17-6 乗り込み!
深夜。
街から外れた場所の地下に、犯人のアジトがあった。
ルークが先行して、突入したところ、男2人が待っていたのだ。
すぐさま、騎士によって、拘束された。
「な、なんなんだ、貴様ら!?」
ルークは犯人たちの言葉に耳を貸すことなく、“思考読破”で頭の中を読み取る。
「なるほどな、公爵の依頼で誘拐を実行していたのは、
おまえたちだったのだな。
そして、馬車に乗せ、城まで運ぶ。
城の地下に運び込み、金をもらうか。
全て把握させてもらった。
こいつらを連行しろ!」
男たちは顔が真っ青になっていた。
ルークに全ての手の内を明かされたのだ。
騎士たちは、男たちを連行していく。
ルークは、レヴィを振り返り、言葉をかける。
「レヴィさん、朝になったら、城に乗り込みます、いいですね?」
「はい、公爵を逮捕するのですね?」
「その通りです。
容疑が固まりました。
証拠も城に残されています。
城を占拠しますので、騎士を集めてください。
それと、制服に着替えましょう。
もう、身分を隠す必要もないでしょう。」
「そうですわね。
では、準備致しますわ。」
レヴィとルークは一旦外に出た後、それぞれ準備に取り掛かるべく別れた。
ルークは宿屋に戻り、制服に着替える。
そして、城へと向かうのだった。
朝。
ルーク、レヴィ、そして騎士隊は城の前に集合していた。
唐突な騎士たちの登場に、城の衛兵たちが驚くのだ。
ルークが衛兵の元へ行き、身分を告げる。
「皇帝陛下直属の騎士、魔法騎士ルークです。
フェイブレイン公爵逮捕のため参上しました。
通して頂きたい。
邪魔するようなら、斬り捨てていく。」
衛兵たちは驚きつつも、ルークら騎士たちを通すのだった。
城内に入ると、ルークは騎士たちに指示する。
「公爵本人を見つけ次第、捕縛せよ。
抵抗するようなら、斬り捨ててもかまわない。
僕の権限で許す、よいな?」
「「「はっ!!」」」
全員の返答を確認すると、全員、城内の捜索に移った。
ルークは、おそらくいるであろう、公爵の執務室を目指す。
レヴィも同行する。
公爵の執務室に到着すると、ノックすることなく、ドアを開け放つ。
すると、公爵であるレイド=フェイブレインと、執事2名がいた。
「誰だ!
公爵と知っての狼藉か!!」
レイドは怒声を上げる。
だが、ルークは冷静に対処する。
「皇帝陛下直属の騎士、魔法騎士ルークです。
フェイブレイン公爵、あなたを逮捕します。
無論、ご存知ですよね?
誘拐及び殺人の容疑で逮捕します。」
レイドは、焦った表情を浮かべる。
「なお、昨日捕らえた人さらいどもは、白状しましたよ。
あなたの依頼を受けたとね。
そして、この城の地下で、殺人ゲームを行っていると。
もはや言い逃れはできませんよ。」
ちなみにだが、人さらいたちは一切白状していない。
だが、ルークの“思考読破”で看破された時点で、白状したも同然だった。
ここは、レイドを更に焦らせるために、ルークがあえて嘘をついたのだ。
「何のことか、知らないな。」
レイドは、焦りを隠せなかった。
もはや、言い訳すらできない状態だった。
「執事たち、こいつを斬り捨ててかまわん!
無礼者に鉄鎚を下せ!」
唐突に、レイドが命令を下す。
すると、執事たちはナイフを抜いたのだ。
だが、執事程度、ルークの敵ではなかった。
ルークは剣を引き抜いた瞬間、2人は倒れたのだ。
既に、事切れていた。
その剣速は、後ろに控えていたレヴィにも視えなかったのだ。
「なっ、何をしたのだ!!??」
レイドにも、もちろん視えていなかった。
ルークのあまりに早い剣技が。
「斬って捨てたまでです。
弱すぎて話になりませんね。
では、捕縛させて頂きます、公爵殿。」
ルークは無詠唱で、拘束魔法を唱えていた。
公爵はあっさりと、魔法の縄に捕縛されたのだ。
「くぅ、後悔することになるぞ!
私にこのようなことをするなど!」
「後悔するのはあなたですよ、公爵殿。
いや、レイド殿。
あなたは、公爵位をはく奪の後、絞首刑で処刑されるでしょう。
覚悟しておくことです。
そして、自らの行いを悔い改める事です。」
ルークがそう告げた時、騎士たちがやってきた。
ルークは騎士たちに命令を下す。
「レイド殿を捕らえよ。
監禁することを許す。」
騎士たちは、その言葉に従い、レイドを連行していくのであった。
その後、レヴィの配下5人を集め、誘拐された人たちがどのように運ばれ、処刑されたのか確認した。
すべて、ルークが案内していたのだ。
“思考読破”で視た内容に沿って、動いただけだった。
そして、処刑場所に到着し、現場を確認した際、血まみれになっていた。
血はかなり古い物なのか、黒くこびりついていた。
その量から判断するに、かなり多くの人間が殺されたのは、明白であった。
「ここで、罪なき人々が殺されていたのです。
これで、無念を晴らされると良いのですが・・・」
ルークはそう言って、手を合わせ、祈る。
レヴィらもルークに従い、祈った。
殺された人々が、来世で幸せになることを祈りながら。
事件は解決した。
人さらい及び、公爵逮捕という形で済んだのだ。
これには、皆、驚くほかなかった。
まさか、誘拐殺人犯が公爵本人だったとは、誰も思わなかっただろう。
だが、これは事実として公表されるに至った。
これで、フェイブレイン公爵家の評判は、地に堕ちたも同然だった。
皆は思った。
公爵家は取り潰しになるだろうと。
だが、その処分は、しばらく保留となった。
なぜならば、それが皇帝陛下の命令であったからだ。