2-9 事件発生!?
「ルーク、すまんな。
隊長はああいう性格だから、あんまり物を言わないが。
俺としては、お前に騎士団に入ってほしかった。
だが、お前にも目標があるのなら、それを潰してまで誘うつもりはない。
だから、ぶしつけな勧誘をしたことを謝罪させてほしい。」
カシスは、ダーナスが去った後、ルークにそう告げた。
「いえ、僕は気にしてません。
逆になんか悪い事しちゃった気分になって・・・
期待を裏切ってしまったというか、なんというか・・・」
「あぁ、あまり気にしないでくれ。
あれほどの腕前を持つ者に会えたのだ。
つい、誘ってしまいたくもなるものさ。」
カシスは少しバツが悪そうだった。
確かに、カシスの言い分は、ルークにもわかった。
なかなかいい逸材は現れないのだ。
それを見つけた瞬間、欲しがってもおかしくはないのだ。
「さて、これからどうするつもりだ?」
「村に帰ろうと思います。」
「村?
どこだ?」
「隣のペゾスです。
小さい村です。」
「あぁ、あそこか。
あそこに住んでいたのか。」
カシスからすると灯台元暗しなのだろう。
まさかこんな近くに、将来有望な若者がいたなんて。
だが、これも最近の話なのだ、知らなくてもおかしくはないのだ。
それからルークは、カシスに付き添われ、訓練場入り口まで来ていた。
後は、お別れを言って帰るだけだった。
ところが、ここで事件が発生するのだ!
訓練所入り口に、突然、シスターらしい女性が姿を現したのだ。
そして、カシスの姿を見つけるや、走り寄ってきたのだ。
「カシス様、大変です。
神父様が!」
「アリア殿。
どうかしましたか?」
カシスは、アリアと呼んだ女性の慌てぶりに何かを察したようだ。
急を要する事態なのだろうか。
「神父様が、さらわれたのです!!」
その言葉に、カシスとルークは驚くのだった。
ダーナスの執務室にて、急遽事情聴取が行われることになった。
ここには、ダーナス、カシス、騎士数名、アリアと、何故かルークがいた。
アリアと呼ばれた女性は、事情を話し出す。
「朝方のことです。
突然、山賊と思われる男たちが現れて、神父様に暴行したのです。
そして、動けなくなった神父様を連れて去っていったのです。
・・・私は、怖くて何もできませんでした。
ですから、その、神父様を助けて頂けないでしょうか。」
アリアの声は震えていた。
ここまで急いで来たこともあるのだろう、その声はかなり疲れていた。
「山賊どもの目的は何だ?」
ダーナスはアリアに問う。
「わかりません。
ただ、子供が何とかって、神父様に聞いていました。
私は怖くて、よく聞き取れていなくて・・・」
「アリア殿、よくわかった。
とにかく、神父殿を助けるのが最優先だが・・・
実は、おいそれと騎士団を動かすことができん。
騎士団長が不在でな。」
ダーナスは困った表情をする。
「隊長、我らの部隊だけを動かすこともできないのでしょうか。
少なくとも、相手が山賊ということであれば、
我々部隊が動いても叱られることもないでしょう。」
「あぁ、俺の部隊だけで動く分には問題ないだろう。
ただなぁ、山賊どもの居場所がわからん。
予測はつくが、神父殿の命が関わっている以上、時間がないぞ。」
ダーナスの言葉に、カシスも考え込んでいるようだ。
「ちなみに、部隊ってどの程度の人数なんですか?」
ルークが質問する。
「ん?
あぁ、20名程度だ。
だが、クーラク騎士団は数が少なくてな。
正規の騎士だけで50名たらずだ。
半数の騎士を動かすぐらいなら、俺の責任で何とかなるが。」
そう、クーラク騎士団はよく戦争に駆り出されることもあり、騎士の数が少ないのが難点だった。
その代わり、騎士候補生は多い。
その理由は、騎士を増やしたいがための措置であった。
ルークは魔法で探索系のものが無いか考えてみる。
もし、探索系の魔法があれば、効率よく山賊の居場所がわかるのだ。
探索・・・探索・・・
魔法が使えるようになったのだ。
なんとかできないものか、熟考してみる。
そこで思いついていた。
「探知能力の強化」だ。
魔法ではないが、「創造系魔法」で能力として習得できないかと考えたのである。
ルークはこっそりと胸に手を当て、「探知能力の強化」を願ってみる。
すぐに能力開花となるかわからないが、今は人命優先だ。
やってみるだけのことは、やってみることにしたのだ。
「あの、僕もその捜索、手伝ってもいいでしょうか?
その、事情を聞いてしまったし、他人事じゃないし。」
「手伝ってくれるのか?
人手は多い方がいい。
頼めるか?」
カシスは喜んでいた。
「はい、手伝います。」
ルークは、困っている人を放っておけない性格だったのだ。
だから、帰るのを先延ばしにしても、事件解決を優先することにしたのだった。
ダーナスは周辺地域の地図を用意した。
会議場に騎士たち20名程度が集まり、騒然としていた。
「話を聞けよ、皆。
まず、山賊はこの街の裏手にある山から来ている可能性が高い。
だが、奴らの拠点の位置は誰も知らない。
よって、捜索部隊を分ける必要がある。
2人で一組を作れ。
必ずだ。
敵は、山賊だということを忘れるな。
山の中では、あいつらのほうが有利だ。
見つけ次第、他のチームと連携して動くんだ、いいな。」
皆、ダーナスの話に耳を傾けていた。
うなずく者、地図を見て地理を覚える者、それぞれだ。
ルークは地図を見て、すぐに地図の内容を覚えた。
後は、探知能力が強化されているかどうかの確認だ。
もし強化されていれば、人のいる位置がなんとなくわかるはずなのだ。
ともかく、これに賭けてみるしかない。
「優先すべきは、神父殿の救出だ。
山賊を倒すのは目的じゃないから、注意しろ。
命を無駄にするんじゃねーぞ!
命は大切にしろ。
それから、皆生きて帰って来いよ。
よし、行け!!」
ダーナスの言葉に皆がうなずき、散っていく。
捜索が開始されたのだ。
ルークも早速動こうとした時、カシスに声をかけられる。
「ルーク、一人で行くな。
俺と行動を共にしよう。」
「はい、よろしくお願いします。」
こうして、ルークは、カシスと共に捜索を開始するのだった。




