33-4 王都へ。②
夕方。
訓練が終わり、皆、隊舎へと戻っていく。
ルークは、“思念連結”で、レイヴンに連絡を取ってみることにした。
「ん?ルークか?」
「お久しぶりです、レイヴン。」
どうやら、つながったようだ。
「あぁ、久しぶりだな。
どうしたんだ?」
「実は今王都にいまして。
お願いがあるんですが、一週間ほど泊めてもらってもいいですか?」
「あぁ、構わんとも。」
レイヴンは即答だった。
「じゃ、今から向かいますね。」
「あぁ、すぐに来い。
夕食の準備をしているから、夕食もごちそうしよう。」
レイヴンはそう言ってくれたので、ルークは言葉に甘えることにした。
「では、失礼しますね。」
ルークは、“思念連結”を解除し、“瞬間移動”にてミルドベルゼ子爵の屋敷へと転移する。
屋敷前に到着すると、そこには、ポールがいたのだ。
突然、ルークが目の前に出現したので、驚いていた。
「これは、ルーク様!?
驚きました、突然現れたので。」
「ポールさん、お久しぶりです。
レイヴンはいますか?」
「無論、おりますとも。
ささ、中へどうぞ。
食堂に案内しましょう。」
ルークはポールに案内されて、食堂へと移動した。
「すぐに来たのだな。
ようこそ、ルーク。」
食堂に到着すると、レイヴンとサーシャが待っていたのだ。
「お久しぶりです、レイヴンにサーシャさん。」
「さ、食事にしよう。
座るといい。」
ルークが座ると早速、食事が運ばれてくる。
ルークは、のんびりと食事を楽しむのだった。
「さて、色々聞かせてもらおうか。」
三人は応接室へ移動すると、レイヴンがそう言った。
「まずは、王都にいる理由から説明しましょうか?」
「そうだな、まずは聞かせて欲しい。」
「実は、近衛師団の団長ベルガ―さんの依頼で、
一週間ほど近衛師団の訓練の教官を務めることになりました。」
「なるほどな。
となると、戦争が近いということかな?」
レイヴンは鋭かった。
「その通りです。
ミーディアス王国の件で、陛下が動く可能性が髙いとのことです。」
「やはりそうか。
いずれ動くとは思っていたが、そろそろ動かれるか。
となると、近衛師団だけではないのだろう?」
「そうですね、聞いた話では、
クロムワルツ侯爵を中心に軍編成される見込みだとか。
およそ3万の軍勢を形成し、南から攻め込むそうです。」
「となると、君は北から攻めるつもりなのか?」
「おそらく、そうなると思います。
一応、フェイブレイン家は前線にいますからね。
でも、僕のところは、およそ2万の軍勢しか動かせないですけどね。」
2万の軍勢は決して少ないというわけではない。
だが、敵の総勢がどの程度かわからない以上、不足と捉えても仕方ないのだ。
「まぁ、君が前線に立てば、負け戦はないだろうな。
君は、皇国最強の騎士だ。
それに、ラインクルド王国の件、聞いたぞ。
君は軍を率いて、かなりの活躍をしたそうじゃないか。
君ならば、2万の軍勢すらもうまく使ってみせるのではないかな?」
どうやら、レイヴンはラインクルド王国の件を、どこかから聞きだしたようだ。
それを知る以上、ルークが軍略に長けた騎士であると、受け取っても仕方なかった。
「そんなに、大したことはしたつもりはないのですが・・・」
「そうかな?
君はたった2万の軍勢で、3万の軍勢を壊滅させたそうじゃないか。
しかも、“軍団魔法”のみで対抗したとか。
普通に考えれば、そんな簡単にできることではないぞ。」
どうやら、使った魔法までバレているようだ。
「ホント、何でも知っているんですね。
さすが、耳が早い。」
だが、レイヴンは笑うのみである。
「これくらいは、私の情報網にすぐに引っかかるさ。
だが、クロムワルツ侯爵は更に早いからな。
今頃、君の活躍を喜んでいることだろうな。」
確かに、それはありうることだった。
クロムワルツ侯爵は情報通で有名だ。
どこで知ったのか、ルークの噂や内政のことなんか全て知っているのだ。
たぶん、街道の件も既に知っているだろう。
「ちなみに、レイヴンも戦争になれば動くのですか?」
ルークは念のため、聞いてみることにする。
「そうだな、動くだろうな。
一応、2千の兵を預かる身だからな。
それに、ミーディアス王国を滅ぼせば、出世のチャンスがある。
伯爵になれば、サーシャを城に住まわせることも可能だしな。」
レイヴンはそんなことを言って見せる。
「私のためだけではないでしょ?
お腹の中の子のためでもあるでしょう?」
サーシャは、レイヴンに突っ込みをいれる。
お腹の中の子・・・?
「えっと、お腹の中の子とは一体・・・?」
ルークは、サーシャに質問していた。
「はい、子供ができました。
来年の秋には、出産予定なんですよ。」
サーシャはにっこりとした笑みで答える。
「それは、おめでとうございます。
これは、ミレーナとミシェリにお知らせしないと。」
「ありがとうございます、ルーク様。
旦那様も、この子のために、頑張ってくださっているんですよ。」
サーシャはにこにこしながら答える。
「子供が出来たのだ、ここで頑張らなくてどうする。」
レイヴンは嬉しそうな表情をしていた。
「今度、ミレーナとミシェリを連れてきますね。
二人はきっと喜びますよ。」
ルークがそう言うと、サーシャは嬉しそうに笑う。
「はい、楽しみにしてますね。」
「ついでだ、ミレーナの花嫁修業の状況も聞くとしよう。」
レイヴンはいじわるだった。
「ミレーナですか?
最近、お茶会をしたのですが、お茶がとてもおいしかったですよ。
それに、ケーキも作れるようになっていましたよ。」
「ほぉ、それは楽しみだな。」
レイヴンは、嬉しそうに笑うのだった。
こうして雑談が進み、すっかり夜遅くなるのだった。
ルークは広い客室に、一泊させてもらうのだった。