29-4 暗殺者と公爵逮捕。
さて、そろそろ本当の意味での本題に入ろう。
「さて、ラーグゼア公爵、あなたは、一つ大きな罪を行った。
覚えはありますかな?」
ルークの言葉に、公爵は疑問符を浮かべる。
「はて、何のことかな?」
「隣国、ドステメリカ皇国を焚き付けて、大軍をラインクルド王国に
送り込もうとしていることですよ。
これは、あなたが行ったことですよね?」
ルークの問いに、公爵の表情が苦々しくなる。
「その軍勢は、数日前に動き始めました。
兵力をご存知ですか?
約8万ですよ。」
その言葉に、公爵は驚きの表情を浮かべる。
どうやら、兵力の多さに驚いたようだ。
「ドステメリカ皇国は、本気でラインクルド王国を併呑しようとするでしょう。
となると、これはあなたの手柄ということになりますよね。
あなたは、ラインクルド王国を裏切り、隣国に国を売ったことになります。
これは重罪、いや、絞首刑ものですよね、閣下?」
公爵は、図星を突かれたのか、苦々しい表情に戻る。
「・・・何故、私が隣国に介入する理由があるのだ?」
公爵はようやくといった感じで、ルークに対して質問を行う。
「それは簡単です。
あなたは、北の公爵を捕らえられた時点で、隣国と交渉した。
そう、この国をドステメリカ皇国の皇帝に売ったのです。
理由は簡単ですよ。
あなたは権力という名の魅力に取りつかれているからです。
あなたはこの国を売って、ドステメリカ皇国の公爵として権勢を
ふるう予定だったのでしょう?
ですが、残念でした。
全て見抜かれているんですよ!」
ルークの言葉が、ナイフとなって、公爵に突き刺さる。
全て、公爵の考えを読み取っていたからだ。
公爵は、汗が止まらないのか、額をぬぐう。
「やはり思った通りだ。
貴様が最も危険な存在だったのだ。
貴様なのだろう?
オーガスタ公爵の2万の軍勢を全滅し、
フェブリゾ公爵の3万の軍勢すら壊滅させた。
貴様は一体何者なのだ?」
公爵は、ルークを指差し、叫ぶ!
「ラーグゼア公爵、ルークという名に聞き覚えがありますよね?
そうです、ルーニアの英雄の名です。
では、そのルーニアの英雄は、一体何者だと思いますか?」
ルークの言葉に、公爵は目を見開く。
「まさか・・・」
「そうです、そのまさかです。
僕は、ルーニア皇国皇帝陛下直属の騎士にして、魔法騎士です。
そして、四系統の魔導を極めた大魔道士でもあります。
よって、僕は、ルーニア最強の騎士ですよ。」
「・・・何故、ルーニアが介入しているのだ!!?」
公爵は激高するが、ルークは涼しい顔だ。
「それは、あなたの知るべき必要がない情報です。
よって、知らなくて結構です。」
ルークはそう言うと、指を鳴らす。
途端、部屋の中に、10数名の人間が姿を現したのだ!
ルークは、魔法で隠れていた暗殺者たちの魔法を、無詠唱で解いたのだ。
そして、更に言葉を発する!
「結界!」
ほぼ同時に、公爵も叫んでいた!
「殺せ!
この3人を全員殺すんだ!!」
暗殺者たちの動きは速かった。
引き抜いたショートソードがルーク達の喉を貫いたように見えた!
だが、しかし!!
「な、なに!?」
ショートソードの刃は、喉を前に停止していたのだ!
オスティアとメリッサは死を覚悟していたのだが、刃が喉元で止まっていることに驚いたのだ。
ルークは、叫ぶ!
「来い、レーヴァテイン!!」
瞬間、ルークの右手に、レーヴァテインが出現する!
「「「!!?」」」
暗殺者たちは瞬く間に、首を撥ねられた。
10の首が中空を舞い、その胴体は倒れ伏す。
その間、ルークはショートソード2本を拾い、オスティアとメリッサに差し出す。
オスティアとメリッサは、ショートソードを受け取ると構える。
「ば、馬鹿な!?
手練れの暗殺者たちなのだぞ!?
それが、こうもあっさりと!!?」
公爵は目の前の出来事が信じられないのか、思わず叫んでいた。
「僕の首を土産に、逃亡する予定だったようですが、残念でしたね。
オスティア殿、公爵を捕らえてください。
暗殺者たちの中に、縄を持っている者がいましたので、それを使ってください。
メリッサ殿、城の外にいる騎士を呼んでください。
全員、武器携帯で構いません。
公爵の一家を全員捕らえてください。」
「「承知!!」」
2人の声が重なる。
こうして、公爵は捕らえられるのだった。
「ふっふっふ、もう遅い。
もうお前たちは終わりだ。」
捕らえられた公爵はそんなことを言い出した。
もうすぐ、ここに公爵一家が連行されてくる予定だった。
全員揃い次第、地下の牢に閉じ込めるのだ。
「ドステメリカ軍のことですね?
残念ながら、そう簡単に終わりませんよ。」
ルークはそう言うと、公爵は反論する。
「では、8万の軍勢にどう対抗するつもりだ?
いかに貴様が最強の騎士であってもできぬことがあるはずだ。
8万の軍勢を滅ぼすことなど不可能だ。
もう、貴様らはお終いなのだ、はっはっは!」
公爵は、大笑いするが、ルークは涼しい顔だった。
「閣下、一ついい事を教えましょう。
魔法には、究極の魔法があることくらい、御存じですよね?
もし、僕がそれを使えば、どうなるかわかりますか?」
「・・・な、何を言っている?」
公爵が急に焦り出す。
「もう一度言いましょうか?
僕が、究極の魔法を使った場合、敵兵はどうなるでしょうか?」
公爵は、何かに気が付いたのか、額から汗が止まらなかった。
手は縛られているので、ぬぐうことはできない。
「もうお気づきですよね?
僕は本気で壊滅させますよ。
それが、ルーニア最強所以の力です。
それに、僕は、『ルーニア皇国最強の剣』と呼ばれていますからね。
最強に不可能はないんですよ。」
ルークがそこまで言った時点で、騎士たちが公爵の妻や子供を連れてきた。
「公爵一家を全員、地下牢に幽閉してください。」
こうして、公爵一家は、全員捕らえることになるのだった。