30-5 都市ルクサスメリルへ。
王城を出た後、一旦メリッサとは別れた。
メリッサは近衛騎士団の隊舎に戻り、私物を持ち出す準備が必要だったからだ。
ルークは一旦館に戻り、自分の荷物を持ち出し、待つ。
すると、メリッサはすぐにやってきた。
メリッサは、制服を近衛騎士団の隊舎に返却してきたため、私服であった。
二人は、荷物を抱えて、王都を出る。
そして、ルークの“瞬間移動”にて、都市ルクサスメリルへと飛ぶのだった。
二人は、都市ルクサスメリルに到着した。
既に夕方だった。
ルークは城で夕食は難しそうだと考え、大衆食堂に寄ることにした。
二人は、そこで食事を摂ることになった。
「しかし、よかったんですか?
メリッサ殿の腕前なら、近衛騎士としてやっていけると思うのですが。」
ルークは何となく、そんなことを聞いてみる。
「いえ、これは私が決めたことです。
ですから、ルーク様が気にされることはありませんよ。」
メリッサは笑顔で答える。
ルークはメリッサの回答を受け、なるほどとうなずく。
「わかりました。
では、明日、騎士団を紹介します。
そこに所属して頂き、密偵任務に就いてもらうと思いますが、
それでいいでしょうか?」
「はい、構いません。
よろしくお願いします。」
こうして、メリッサの所属先と任務が決まった。
しかし、懸念が一つあった。
クリシュナである。
メリッサは優秀な騎士だから、すぐに気付く可能性があった。
間違いなく、近衛師団に誘うことだろう。
その時、どうしようかなと考えた。
だが、いい方法がない。
ともかく、メリッサ本人が、クリシュナの口説きを見事回避することしか思いつかないのだ。
うーん、まぁ、その時は、援護することにしよう。
ルークはそう考えておくことにした。
二人は、夕食を済ませると、城に向かうことにした。
城の城門は閉まっていたが、ルークが帰ってきたことにより、急遽開かれることになった。
ルークが城内に入ると、ルドルフが待っていたのだ。
「おぉ、ルーク様、よくぞご無事で・・・」
ちょっと泣きそうになるルドルフ。
「ルドルフ、ただいま。
早速で申し訳ないんだけど、メリッサ殿を客室に案内して頂けないかな?
今夜はこの城に泊まってもらおうと思っていてね。」
「承知しました。
では、ルーク様はメイドたちにおまかせしましょう。」
こうして、メリッサは客室に案内されることになった。
ルークはメイドに案内され、自室の寝室へ向かうことになった。
その途中だった。
「ルーク!!?」
その声に聞き覚えがあった。
振り向くと、アリシアが立っていたのだ。
「やあ、アリシア。」
ルークは笑顔で、アリシアの名を呼ぶ。
途端、アリシアが駆け出し、ルークに抱き着いたのだ!
「・・・おかえりなさい。」
アリシアは泣きながら、そう呟いたのだ。
「ただいま、アリシア。」
ルークはアリシアの頭をなでながら、そう言う。
すると、アリシアはバッと離れ、涙ながらに告げる。
「みんなに知らせてくる!」
そう言うと、走り出していくのだった。
「・・・しょうがないな。」
ルークは頬をかきながら困るのだった。
その後、ルークは寝室でメイドに着替えさせられた後、アリシアの元へと向かった。
すると廊下で、ミレーナとミシェリ、リリアーナと遭遇したのだ。
途端、全員でルークに抱き着いたのだ。
これには、ルークは動けなくなり、困り果てるのだった。
アリシアは遅れてやってきたのだが、全員がルークに抱き着いているのを笑って見つめるのみだった。
その夜、急遽お茶会が開かれた。
今回は、メイリアも参加している。
ルークの周りは花嫁で埋め尽くされていた。
「おかえりなさいませ、ルーク様。」
メイリアは、そう告げて頭を下げる。
「はい、ただいま戻りました、メイリア殿。」
ルークは笑顔で答える。
「それよりも、どんな任務をこなされてきたのですか?」
リリアーナより質問が飛び、皆が注目する。
「えっと、説明しないとダメ?」
ルークは困りつつ、質問する。
「是非、聞きたいです!」
ミシェリがそう叫ぶ。
元気なのはいいことなのだが、ルークはどうしようか困った。
まだ、皇帝陛下に報告していないが、大丈夫か。
「わかりました。
簡単に説明しますね。
その前に、紅茶を一杯飲ませてくださいね。」
ルークはそう言うと、紅茶を一口飲む。
今日はミシェリがお茶を入れてくれたので、おいしいのだ。
「では、お話ししますね。」
ルークは簡潔に話した。
ラインクルド王国の王女様を助けるため、力を貸したこと。
そのため、裏を牛耳っていた三人の公爵を倒すことになったこと。
三人の公爵を倒し、隣国の侵略軍を壊滅したこと。
そして、公爵派を一掃して、王女様を女王に即位させたこと。
ルークの冒険譚は、彼女たちに強い興味を与えたようだった。
ルークの活躍を、わくわくしながら聞いていたのだ。
ルークが話し終わった途端、拍手が起きたのだ。
「拍手されるほどのことはしてないんだけど・・・」
ルークはそう言うものの、女性陣の意見は逆だった。
「いえ、ルーク様は立派なことをされました。
とっても素晴らしいです。」
リリアーナが称賛する。
「はい、私もリリアーナと同意見です。
ルーク様は立派です!」
ミシェリも、リリアーナと同意見だった。
「ルーク様、立派なことをしたのだから、胸を張っていいのよ。」
ミレーナも称賛してくれているようだ。
「さっすが、ルーク様よね。
お父様もきっと喜ぶと思うわ。」
アリシアは、皇帝陛下の名まで出していた。
「ありがとう、みんな。」
ルークはそう言って、笑顔になるのだった。
こうして、夜も更けていき、お茶会は解散となるのだった。