り、鋼のクナイのようなものを出現させるや、投げつけた!
途端、クナイは弾かれるどころか、斬り裂かれ霧散したのだ!
次にルークは初級の魔法を無詠唱で出現させる。
“火炎矢”だった。
「行け!」
ルークの掛け声で複数の矢が射出されゼルディアに迫るが、風に触れた瞬間、消失したのだ!
魔法に対しても、十分な防御をもっていることが証明されたのだ。
ゼルディアは、結界を解くと、風が消える。
ゼルディアは少々疲れた表情をしていた。
ルークとゼルディアは結界を出る。
「十分、合格ですよ。
よく使いこなせるようになりましたね。」
「はい、ありがとうございます。
最後の風を纏う件については、長時間はまだ無理です。
かなり魔力を消耗するので、ピンチになった時にしか使えませんね。」
「それでも十分な威力でした。
攻撃においても、防御においても、十分合格レベルでしたよ。」
「ありがとうございます。
閣下に追いつこうと修行を重ねて正解でした。」
ゼルディアは嬉しそうだった。
これで、ゼルディアも魔剣を使いこなしていることが判明したのだった。
「二人は魔剣を使いこなしていることが、よく確認できました。
近々、戦争があると思います。
その際、強敵に遭遇する可能性があることも考慮しておいてください。
その時は、魔剣の力を活用して戦ってくださいね。」
「「はっ!!」」
二人の言葉が揃った。
「さて、ちょっとだけおまけです。
実は僕も新しい魔剣を見つけてきたので、
ちょっと試してみたかったんですよ。」
ルークは、ショートソードを見せる。
「ルーク様が使う予定なのですか?」
クロウの質問に、ルークは首を横に振る。
「いえ、現在密偵中のメリッサ殿に譲る予定です。
ちょっとどこまで耐えられるか、テストしたいと思いましてね。
二人も見ていてください。」
二人は、コクリとうなずく。
ルークは結界内に入ると、かかしもどきを出現させる。
「ムーンライト、出番です。
あなたの主となる人は、水系統の魔法使いです。
ですから、水系統の魔法を纏わせますから、制御してみてくださいね。」
『承知しました、マスター』
ルークは、ムーンライトに魔力を流した瞬間、巨大な氷の刃ができあがる!
ルークが横薙ぎした瞬間、かかしもどきは一掃されたのだ。
「次にいきましょうか。」
ルークはかかしもどきを復帰させる。
剣を正眼に構え直し、水を纏わせる。
水は、剣を中心に取り巻くように、回転してまとわりつく。
そして、ルークが大きく振りかぶり、剣を降ろした瞬間、回転した水が飛び出していき、まるで竜の如く飛翔し、かかしもどきを斬り裂いていく!
水が通った道には、かかしもどきは存在していなかった。
ルークは、かかしもどきを復帰させると、かかしもどきの中心地点に移動する。
そして、ムーンライトに魔力を流す。
途端、水のバリアのようなものが出現し、かかしもどきをことごとく斬り裂いていく!
威力は十分であった。
「さて、十分です。
お疲れ様でした、ムーンライト。」
『はい、マスター』
水のバリアは消失すると、かかしもどきが一切ない状態となっていた。
ルークはかなり多めの魔力を使用したが、ムーンライトは見事に制御してみせたのだ。
十分に使える剣であった。
ルークはショートソードを鞘に納め、結界の外に出る。
「お見事でした。」
ゼルディアは感嘆したのか、そう告げる。
クロウは何も言えないのか、その素晴らしさに感動しているようだ。
「ありがとうございます。
と言っても、僕は強度と威力を確認しただけなんですけどね。
これを使いこなす予定のメリッサ殿に、
十分強い魔剣ですよと説明できればいいんです。」
「それでも、我らの魔剣と遜色ない威力を誇っておりました。」
「そうですね。
どういう経緯で造られた魔剣なのか、不明なままなんですけど。
十分強いので、これはメリッサ殿に是非とも使いこなして欲しいところです。」
ルークはそう語る。
メリッサは、冬が明ける前には戻ってくるはずなのだ。
その時に、これを渡す予定なのだが、短期間で扱えなくても問題はないという認識だった。
だが、メリッサのことだ。
すぐに扱えるようになるかもしれない。
ちょっとだけ期待することにしたのだった。
この日は、これで解散となった。
クロウもゼルディアも、元の訓練に戻っていった。
ルークは、城に戻り、ムーンライトを保管するのであった。