31-7 宝物庫の掃除をしよう。
翌日。
ルークは仕事が終わると、またも思いつく。
そういえば、ラインクルド王国に行く前に、宝物庫の掃除をしないといけないなと思っていたのだ。
鍵はルークしか持っていないので、誰でも簡単に入れる場所ではないのだ。
そこで、掃除をしてもらおうと考えたのだ。
こういうのは、忘れないうちに依頼すべきなのだ。
「ルドルフ、一ついいかな?」
「はい、なんなりと。」
ルークは、宝物庫の鍵を見せながら依頼をする。
「先日、宝物庫がだいぶ汚れていたのを確認したんだ。
そこで、宝物庫の掃除をしてもらいたいんだ。
何名か執事やメイドを集めて欲しいんだけど、頼めるかな?」
「宝物庫でございますか。
しかし、よろしいのですか、我らが入っても?」
そう、宝物庫は基本、城の主である公爵以外は入ることを固く禁じられている場所である。
よって、使用人が安易に入るわけにもいかないのだ。
だが、ルークは気にしないのだ。
「うん、そこは構わないよ。
それに宝物庫なのに、中が汚れていたら意味がないでしょ?
宝物を汚しているのと変わりないわけだし。
この機会に、一旦掃除をして、綺麗にしておきたいんだ。」
ルドルフは、ルークの言葉にうなずくのだ。
「承知いたしました。
では、さっそく、執事とメイドをかき集めましょう。」
「あ、結構汚いから、汚れてもいい服で来るように伝えてくれるかな?」
「承知しました。」
こうして、ルドルフは、人員をかき集めるべく、執務室から退出するのであった。
その後、宝物庫の掃除をするメンバーに集まってもらった。
メイド3名、執事2名の計5名が集まったのだ。
掃除用具も完璧である。
ということで、ルークは5名を伴って、宝物庫へと向かうことになった。
宝物庫の鍵を開け、中に入って蠟燭に火を灯す。
中は、以前と同じく、かび臭かった。
「じゃ、申し訳ないですが、掃除をお願いするよ。」
「「「承知いたしました。」」」
皆、ルークに頭を下げると、掃除に取り掛かる。
まずは、戸棚の埃取りから行い、床に落ちた埃をホウキではく。
塵取りでゴミや埃を回収していき、袋に詰めていく。
次に拭き掃除だ。
こびりついた埃やカビを落としつつ、綺麗に磨いていく。
宝物庫の宝物は、ほとんどが箱や筒状のものに入っていたため、中身は無事だった。
ただ、何年くらい掃除していないのかわからないくらい、汚かったのだ。
これは、過去の領主たちが、掃除をサボった結果といえるだろう。
ルークとしては、今後も定期的に掃除しないといけないと考えるのだった。
ルークはとりあえず、外で待つことになったのだ。
手伝いはできないのだ。
ここの主である以上、掃除はメイドや執事の役割だったからだ。
二時間ほど経過したところで、掃除は完了した。
ルークはみんなに労いの言葉をかけると、全員頭を下げ、着替えと片付けのため、退散するのだった。
ルークは綺麗になった宝物庫の中に、足を踏み入れる。
かび臭かった匂いは消えていた。
宝物庫は蝋燭の灯りによって明るく照らされていた。
とりあえず、宝物庫にあるものを一通り確認してみるため、“情報収集”を使ってみる。
すると、ほとんどは骨董品だった。
芸術品もあるのだろうが、ルークは興味が無かった。
そのうち、古美術商に売ってしまってもいいかもしれない。
そんな中、気になるものを見つけた。
二本の魔剣を見つけたのだ。
両方とも、本物の魔剣だった。
片方は、柄が華美な施しがされた綺麗なものだったが、剣本体がボロボロだった。
もう一本は、ある程度原型はとどめていたが、途中で折れたものだった。
折れた破片は見つからなかった。
だが、ルークが魔法で集めた情報では、間違いなく魔剣だった。
他にも剣や鎧があったが、完全に飾りであった。
後で、纏めて売り払うか。
そんなことを考えるのだった。
ルークは宝物庫の確認を終えた後、蝋燭の火を消して、鍵をかける。
その手には、先ほど見つけた二本の魔剣が握られていたのであった。