31-8 魔剣復帰。
ルークは執務室に戻ると、魔剣を一本取り出す。
柄に華美な装飾が施された剣だ。
剣本体は、ボロボロなので、このままでは使えない。
刃を手のひらに乗せて、「創造系魔法」を使う。
使うのは、『魔剣生成』だった。
すると、ボロボロの刃が補修されていき、美しい刃へと変わっていく。
補修後に確認すると、儀礼用の剣のような美しさであった。
柄のみならず、刃もまた美しく施されていたのだ。
しかも、魔力もきちんと持っている。
一旦、修復が完了したので、床に置いて、次に折れた剣を取り出す。
そして、先ほど同様、手のひらに乗せて、『魔剣生成』を行う。
すると、折れた部分が生えてきて、しっかりとした剣状の姿へと変わったのだ。
ロングソードより少し長めの剣だった。
ちなみに、二本とも、名前の無い剣だった。
“情報収集”を使っても、名前が表示されなかったのだ。
これは、名付けをして、主を見つけてあげた方がいいのかな?
とりあえず、次の段階へと進める。
華美な剣へと持ち替え、両掌に乗せ、『魔剣進化』を行う。
すると、声が聞こえ始めたのだ。
『ワタシハ・・・ダレダ・・・』
「僕の声は聞こえるかい?」
『・・・キコエル・・・』
「君の名前は?」
無駄かもしれないが、聞いてみることにした。
『ワタシニハ・・・ナマエハ・・・ナイ』
やはり、名無しの剣だった。
ルークは、この剣の特性を調べてみた。
再度、“情報収集”を行う。
儀礼用の剣とはいえ、属性は持っているはずだった。
すると、水系統であることが分かった。
そうなると、名前もそれっぽいのがいいだろう。
「そうだな、お前に名を授ける。
お前の名は『グラスフィア』だ。」
『グラスフィア・・・ワタシノナマエ・・・』
瞬間、グラスフィアは輝き出す。
強力な魔力が、剣全体に流れ出す。
それと同時に、片言だった言葉が、流暢になる。
『私は、グラスフィア。
主に力を与えるものでございます。』
「あぁ、頼むよ、グラスフィア。」
『承知!』
ルークは一旦、グラスフィアを置くと、もう一本の剣を手にする。
そして、先ほど同様、手のひらに乗せて、『魔剣進化』を行う。
すると、片言の言葉が聞こえ始める。
『ワタシハ・・・ダレダ・・・』
ルークは属性を調べてみる。
今度は風系統の魔剣であった。
この剣にも名はないので、名付けしなくてはならない。
「お前の名は『ディルンウィン』だ。」
『ソレガ・・・ワタシノ・・・ナマエ・・・』
瞬間、風が剣にまとわりつき、刃先が綺麗な青に染まる。
そして、風が消滅する。
『私は、ディルンウィン。
マスターに忠誠を捧ぐものなり。』
「よろしくね、ディルンウィン。」
『はっ!』
強力な魔剣が二本誕生した瞬間だった。
はて、この魔剣、誰に預けるべきかな・・・
ルークは、そんなことを考えつつ、二本の剣の鞘を用意すべく、ルドルフに依頼するのだった。