17-2 レヴィからの連絡。
翌日。
ルークは、畑の様子を見に行った後、自宅に戻った時点で、“思念連結”にてレヴィより連絡が入る。
「ルーク様、聞こえていますか?」
「はい、レヴィさん、聞こえてますよ。」
レヴィは、ルークの返答を確認すると、本題に入る。
「こちらの準備が整いました。
王都に来て頂けますでしょうか?」
「了解しました。
今から向かいますが、王城で待ち合わせでしょうか?」
「いえ、城外門でお待ちしております。
それと、制服ではなく、普段着で来ていただけませんか?」
「普段着ですか?」
ルークは疑問符を浮かべる。
「えぇ、今回は内偵につき、制服では目立ちます。
公爵が警戒する可能性が高くなります。
ですから、普段着でお願いします。」
「わかりました。
一応、制服は持っていきますね。」
「はい、突入の際、必要となりますから、持ってきて頂けると助かります。
あと、バッジをお忘れなく。
身分証明になりますので。」
「了解しました。
では、今から準備して、向かいます。」
「はい、お願いします。」
ルークは、“思念連結”を解除すると、早速準備に取り掛かる。
制服とバッジを大きな袋に詰め込み、レーヴァテインを腰に差す。
格好は、普段着の状態であったため、問題なしだ。
準備完了だ。
すぐに、村長宅へ出向くも、村長は不在だった。
とりあえず、奥さんに言伝を頼み、ルークは王都へ飛んだ。
王都の巨大な門に到着した時、レヴィが居た。
レヴィはルークと同じく、庶民の服を着ていた。
その手には、荷物が入ったバッグを抱えていた。
「ルーク様、早速ですが、フェイブレイン公爵領へ参りましょう。
私の肩に触れてください。」
「はい。」
ルークはレヴィの肩に手を置く。
「“瞬間移動”!!!」
レヴィが呪文を解放した瞬間、見知らぬ都市の城壁が、目の前に広がっていた。
「ここは?」
「ここは、フェイブレイン公爵領の都市ルクサスメリルになります。」
ルクサスメリルと聞いて、ルークは内心驚いていた。
まさか、母親が住む都市が、目下調査対象の都市と一緒だったとは、驚くほかない。
偶然とは恐ろしいものであった。
「では、都市内部へ参りましょう。」
「はい、行きましょう。」
二人は、都市ルクサスメリルの城外門に向けて歩き出すのだった。
二人は、城外門にて、門番に軽くチェックを受けると、都市内部へと入る。
そして、まずは喫茶店に入る。
最初に二人は紅茶を頼むと、すぐに紅茶が出てきた。
紅茶を飲みながら、“思念連結”にて会話を行う。
内容が内容だけに、言葉にして話すわけにはいかないからだ。
「これからの作戦について、お話しします。
私は、内偵に入っている部下と連絡をとります。
部下の数は5名です。
彼らに連絡をとり、状況確認を行います。
その間、ルーク様は、都市内部のどこにでも移動できるよう、
偵察をお願いします。」
「わかりました。
都市内部を散策します。
あと、“情報収集”も並行して行います。」
「はい、お願いします。
私は部下と連絡を取り、状況がつかめましたら、ルーク様に報告します。」
「わかりました。
ちなみに、散策が終わったらどうしましょうか?」
「自由行動を取ってもらっても大丈夫です。
犯人たちが動くまで、都市全体を偵察していてください。
無論、我々も行います。」
「わかりました。
では、レヴィさんとは別行動、ということですね?」
「その方が目立たなくて済むかと。」
ルークはコクリとうなずく。
レヴィもうなずく。
これで、会話は終了だった。
後は、互いに任務をこなすのである。
二人は軽く食事をした後、喫茶店を出る。
そして、思い思いの方向へと歩いていくのであった。
ルークは、まだ昼だったこともあり、都市内を散策し始める。
無論、“情報収集”は欠かさない。
今のところ、異常は無い。
都市の四分の一を散策したところで、日が暮れてきた。
ルークは、大衆食堂で食事を摂った後、宿屋に入った。
しばらくは、この宿屋を拠点として、活動することになる。
なお、“情報収集”は常時つけっぱなしだった。
犯人は夜動く可能性があった。
だから、深夜まで起きて、調査を行っていた。
だが、その日は何も起きなかった。
翌日。
ルークは眠い目をこすりながら、食堂へと向かう。
朝食を摂った後、都市の散策を行う。
残り四分の三は、明日までには終わらせたかった。
これが終われば、どこにでも“瞬間移動”できるようになるからだ。
地道な作業だが、やらなければならない。
今日は、住宅街を中心に歩き回った。
夕方頃に一旦終了した際は、都市の三分の二は散策が完了していた。
残り、三分の一、城や小高い丘付近が残っていた。
明日、そちらに足を延ばす予定だった。
小高い丘・・・と聞いて、思い出すのは母親の手紙だ。
手紙には、『小高い丘にある屋敷』と書いてあったのだ。
もし、屋敷があれば、寄ってみる事にしよう。
話を聞くだけだ。
依頼事は全て断る。
この方針に変わりはない。
ルークはそう考えつつ、宿屋へと戻るのであった。
その日の夜も、事件は起きなかった。