28-2 出陣。
出陣当日。
ルークは、二万の兵を与えられていた。
残念ながら、南の公爵の軍勢より、一万少ない。
だが、問題ないだろうと、ルークは判断した。
「ルーク殿、出陣の準備整いました。」
オスティアがそう報告したので、ルークはうなずく。
「では、出陣しましょう。
全軍、南の公爵の都市メアナードへ向けて進軍します。」
ルーク指揮の元、二万の軍は、南に向けて進軍を開始するのだった。
進軍中、ルークはエリーシャに“思念連結”を繋いでいた。
「ルークか?」
「はい、エリーシャ様。
報告したいことがあります。」
「西のことか?」
「いえ、その隣の国です。
ドステメリカ皇国に動きはないでしょうか?」
「!?
隣国が動く可能性があるというのか?」
「可能性は捨てきれませんが、あるかと。
ドステメリカ皇国と交渉中なのでしょうか?」
「使者は何度か送っているが、良い返事はもらえていない。
かの国は、我が国を狙っている可能性が高いということか。」
「はい、おそらくは。
この混乱に乗じて、乗り込んでくる可能性があります。」
「確かにな。
王都の守りは強化してある。
大軍が来ても、持ちこたえることができよう。」
エリーシャも考えているようだ。
「ともかく、交渉は引き続きお願いします。
西の公爵は、その大軍を待っている可能性があります。」
「うむ、わかった。」
「では、お願いいたします。」
ここで、“思念連結”は切れた。
もし、ドステメリカ皇国が乗り込んできた場合は、大戦争になりかねない。
そして、それに乗じて、西の公爵も動くはずだ。
そうなれば、最悪十万程度の軍勢を相手にすることになりかねないと、ルークはそう予想した。
それまでに、西の公爵を抑えられるか、勝負となるだろう。
ドステメリカ皇国が動く可能性は高い。
だから、動くと思って、こちらも対処する必要があるだろう。
だが、その前に、まずは南を制する。
南を制してしまえば、南の貴族たちも王女派になびくはずだ。
それに、南を制した時点で、西側の貴族の中にも、王女派に鞍替えする者たちも現れることだろう。
既に北の貴族たちは、王女派となっているのが要因だ。
そうなると、西側の貴族たちは北と南に挟まれることになり、大きく揺れることになる。
あわよくば、西の公爵は孤立する。
そこを狙うのだ。
ともかく、まずは、南だ。
ルークははやる気持ちを抑え、今は目の前の敵に集中することにした。