17-8 母親、再び。
さて、時間を一旦戻すことにしよう。
事件解決後、翌日。
ルークは、母親の住む屋敷を、また訪れていた。
今度は、制服姿だ。
ドアをノックすると、老執事が姿を現す。
「おぉ、ルーク様。
ささ、どうぞ、お入りください。」
ルークは勧められるがままに、中に入る。
「奥様に取り次ぎなのでしょうか?」
「はい、お知らせしたいことがあり、参りました。」
「左様ですか。
応接室にて、お待ち頂けますか?」
「わかりました。」
こうして、ルークは応接室へと案内されるのだった。
応接室で待つこと数分、メイリアが姿を現した。
メイリアは、ルークの姿を見て、驚く。
今の彼は、皇帝陛下直属の騎士であり、魔法騎士の姿であったからだ。
そして、ルークに向かって、深く頭を下げる。
それから、席に着く。
紅茶が運ばれたことで、会話が開始される。
「レイド殿が逮捕された件はご存知ですね?」
「はい・・・」
メイリアは少し青ざめていた。
「残念ですが、彼は多くの人間を殺していることが確認されました。
よって、絞首刑は免れないでしょう。
覚悟しておいてください。」
「はい、わかりました。」
メイリアもまた、覚悟していた。
しかし、まさか自分の息子が犯罪を犯していたとは、信じられぬ思いであった。
メイリアは、レイドが犯罪を行っていたことを、一切知らなかったのだから。
「それと、公爵家の件ですが、こちらは、陛下に伺いを立てます。
陛下の判断に従っていただきますので、ご承知おきください。」
「公爵家は、ルークが継ぐのではないのですか?
私が、皇帝陛下にお願いすれば・・・」
だが、ルークは冷静に返答する。
「残念ながら、僕は死んだことになっているはずです。
僕がこの家を去った時点で、僕はこの家の人間ではありません。
勘違いをしないで頂きたい。」
「は、はい・・・」
ルークの言葉に、メイリアは言葉を失う。
「メイリア殿、今の僕は、皇帝陛下の使いとお思いください。
軽々しい発言は慎むように。」
「はい、申し訳ありません。」
メイリアは深々と頭を下げる。
「僕から伝えるべきことは、以上となります。
何か、質問はございますか?」
「いえ、特にございません・・・」
メイリアはうなだれていた。
息子が処刑されるかもしれないということ。
そして、そのせいで公爵家が取り潰しになるかもしれないということ。
更に、ルークは家を継ぐ意思がないということ。
もはや、公爵家はお終いだった。
「メイリア殿、最後に申しておきます。
あなたは今回の件、関係者ではないことを、
僕が皇帝陛下に証明しましょう。
害が及ぶことのないよう配慮致します。
ですから、静かにお暮しください。」
ルークはそれだけ告げると、頭を下げ、ゆっくりと立ち上がる。
そして、応接室より去るのだった。
ルークは、すぐに屋敷を出て行く。
この後、城外門でレヴィと落ち合う予定だった。
屋敷を出た後、“瞬間移動”を使い、城外門へと転移する。
すると、レヴィが既に待っていたのだ。
「用事は済みましたか、ルーク様?」
「えぇ、済みました。
行きましょう。」
ルークがそう告げると、レヴィはうなずいた。
そして二人は、王都へと帰還するのであった。