2-8 お昼ごはんを食べる。①
ルークはまだ集中力を切らしていなかった。
ただ、体力を使いすぎた。
相手のカシスも同様のようだ。
とても強い騎士だ。
僕が互角に戦っているのが嘘みたいだ。
ルークは、自分がここまでできるとは思ってもみなかったのだ。
だが、実際にやってみせたのだ。
これは誇ってもおかしくはない。
だが、ここまで来た以上、倒してみたいという思いもあった。
これほど強い相手に勝ってみたい。
そういう欲望を持ってしまったのだ。
だが、その欲望は露と消えるのだった。
「そこまでだ!!」
突然、バカでかい声が響く。
その声を発したのは、大男だった。
「・・・隊長!?」
カシスが驚きの表情を浮かべる。
ルークは、残念そうに、木刀を下げる。
勝負がつかなかったことに、残念さを感じたのだ。
だが、ここまでもっただけでも良かったかもしれない
ルークはそう思うことにした。
それにしても、疲れた。
「いい勝負だったぜ、カシス。
だが、この少年は誰だ?
うちにこんな訓練生はいたか?」
大男は、ルークをじろじろ眺める。
「いや、彼は訓練生ではなく、一般人です。
膂力があり、剣を佩いていたので、冒険者かと思っておりましたが、
一般人だったのです。
そこで、腕前を確かめたのですが、まさかこれほどとは思いませんでした。」
「ほう、そうかそうか。
おい少年、名前はなんだ?」
「ルークです。」
「ルークか。
じゃ、話を聞きたい。
そうだな、昼飯食いながらでどうだ。
俺が奢ろう。
二人とも、ついて来い!」
そういうと、大男は先に歩き出す。
ルークは慌てて、木刀を返却すると、荷物と剣を手に、後を追いかけるのだった。
「俺の名は、ダーナス。
クーラク騎士団の騎士隊長だ。
よろしくな、ルーク。」
騎士団の食堂に案内されたルークは、その広さに驚いていた。
今は本当は昼飯時ではない。
まだ、少し早い時間なのだ。
そこを3人の人間が占拠している状態だった。
ちなみに、3人の目の前には、食事が置かれていた。
パンに野菜スープだ。
ただし、パンが固いパンではなかったのだ。
ルークは初めて、少し柔らかいパンを食べることができたのだった。
ちょっと感激していたりする。
野菜スープはいつもの塩味だ。
こちらはよく知った味だった。
「で、カシス、ルークの実力はどうだった?
感想を聞かせてくれ。」
ダーナスがカシスに感想を促す。
「はい、間違いなく、一流の剣術でした。
騎士団に所属してもおかしくないくらいの腕前です。」
その回答にルークは驚いていた。
そんなに強くなっていたなんて想定外だった。
それもそのはずだ。
教本を学習した程度なのだ。
そこまで強かったなんて思ってもみなかったからだ。
だが、その教本の教えをしっかり覚えていたからこそ、「基礎」がしっかりできていたのだ。
その結果、カシスの動きについてこれていたし、逆に動きを「学習」して反撃できたのだ。
「あ、あのぉ、一流と呼ばれても実感がないんです。
僕は自分でちょっと修行した程度で、大したことしてないんですよ?」
ルークは思わず本当のことを話す。
だが、カシスは反論する。
「いや、あの動きは一流だ。
俺の動きを見切ったのみならず、俺の剣術で反撃してきた。
あれだけの動きができる者は、なかなかいない。」
「そうだな。
俺は途中から見ていたが、あの剣さばき、只者ではないと直感したぜ。
ましてや、カシスと互角の勝負を繰り広げたんだ、
一流じゃないとは言わせないぜ。」
ダーナスもカシスに同意する。
ルークは逃げ道を失った。
「ルーク、おもしろいことを教えてやろう。
このクーラク騎士団で、一番の腕前を持つ騎士は、このカシスだ。
俺でも勝てんから、そこは間違いない。」
「隊長・・・冗談にしておいてください。」
カシスは否定しているが、カシスが一番の剣術使いらしい。
その人と互角に戦ってしまったのだ。
逃げ道は完全に無くなってしまったのだった。




