28-5 悪魔。
ルークは城に到着すると、城門の前まで来た。
その時、1人と侮ったのだろう、門が開き、騎士たちが打って出てきたのだ。
ルークにとっては、ちょうどよかった。
「“炎帝”」
ルークがそう呟いた瞬間、全身を覆うように、炎が出現する。
そして騎士たちに向かって、突貫したのだ!
炎に触れた騎士は、消し炭と化し、ルークの剣で斬られた者達もまた、焼き尽くされるのみであった。
戦いは一方的だった。
ことごとくルークに斬り飛ばされ、やがて抵抗する者がいなくなった。
逃げ出した者もいたが、放っておいてもいいだろう。
後でメリッサが片付けてくれるはずだ。
ということで、片付けが終わったので、城内へと入ることにした。
城内は静かだった。
まずは、“炎帝”を解除する。
次に、“情報収集”を実行し、城内の状況を調べる。
うーん、だいぶ人が散っているな。
あちらこちらに兵士がいたのだ。
公爵らしき人物は、謁見の間にいた。
じゃ、まずは謁見の間に行きましょうか。
ということで、ルークは謁見の間へと歩いていくのだった。
謁見の間に向かう途中、数人と交戦したが、あっさりと斬り捨てた。
もはや、敵にすらならない。
ルークは、謁見の間のドアを開くと、数人の魔法使いと、20名近い騎士、そして公爵らしい人物がいた。
すぐに襲いかかってくる可能性が低かったため、挨拶することにした。
「僕は、近衛騎士のルークと申します。
残念ながら、この都市は王女派の兵士によって囲まれております。
潔く降伏してください。
であれば、殺すような真似は致しません。」
だが、1人の男が大笑いし始める。
公爵らしい、立派な鎧を着た男だ。
「ふっふっふ、それで勝ったつもりか?
たった1人で何ができるというのだ?
騎士たちよ、ヤツを殺せ!!」
瞬間、20名の騎士が動くが、ルークも同時に動く!
20の首があっさりと飛ぶ。
そして、首が無くなった胴体たちは、バタリとその辺に倒れ、血をまき散らすのみ。
「勝てるから、たった1人で来たんですよ。
この程度で、僕を倒せると思っている時点で、あなたの負けですよ、
フェブリゾ公爵殿。」
「な、何をしたのだ!?」
フェブリゾ公爵は開いた口が塞がらなかった。
彼にはどうやら、何も視えていないようだった。
ルークの剣速があまりにも速すぎたのだ。
騎士であれば、視認できるだろうというレベルなのだ。
公爵には、酷な話であった。
「斬って捨てたまでです。
それ以外に、何かありますか?
さて、そろそろ降伏してもらえると助かるのですが・・・」
ルークが公爵を睨むと、公爵は一瞬ひるむものの、すぐに笑みを浮かべる。
「魔法使いたちよ、アレを召喚せよ、ただちにだ!!」
その時、魔法使いたちは、何か魔法を唱え始める。
ルークの知らない魔法だった。
途端、3つの魔法陣が出現し、何かが出現したのだ。
見たこともない、異形の存在だった。
しかも3体である。
「さあ、悪魔共、目の前の騎士を葬り去れ!!」
魔法使いの命令により、悪魔たちは動き出した。
『あれは、悪魔族です。』
突然、レーヴァテインが説明してくれたのだ。
「となると、さっきの魔法は、召喚術か。
知らない魔法でした。」
『悪魔族にも種類がいます。
あの中央に立つ大きな悪魔はグレーターデーモンと呼ばれています。
その左右にはレッサーデーモンがいますね。
彼らは強力な力を持っています。
注意してください。』
「なるほど、了解。」
ルークの目の前に、レッサーデーモンが迫り、その爪を振り下ろす!
だが、ルークはあっさりと回避する。
「彼らと会話できるかな?」
『それは無理ですね。
彼らは召喚主の言葉に従うのみです。
こちらの言葉に耳を傾けることはありません。』
「そりゃ残念。
暗黒魔法について、聞いてみたかったけどね。」
ルークはレッサーデーモンの攻撃をことごとく回避する!
そして、反撃に移る!
レッサーデーモン1体の首をあっさりと斬り裂いたのだ!
「な、何!?」
フェブリゾ公爵は驚いていた。
通常、悪魔たちは、人間よりはるかに強いのだ。
それを凌駕する人間は存在しないはずだった。
だが、その悪魔をあっさりとルークは仕留めたのだ。
驚くよりほかなかった。
ルークは次のレッサーデーモンに剣を向ける。
レッサーデーモンは炎を吐き散らす!
だが、ルークの結界術には通用しない!
ルークは素早く動き、胴薙ぎでレッサーデーモンを真っ二つにしてみせる。
レッサーデーモンは断末魔を上げ、消滅する。
残りはグレーターデーモンのみ。
グレーターデーモンは呪文を唱え、解放する!
残念ながらルークには聞き取れなかった。
黒い炎が襲い掛かるが、ルークは斬って捨てる!
そして、素早い動きで、グレーターデーモンの首を撥ねていた!!
グレーターデーモンは消滅していくのだった。
「ば、バカな!?」
フェブリゾ公爵は、唖然としていた。
人間よりはるかに強い悪魔を、たった1人の人間が、倒して見せたのだ。
こんなことは、あってはならないことだった。
いや、ありえないのだ。
だが、倒された。
事実は捻じ曲げられない。
フェブリゾ公爵は、信じらぬ思いで、叫んでいた。
「魔法使いたちよ、もう一度召喚するのだ。
こ、こんなバカなことはあってはならないのだ!!」
だが、その言葉は遅かった。
ルークが魔法使いを全員斬り捨てていたからだ。
これで、召喚できる人間はいなくなった。
フェブリゾ公爵は逃げ出そうとした。
だが、次の瞬間、ルークの膝蹴りをもろに喰らって倒れ伏す。
「ぐぐ、ぐがぁ・・・」
苦しみもがくものの、もはや、彼を助ける者はいないのだ。
その時、オスティアが騎士を引き連れ現れたのだ。
「もう、終わっちまったのかよ・・・」
頭をかきつつ、オスティアは文句を言う。
「すいませんね。
彼がフェブリゾ公爵本人です。
捕縛をお願いします。
それと、城内にいる彼の家族も捕らえてください。」
「ああ、そっちは既に手を回している。
メリッサも動いているから、すぐに済むはずだ。」
「じゃ、僕たちの仕事は一旦ここまでです。
お疲れ様でした。」
ルークは剣を収め、オスティアの肩をポンと叩く。
オスティアは悪い気はしないのか、ルークに従い、歩き出す。
フェブリゾ公爵は騎士たちに捕縛され、地下の牢に幽閉されることになった。
こうして、南の公爵攻略戦は終わりを迎えたのだった。