28-8 西の公爵の策略。
ラーグゼア公爵は頭を抱えていた。
北に続き、南も潰された。
残ったのは自分のみだった。
しかし、まさか、フェブリゾ公爵が負けるとは思いもしなかったのだ。
王女派はわずか2万の軍勢を率いてきたにも関わらずだ。
しかも、一兵も失うことなく、3万の軍勢を撃破したのだ。
信じられなかった。
そういえば、北の公爵軍の全滅の件も信じられなかった。
信じられない出来事が、2回も立て続けに起きていたのだ。
このまま自分も対立すれば、その信じられない出来事により負ける可能性が高い。
誰が、そんな奇跡を起こしているのだろうか?
残念ながら、そこまでの情報はなかった。
ただ、気になる名前があった。
「ルーク」という名前だった。
ルーニアの英雄と同じ名前だったのだ。
まさかという思いはあった。
だが、確証が無い。
このままでは、マズいことに変わりはない。
というのは、公爵派だった西の貴族が揺らいでいるのだ。
北及び南の貴族が王女派に鞍替えしたのが一因だった。
このまま時間が経過するとなると、西の貴族たちも王女派に鞍替えしないとも限らないのだ。
そうなれば、公爵ただ一人が孤立する可能性があったのだ。
それだけは避けねばなるまい。
ならばどうすべきか?
ラーグゼア公爵は考えた。
首謀者を殺すしかない。
こんな奇跡を巻き起こしている者たちを殺し、隣国の援軍を得る必要がある。
援軍はいずれ来ることは決定事項だった。
あとは、こちらで、首謀者と思われる「ルーク」なる人物を始末する必要がある。
そうすれば、奇跡は起きないはずだ。
では、どうやって、「ルーク」なる人物を呼び寄せるか?
ラーグゼア公爵は考えた。
彼は、エリーシャのために動いているはずだ。
ならば、こちらが低姿勢を見せれば、彼を派遣するのではないか?
そこで、「ルーク」とやらを闇討ちにする。
そして、王女派の進撃を食い止めるのだ。
「ルーク」なる人物を殺すことで、もはや奇跡は起きないだろう、そう考えたのだ。
そう、「ルーク」なる人物こそが、現在の王女派の中心にいると判断したのだ。
これは、ドステメリカ軍が来る前に、実行しなければならないことであった。
ドステメリカの援軍を得た際に、奇跡を起こされたら、たまったものではないからだ。
では、その「ルーク」なる人物を呼び寄せる方法はないか?
その時、何か閃いたのだ。
ラーグゼア公爵は奇策を思いついた。
これでいい。
この策でいこう。
この策であれば、間違いなく「ルーク」なる人物がやってくるはずだ。
ラーグゼア公爵は、にやりと笑みを浮かべるのだった。
さて、ラーグゼア公爵の策謀がうまくいくのか、それとも、ルークがそれを上回るのか?
物語は佳境へと向かっていくのであった。