33-6 帰還と報告。②
ルークが執務室で、書類を見ていたところ、ノック音が聞こえる。
ルドルフが対応すると、ミレーナとミシェリの姿が見えた。
「ルーク様、ミレーナ様とミシェリ様が参られましたが・・・」
「うん、通して上げて。」
ルークは、椅子を立ち上がると、ソファへと移動する。
ミレーナとミシェリが入ってきて、ルークの向かいのソファに座る。
ルークが話を聞く前に、ミレーナが話し始める。
「ルーク様、お願いがあるの。」
「明日、お買い物に付き合ってほしいのです!」
ミレーナ、ミシェリの順に話したのだ。
「えっと、何を購入するんでしょうか?」
「サーシャ姉さまのお祝いの品に決まっているでしょ。」
ミレーナがビシッと宣言する。
これにはルークも驚く。
「・・・わかりました。
では、明日護衛を付けて・・・」
「ううん、ルーク様にもお付き合いしてほしいのです。」
「・・・はい?」
ルークは何故と疑問に思う。
「私たちはお金持ってないから、支払いをお願いしたいの!」
あ、なるほど。
確かに、貴族はお金を持たない。
支払いは付き人である執事やメイドが行うのが通例なのだ。
そして、お金を今持っているのは、ルークだった。
しかも、かなりの金額を持っている。
「じゃ、僕が行かなくても、大丈夫ですよね。
執事にお金を持たせます。
それでいかがでしょうか?」
ルークの提案に、ミレーナが睨み付ける。
なぜ?
「ルーク様にも来てほしいの!」
「何故です?
僕が行くと、混乱を巻き起こすだけなので、避けたいのですが。」
そう、ルークが行くと、大変なことになるのだ。
ルークはこう見えても、英雄なのである。
庶民の人気は非常に高い。
よって、安易に城下町を歩くようなら、捕まること間違いなしである。
だから、城下町に行きたくとも行けないのだった。
「変装すればいいじゃない?」
ミレーナはそう言うものの、ルークは困る。
そこで、ルークも考えてみる。
変装か、変装ねぇ・・・
いっそのこと、執事にでも変装してみるか?
「ルドルフ、僕のサイズに合う、執事服はありますか?」
「あると思いますが、まさか・・・!?」
ルドルフは驚く。
「うーん、この格好で行くと、民衆に捕まる可能性が髙いからね。
変装していこうと思うんだけど、執事しか思いつかなくてね。
どうかな?」
「確かに、外に出歩けば、民衆が寄ってくる可能性は高いでしょうな。
執事服を着ていれば、目立たなくて済みそうですな。」
ルドルフも、同意見のようだ。
「じゃ、ルドルフ、執事服の手配を頼むよ。
これでどうですか?」
ミレーナとミシェリはとりあえず納得したのか、相槌を打つ。
「わかったわ。
確かに、ルーク様は人気者だもんね。
それで手を打つわ。」
ミレーナの言葉に、ルークはほっとするのだった。
こうして、ルーク用の執事服が用意されることになるのだった。