31-4 内政を強化しよう。
翌日。
ルークは、要望書を用意する。
そして、そこに何かを書き込んでいく。
四枚ほど書き込むと、羽ペンを置く。
インクが乾いたこと確認すると、紙を纏め、政務官に届けるよう、ルドルフに依頼するのだった。
政務官の執務室にて。
ルドルフより要望書を受け取ったガイマンはうなっていた。
ルークの出した要望書は理にかなっていたからである。
まずは一つ目。
街道沿いに宿場町を用意すること。
これは、徒歩換算で、約一日分の徒歩範囲に、宿場町を一つ設置するというものだった。
この当時の宿場町というのは、宿屋と食べ物屋がセットになっていることを指す。
これにより、旅人や商人は、野宿ではなく宿屋に泊まり、食べ物屋で食事を摂るようになるだろう。
そのほうが安全性が増すのである。
しかも、税収も増えるという考えなのだ。
これは、利点が大きいため、ガイマンも賛成だった。
二つ目。
一つ目の宿場町に、警備隊を設置すること。
これは単純に野盗や山賊対策であった。
ルークの宝珠があるとはいえ、野盗や山賊が早々減るわけではないのだ。
ということで、警備隊という、現代で言うところの警察制度を導入しようとしたのだ。
警備隊は、騎士を引退した者や、傭兵をあてがうというものであった。
傭兵も戦争が無ければ、仕事がないも同然だったからだ。
正規の騎士は使わないのだ。
これも、問題なく遂行できるだろう、ガイマンも賛成だった。
三つ目は、田畑の拡大だった。
これには理由がある。
都市ルクサスメリルの産物の中に、ビートという名の植物がある。
このビートは、調味料の砂糖の原材料だったのだ。
ルークは、この砂糖の増産を考えたのだ。
砂糖を増産するためには、ビートの増産が必要となる。
ガイマンはこの時点では、増産の意図がわからなかった。
だが、四つ目の要望書で理解することになる。
四つ目は、土産物の作成だった。
都市ルクサスメリルには、名産品がない。
よって、土産となるものが無いに等しいのだ。
そこで、砂糖を使ったお菓子を考えたのだ。
しかも、焼き菓子である。
例えば、クッキーや、ビスケットなんかである。
こういったものを、ルクサスメリルの名産品にと考えたのだ。
砂糖がふんだんに使われた菓子は少ないのだ。
それに、ある程度日持ちするし、土産としても使えるのだ。
そのための砂糖の増産だったのだ。
ガイマンはここでつながっていることに納得したのだ。
ちなみに、砂糖は非常に高価だった。
だから、ある程度庶民でも購入可能な価格まで下げ、且つ調理されたお菓子ならば、誰でも購入できるようにしたのだ。
これならば、庶民でも購入できるし、誰でも口にできる。
増産による価格安定化という側面もあったのだ。
「ルーク様は、領内を増強するため、腐心されているのだな。」
ガイマンは要望書を読み終えると、そう呟く。
「要望書ですか?
見てもいいでしょうか?」
その時、ガイウスが要望書をのぞき込んだ。
「見るといい。
勉強になるぞ。」
ガイマンは、四枚の要望書をガイウスに渡す。
ガイウスは、四枚の要望書を読み始める。
途中で、「へぇ~」とか「はぁ」とか呟く。
読み終わると、ため息を吐く。
「これは、凄いですね。
ちゃんと、領内の増強を考えた政策ばかりですね。
他の貴族の方々も、これを知ったら、真似されるのではないでしょうか?」
「真似するだろうな。
こんな良策、そうそう思いつくものでもない。」
ガイマンもその通りだと思ったのだ。
「これは、全て採用するのですか?」
「あぁ、一部修正する必要があると思うが、採用する予定だ。」
ガイマンは、要望書の内容を一部訂正し、実行に移す予定だった。
「ルーク様って、ほんと、何でもできますね。」
ガイウスが関心する。
「そうでもないさ。
ルーク様は、今までの経験や実務の中で、利便性を増すにはどうしたらいいか、
考えてこられたのだろう。
本来は、国が行うべきことも、ルーク様が実行されているのだ。
そして、それが全てこの都市ルクサスメリルのために行われているのだ。
そこが凄いことなのだろうな。」
ガイマンの言葉に、ガイウスはうなずく。
「さて、この内容を吟味して、お前に一部やってもらうからな。
覚悟するのだぞ。」
ガイマンの言葉に、ガイウスは驚く。
「わ、わかりました。
頑張ります。」
ガイウスは、そう言って四枚の要望書を返して、自分の席へと戻っていくのであった。
ルークの要望書は全て認可された。
これにより、都市ルクサスメリルは発展するのだが、それはまだ先の話である。