30-1 後始末。
翌日。
ルーク達は、王都に戻ってから続けていた仕事を開始する。
それは、各貴族の情報収集だった。
最大の元凶である三公爵は始末した。
だが、いまだはびこる公爵派は一掃されていないのだ。
よって、その掃討作戦を敢行していたのだ。
まずは、各都市の貴族たちの情報を集める。
貴族の考えは、“情報整理”にて看破可能である。
もし、エリーシャ王女に否定的な考えの持ち主であれば、排除のため証拠集めをするのみである。
その証拠を集め、紙に書き起こす。
そして、それを元に逮捕状を作成するのである。
近衛騎士には、貴族を逮捕する権限があったのだ。
これを大いに活用するのである。
そして、その逮捕状を、対象の貴族がいる都市の騎士団長宛に送るのである。
騎士団長は、近衛騎士の命令に従う義務があるのだ。
よって、近衛騎士の逮捕状を受け取った時点で、代理として逮捕権を行使することが可能となるのだ。
こうして、エリーシャ王女を否定する貴族は逮捕されていった。
逮捕理由はそれぞれ異なっていたが、事実と証拠が確実にあるものを選んであるので、回避不可能だった。
貴族たちは捕らえられた後、王都へ一家ごと護送されることになる。
その後、裁判にかけられるのだ。
裁判の判決は既に決まっていた。
爵位はく奪の後、国外追放である。
そのほとんどが、隣国ドステメリカ皇国へと追放することにしたのだ。
これは、一種の嫌がらせでもあった。
こうして空席となった領地には、王女派の貴族を派遣し、統治させることにした。
これにて、王女否定派は一掃されたのであった。
全ての仕事が片付いた時点で、三人はようやく休息をとることができた。
「いやぁ、働いたな、俺たち。」
「そうだな。」
オスティアは満足そうに言うと、メリッサも同意する。
「今回の作業で、反対勢力の根は完全に根絶しました。
ラインクルド王国はしばらく安泰となるでしょうね。」
ルークはそう言って、紅茶を一口すする。
今回の証拠集めと犯罪の情報書き出しは、ルークとメリッサが行った。
そして、逮捕状を作ったのはオスティアだった。
分業にしたものの、オスティアが途中で追いつかなくなったため、近衛騎士団長に頼んで応援を派遣してもらった。
それで、ようやく一通り終えることができるまでに、一カ月もかかったのだ。
かなりの時間を要したものの、国家安定につながる役割を行ったのだ。
重要な役割をこなしたといっても、過言ではないのだ。
「ふぅ、休みが欲しいぜ。」
オスティアはそう言うものの、近衛騎士は忙しいのだ。
そうそう簡単に、休みはもらえないのだ。
「来月には、エリーシャ様の戴冠式と即位式がある。
それまで、休めんだろうな。」
メリッサはそんなことをポツリと呟く。
「そうだった・・・
まだ、しばらく休めないのかよ・・・」
オスティアはがっくりする。
ルークたちの役割はほぼ完了していた。
よって、ルークはオスティアとメリッサを、近衛騎士の通常任務に戻す予定だった。
二人には、王女の護衛の任務が与えられる予定だった。
ルークは、何もしない予定だった。
何故なら、今後ルークは、この国を去るからだ。
去る人間に役割を与えること自体、間違っているのだ。
それに、引き継ぎ事項は何もない。
ドステメリカ皇国も、こちらに攻めることを完全に諦めたようだ。
ならば、ルークが動く必要もないのだ。
それに、国内の敵も全て一掃したのだ。
ルークの仕事は完遂していたのだ。
今すぐ戻っても良かったのだが、エリーシャの女王就任まで、待機することにしたのだ。
女王就任式には、ルーニア皇国からも使者が来るそうだ。
同盟の締結を宣言するためであった。
その辺はルークには関係のない話であったが。
「僕は、のんびりさせてもらいますね。
二人は、王女の護衛、頼みますよ。」
ルークはそう言うと、笑みをみせるのだった。