33-6 帰還と報告。①
教官となってから、一週間が経った。
訓練も終わり、夕方になった。
ルークは、ベルガーの元へと向かうのだった。
「ルーク、君には本当に感謝する。
今までご苦労であった。
大変助かったよ。」
ベルガ―が感謝の弁を述べる。
「いえ、こちらこそ。
また何かあれば、力になりますよ。」
ルークはそう告げると、隊舎を出ていくのだった。
これにて、教官の仕事はお終いであった。
その日は、ミルドベルゼ子爵の屋敷で一泊することになった。
翌日。
ルークは、都市ルクサスメリルへと帰還していた。
帰還後、早速城に戻り、メイドにより普段着に着替えさせられる。
そして、公爵の仕事に取り掛かるのだった。
昼食。
花嫁たちは、ルークが戻っていることに喜んだ。
「おかえりなさい。
どうだった?」
ミレーナの質問に、どう答えたらいいかちょっと困る。
「そうですね、教官の仕事だったので、
近衛師団の皆さんは成長したと思いますよ。」
「よかったわね。
で、兄さんは元気だった?」
ミレーナの質問であの事を思い出す。
「そういえば、ミレーナとミシェリに報告があるんですよ。
サーシャさんが妊娠したそうですよ。
来年の秋には、赤ちゃんが生まれるそうですよ。」
「それはホント?」
「それは本当なの?」
ミレーナとミシェリの言葉が重なった。
「はい、サーシャさんからお聞きしましたので、本当のことですよ。
お二人にも会いたいそうなので、今度行きませんか?」
「行くわ!」
「行きます!」
またもや、ミレーナとミシェリの声が重なる。
「となると、何か持っていかれてはどうでしょうか?
例えば、出産なさるのでしたら、お祝いの品でも。」
リリアーナが提案する。
「そうね、何がいいかしら・・・?」
ミレーナが考え込むと、メイリアが目に入る。
「そうだ、お母様、後程相談させてもらってもいいですか?」
「はい、いいですよ。」
メイリアはにこやかに答える。
「ルーク様、とりあえず、サーシャ姉さまに会うのはちょっと待ってね。
色々準備するから、待ってね。」
ミレーナがそういうので、ルークはうなずく。
「わかりました。
行く準備が整ったら、教えてください。」
ルークの言葉に、ミレーナとミシェリはうなずくのであった。
昼食が済むと、ミレーナとミシェリは早速、メイリアの部屋へとお邪魔する。
そして、すぐに相談を開始する。
「お母様、子供が生まれる場合のお祝いの品って、何がいいでしょうか?」
「私もお聞きしたいです。」
メイリアはちょっと考える。
昔のことを思い出していたのだ。
「そうですね、例えば、柔らかいタオルとかは好まれますよ。
赤ちゃんは常に清潔でないといけませんからね。
タオル類はたくさんあるとありがたいですね。
また贈り物で多かったのは、幼児向けのおもちゃなんかでしょうか。
木で作られたものなんかは、好まれますね。」
「なるほど・・・」
二人は頭の中にインプットしていく。
「変わりもので困ったものは、金銀細工の腕輪とか、指輪なんかでしょうか。
まだ子供ですから、誤飲してしまう可能性があったので、
大きくなるまで渡せなかったですね。
ですから、子どものためというよりは、
子育てで役に立つものがいいと思いますよ。」
「なるほど・・・」
二人はしっかり話を聞いていた。
だが、一つ、悩ましい問題があった。
「問題はお金ね・・・」
「予算はあるんでしょうか・・・」
「そこは、ルーク様に聞いてみないとダメですね。」
メイリアは苦笑する。
「じゃ、ルーク様に購入してもらいましょう。
私たちで、選ぶのはいかがでしょうか?」
ミシェリの提案に、ミレーナは乗った。
「それ、いいわね。
じゃ、ルーク様を連れていきましょう!」
「いついきましょうか?」
「明日にしましょう。
早いほうがいいにこしたことはないわ。」
ミレーナは即断即決だった。
そして、メイリアに向き直る。
「お母様、ありがとうございます。
とても参考になりました!」
「それはよかったわ。」
メイリアは嬉しそうだった。
「それじゃ、失礼しました。」
二人は、慌てて出ていくのだった。
「あの子たちにも子ができたら、もっと騒がしくなるのね。」
メイリアは、まだ見ぬ未来を夢見ているのであった。