29-5 対策。
ルークは応接室の死体が片付け終わった後、主要メンバーを集めて会議を開くことにした。
主要メンバーとは、オスティア、メリッサ、ユウヘイア騎士団の騎士団長である。
テーブルには、紙を用意し、ラインクルド王国の国境と、都市ユウヘイアを書き込む。
そして、白と黒の駒を用意した。
「まずは情報共有です。
敵軍は8万の軍勢で、この都市ユウヘイアに向かっています。
これは事実として受け止めてください。」
メリッサ以外の2人が驚きつつも、うなずく。
「騎士団長、敵は数日中にはここに攻めてくるはずです。
城外門を全て閉じ、内部を騎士たちで固めてください。
敵が来ても、決して打って出る真似はしないでくださいね。」
「そんな大軍が来る事自体信じられないのだが、事実なのだな。
わかった、ルーク殿の指示に従おう。」
騎士団長は了承した。
「次に、メリッサ殿。
あなたは、“情報整理”にて、敵軍勢の動きを偵察してください。
偵察した情報は、逐一、騎士団長殿に知らせてあげてください。
そして、もし、敵軍勢がここに攻め込んだ場合は、
騎士団長殿と連携を密に行ってください。
先ほど同様、決して打って出てはなりません。
籠城してください。」
「わかりました。」
メリッサは頷いた。
「そして、オスティア殿。
あなたは明日の朝、公爵一家を引き連れて、王都へ戻ってください。
護送の任務をこなして頂きたい。」
「ちょ、待ってくれ。
俺だけのけものかよ!!?」
オスティアは抗議の声を上げる。
「そういう意味ではありませんよ。
ちゃんと護送という役割があるじゃないですか?」
「いや、そうだけどよ・・・」
ルークの説明にも、オスティアは納得いかないようだ。
「一つ言っておきますと、今回出番があるのは、僕だけです。
敵を壊滅するのは、僕の仕事ですからね。」
ルークはさらっと言った。
「いや、それが気に食わないんだって!
俺たちは、ルーク殿の配下として仕えているんだぜ。
だったら、俺たちも・・・」
オスティアが噛みつくも、メリッサが静止する。
「今回ばかりは、我らに出番は無いよ、オスティア。
ルーク様に任せるほかないんだ。
だから、ここは譲ることにしよう。」
「・・・わかったよ。」
オスティアは折れてくれた。
「それから、騎士団長殿にメリッサ殿、僕が使う魔法は威力が大きいため、
地震が起きる場合があります。
もし地震が起きた場合は、民衆の避難を優先してあげてください。
頼みますよ。」
ルークの言葉に、騎士団長とメリッサがうなずく。
「では、この内容は全てエリーシャ様にお伝えします。
皆さんは、今夜は休んでください。」
ルークはそう言うと、会議を終了させた。
そして、あてがわれた客室に向かうのだった。
「エリーシャ様、聞こえますか?」
「うむ、聞こえているぞ。」
ルークは、エリーシャに“思念連結”を繋いでいた。
「簡潔にご報告します。
ラーグゼア公爵一家は捕らえました。
彼の目的は、ドステメリカ皇国を焚き付け、大軍を率いて、
ラインクルド王国を併呑することでした。
彼は既に捕らえていますが、ドステメリカ皇国軍は
動きを止めることはないでしょう。
大軍が来ますので、王都を固めてください。」
「わかった。」
「とりあえず、都市ユウヘイアを籠城させることにしました。
これにより、少々時間稼ぎできる見込みです。
それと公爵一家は、明日の朝、王都に向けて護送させることにしました。
ここまでが、一旦のご報告です。」
「うむ、では、大軍の件、どうするつもりなのだ?」
「以前、お話しした通り、僕の魔法により壊滅戦を行う予定です。
敵の針路は既に把握済みです。
先に僕が動き、仕掛けを行います。
そして、敵が訪れたら、究極の魔法で壊滅を行います。
結果は、全てが終わってからご報告しますよ。」
「そうか、わかった。
武運を祈る。
必ず、生きて戻ってきてくれ。」
「わかりました。
では、失礼致します。」
ここで、“思念連結”は切れた。
ルークは一息つくと、眠りに入るのだった。