31-5 お茶会。
その日の夜。
ルークはミレーナの部屋を訪れていた。
今回は、ミレーナ主催のお茶会である。
ようやく、ミレーナがお茶会を開催することを告げたのだ。
朝食の時、ミレーナが宣言したのだが、顔が赤かったのは覚えている。
ルークはミレーナの部屋に入ると、ミレーナはお茶の準備をしていた。
ティーポットを持って、ティーカップにお茶を注ぐ。
そして、皆に配っていく。
お菓子であるケーキも、皆に配っていく。
ケーキも手作りだ。
ルークは早速、お茶を頂くため、ティーカップを手に取る。
そして、一口飲む。
おいしいのだ。
「うん、おいしいよ。」
ルークがそう感想を呟くと、ミレーナの顔がぱっと明るくなる。
「うん、おいしいですよ。」
「おいしい~。」
ミシェリも、リリアーナも同じ感想を述べる。
「上達しましたね、ミレーナ。」
メイリアはミレーナを褒める。
アリシアだけが、何故か固まっていた。
何故だろう?
「ありがとうございます。
じゃ、ケーキも食べてみてください。
先ほど作ったばかりなので、おいしいかどうか・・・」
次の難関は、パンケーキのようだ。
ミレーナの声が小さくなるのを聞き逃さなかった。
ルークはパンケーキの乗った皿を手に取り、フォークで少し切って、口に含む。
少し甘ったるい・・・?
リリアーナとミシェリのケーキと比較すると、少し砂糖が多いようだ。
だが、まずいわけではない。
「ミレーナ、少し砂糖が多いかもしれないな。
気持ち、少し減らしたほうがいいと思うよ。」
ルークは素直な感想を述べる。
ミレーナは慌てて、パンケーキを食べる。
そして、ルークの言葉通りだったと痛感する。
「うぅ、ごめんなさい。
今度から気を付けます。」
そして、ルークに謝るのだった。
「あ、いや、少し甘すぎるかなと思っただけで、味に問題はないよ。
砂糖の量を気を付ければいいよということだから、気にしないで。」
ルークは慌ててフォローを入れる。
「でも、おいしいから、これはこれでいいかも。」
リリアーナは、そう感想を漏らす。
「うん、これはこれでいいと思います。
今度作るときは、私も手伝いますよ、ミレーナ。」
ミシェリが手伝いの立候補をする。
「ありがとう、ミシェリ。」
ミレーナは立ち直ったようだ。
「でも、以前より上手になりましたよ、ミレーナ。」
メイリアも褒めてくれた。
「ありがとうございます、お母様。」
ミレーナはメイリアに感謝していた。
そしてアリシアは、やはり固まっていたのだ。
何故だ?
「えっと、アリシア、どうしたのかな?」
ルークの問いに、アリシアは黙ったままだった。
アリシアは、ケーキの皿をテーブルにおいて、泣きそうな表情をしていた。
「みんな、紅茶もケーキも上手なんだぁぁぁぁ!!!!
私なんて、全然うまくできないのにぃぃぃぃ!!!」
そう叫ぶと、アリシアはわんわん泣き出したのだ。
これには、皆困った。
そんな時だった。
メイリアが、アリシアに近寄り、軽く抱きしめたのだ。
「大丈夫ですよ、アリシア。
誰にでも、不得手はあるものです。
今度、私と一緒に、紅茶とケーキ作りの勉強をしましょう。
一緒に頑張りましょう。」
「うん、うん。」
アリシアはしっかりとうなずいていた。
「アリシア、私たちも手伝うよ。
だから、一人で抱え込まないで。」
リリアーナがアリシアの頭をなでる。
「そうですよ、私たちも手伝いますから。」
ミシェリは笑顔で、声をかける。
「そうそう。
私も下手なりにうまくいったんだし、アリシアにもできるわよ!」
ミレーナはアリシアを元気づける。
「ありがとう、みんなぁ。」
そう言って、アリシアはまた泣き出すのだった。
ルークは黙って事の成り行きを見守っていた。
これは、なんだか、家族だよな。
そう思う、ルークであった。
アリシアが泣き止んだ後、お茶会はお開きとなった。
次回はアリシア担当だが、皆と一緒に勉強することになったのだった。
きっとうまくいくだろうと、ルークは思うのだった。