17-9 王都へ。
その日の昼前に、ルークとレヴィは王都に帰還していた。
そして、そのまま王城に向かう。
王城到着後、すぐに皇帝陛下と謁見することになった。
謁見場所は、いつもの応接室だった。
応接室に入ると、すでに皇帝陛下は待っていた。
無論、クリシュナも一緒だ。
「陛下、ただいま戻りました。」
ルークとレヴィは頭を下げる。
「うむ。
とりあえず、報告を聞きたい。」
二人がソファに座ると、ルークが話し始める。
「都市ルクサスメリルでの行方不明事件について、
解決しましたので、ご報告致します。
フェイブレイン公爵が人さらいどもに依頼し、庶民を誘拐させた後、
さらった人間を買っていたことが判明しました。
しかも、さらった人間を城の地下に連れて行き、
無残に殺すことを楽しんでいたようです。
城の地下に、血の跡がしっかり残っておりました。
なお、人さらい及びフェイブレイン公爵は、
騎士団にて拘束・監禁しております。
犯罪者の処断を、皇帝陛下に伺いたく思います。」
皇帝陛下は、既に決まっている事項を告げる。
「そうか、わかった。
人さらいは全員処刑せよ。
ファイブレイン公爵は、爵位はく奪の後、王都に連れて参れ。
王都にて、絞首刑に処す。
公爵家の存続有無に関しては、余がしばらく預かる。」
「御意に。」
「レヴィ、手配を頼む。」
「はっ」
クリシュナの命に、レヴィがうなずく。
ルークは処分が決まった後、発言を行う。
「一つお願いがあります。
フェイブレイン公爵の母上の件です。」
「ふむ、告げるといい。」
「はい、フェイブレイン公爵の母上は、本件には関わっておりません。
ですから、処分を科さぬよう、ご配慮をお願いしたいのです。」
「わかった。
本件に関係していない人間まで処分するつもりはない。
安心せよ、ルークよ。」
「はっ、ありがとうございます。」
ルークは、ほっとした表情になる。
「しかし、見事であった。
今回もルークの活躍か、レヴィよ?」
皇帝陛下の言葉に、レヴィはうなずく。
「はい、人さらいを見つけ出し、捕らえたところから、
ルーク様の一人芝居でした。
人さらいどものアジトまで見つけ出し、全員捕縛して見せたのです。
そして、フェイブレイン公爵を逮捕したのです。」
「やはり君は素晴らしいな。
君に任せたのは、正解だったな、ルーク。」
クリシュナは、ルークを褒めていた。
ルークは褒め慣れていないので、困っていたが。
「大儀であった、ルーク、レヴィよ。
そなたたちの活躍で、事件が解決したのだ。
見事であった。」
皇帝陛下は2人をねぎらうのであった。
「そういえば、クリシュナから妙な話を聞いた。
何でも、魔剣がしゃべると聞いたが?」
皇帝陛下がそんなことを言い出したので、皇帝陛下とクリシュナ、レヴィに“思念連結”を繋ぐ。
『それは私のことでしょうか?
皇帝陛下、初めまして。
レーヴァテインと申します。』
「なんと!?
しゃべれるのは、事実であったか!?」
さすがの皇帝陛下でも、驚いていた。
「正確には、喋れるだけでなく、意思を持っているんです。
そうですね、僕たち人間のような存在と言ってもいいと思います。」
「なるほどな。
では、更に剣も使いこなして見せたというべきかな?
剣の言葉が聞けるのならば、攻撃強化なども可能なのではないか?」
皇帝陛下は、なかなか鋭いようだ。
「はい、その通りです。
魔力や魔法による強化も可能です。
それ以外にも、僕の代わりに、魔法を唱えることも可能です。」
「ふむ、それはなかなかすごいものだな。」
皇帝陛下は関心していた。
「父上、それだけではありません。
ベルガ―に与えた魔剣にも、ルークが意思を与えたそうです。
ベルガ―は、戦闘のバリエーションが増えたと喜んでいましたよ。」
クリシュナの言葉に、皇帝陛下は関心を示す。
どうやら、ルークたちが不在の間に、剣を使いこなしているようだ。
あとで、確認してもよいかもしれない。
「魔剣生成のみならず、魔剣を進化させることも可能なようだな。
魔法騎士とは奥が深いものよ。
しかし、我が家にある魔剣に、全て意思を持たせるとなると、
大変なことになるな。」
皇帝陛下は大笑いする。
確かにその通りである。
ルークだけでも、大軍に匹敵する戦力を持っていることになる。
ベルガ―も恐らく、大軍に対抗できるだけの実力は、身に着けていると予測できるだろう。
となると、魔剣持ちが皆強化されてしまうと、個の質が大幅に上がることにつながる。
もし、「一騎当千」の言葉通り、たった一人で、千人を倒せるようならば、軍の壊滅も簡単な作業になりかねないのだ。
とんでもない、軍事力を手に入れることにつながるのだ。
ある意味、笑えない話になるのだ。
「試してみるのも一興でしょうが、
魔剣の使い手がいないと意味がありませんよ、父上。」
クリシュナがさりげなく突っ込みを入れる。
「はっはっは、その通りだな。
それについては、考慮しよう。」
皇帝陛下はひとしきり笑うと、場を収めることにした。
「さて、2人とも、ご苦労であった。
処分に関しては、余に任せるといい。」
「はっ!」
これにて、事件は解決となるのだった。