31-6 メリッサを教育してみた。
翌日。
ルークは仕事を終えると、一つ思い出していた。
メリッサの件である。
メリッサには、諜報任務についてもらう必要がある。
そのためには、“瞬間移動”を使えるようになってもらわないと困るのだ。
他に、使えそうな魔法がないか、検討してみる。
主な情報収集用の魔法として、“情報整理”は扱えている。
となると、侵入や逃走を行う際の魔法があれば良いかもしれない。
都合がよい魔法は、“隠蔽”くらいだろうか。
ということで、“瞬間移動”と“隠蔽”の二つの魔法を教えることにした。
早速行動だ。
ルドルフにルクサスメリル騎士団に行くことを告げて、ルークは城を出た。
そして、“瞬間移動”にて、移動するのだった。
ルクサスメリル騎士団に到着後、隊舎に向かい、メリッサを呼び出してもらうことにした。
すると、訓練場で訓練中とのことだったので、案内してもらうことにした。
メリッサは剣の訓練中だったので、ちょっと呼んでもらうことにした。
「ルーク様、お呼びでしょうか?」
「うん。
実は諜報任務に必要そうな魔法を思いついてね。
メリッサ殿が扱えるかどうか確認にきたんだ。」
「どのような魔法でしょうか?」
「まずは、“瞬間移動”。
知っての通り、転移することが可能な魔法です。
そして、“隠蔽”。
自身の姿を隠す魔法です。
どうかな?」
メリッサは考えるも、使えないようだ。
「“瞬間移動”の魔法は知っていますが、使えません。
“隠蔽”という魔法は初耳です。」
「じゃ、使えるように修行しましょうか。」
「わかりました。
よろしくお願いします。」
メリッサは頭を下げるのだった。
まずは、魔法の理論の説明だ。
両方とも難しくはない。
一からわかりやすいように、噛み砕いて説明を行う。
そして、実践してみることになった。
“瞬間移動”は高等魔法に属するため、少々難しい。
だが、理論を理解したのであれば、使いこなせるのだ。
メリッサは、数回唱えてみたが、失敗していた。
だが、20回目くらいで、転移に成功したのだ。
「うまくいきました。
これでよろしいでしょうか?」
「うん、それでOKだよ。
後は、遠距離がうまくいけばいいんだけど・・・」
「ちょっと試してみます。
・・・“瞬間移動”!!!」
メリッサの姿が完全に消えた。
どうやら、遠くへと転移したようだ。
待つことしばし。
メリッサが隊舎のほうから歩いて戻ってきたのだ。
「どこまで行ってたんですか?」
「はい、まずはこの都市の城外門の方へ飛びました。
その後、城外門を出て、ラインクルド王国の王都まで飛んでみました。
使いこなせるようになったと思います。」
メリッサは自信がついたようだ。
どうやら、問題なさそうだ。
「じゃ、次の魔法を試してみましょうか。」
「はい!」
次は、“隠蔽”である。
最初、メリッサはうまくいかず、試行錯誤を繰り返していたが、それも数回でうまく姿を消せるようになった。
ただし、気配は残っているので、ここは課題かもしれない。
「魔法はうまくいきましたが、気配を消す術を
身につけなくてはならないですね。」
メリッサは、魔法の弱点をきちんと理解していたのだ。
「まぁ、暗殺者並みに消せれば一番いいんだけど、
今はこれでいいんじゃないかな。
後は、修行次第かな。」
「そうですね、気配を消す技術も身につけたいと思います。」
メリッサは勉強家のようだ。
すっかり夕方になった。
訓練を行っていた騎士や訓練生たちは、隊舎へと戻っていく。
「そろそろ戻る時間かな。
とりあえず、二つの魔法を使えるようになったので、今後活用してください。
今は、諜報任務はないけど、今後あるかもしれないから、
その時はよろしくお願いしますね。」
「はい、了解しました。」
ルークは、メリッサに別れを告げると、城に戻るのだった。
こうしてメリッサは、二つの魔法を覚えたのだった。
これが、今後の諜報活動の役に立つことになるのだが、それは先の話である。