17-1 ルドマンの帰還。
翌日。
ルークは朝のルーティンをこなすと、ドアを開けて外に出る。
そして、中央広場へと向かった。
村長は、昨夜の時点で見つかっていない。
よって、再度捜索を行う必要があった。
中央広場に到着すると、数人の村人が集まっていた。
ルドマンの奥さんもいた。
皆、かなり心配していた。
ルークが到着すると、みんなで作業分担が開始される。
「僕は、また魔法で周辺を確認してみます。」
その言葉に、皆がうなずく。
そして、捜索を開始しようと思った矢先だった。
「おまえたち、何してる?」
そこに、ルドマンが現れたのだ!
「村長!?」
「村長こそ、今までどこに行ってたんだよ!?」
ルドマンは面倒くさそうな表情になる。
「ええい、どこにいてもいいだろうが!
ほれ、わしの心配より、畑の手入れでもしておれ!」
ルドマンは怒りながら、皆を追い払う。
だが、村人は村長が無事だとわかると、安心した。
そして、少しずつ散り散りになっていったのだ。
ルークも一安心し、帰ろうと思った矢先だった。
「ルーク、おまえに話がある。」
ルドマンの声だった。
ルドマンを見ると、かなり真剣な表情だった。
何かあったのだろうか?
「わかりました。」
ルークはうなずくと、村長に従い、村長宅へと向かうのだった。
村長とルークは椅子に座ると、会話が開始される。
「実はな、昨晩、おまえの母親に会ってきた。
いや、正確には、会わされた。」
「へっ?」
ルークには意味がわからなかった。
母親に会った?
どういう意味だ?
捨てた母親が何故今更?
「そこで、これを預かった。
これをおまえに渡す。
中身は、家に着いてから読んでくれ。」
ルークは、ルドマンより手紙を預かる。
「あの、母親って一体?」
ルークの質問に、ルドマンは少し考えた後、話し出す。
「おまえの母親は、おまえが生きていることに安心しておったよ。
何故おまえを捨てたのか、その理由も語ってくれた。
だが、ルーク、その理由は直接聞くべきだ。
だから、おまえは、母親に会って来い。
いいな?」
ルドマンは、有無を言わさぬ表情をしていた。
いつもの村長とは思えない表情だ。
「その、わかりましたとも言い難いのですが。
何故、今更母親が村長に?」
「その手紙を読めばわかる。
そして、会って来い。
真相はそこではっきりする。」
「いや、しかし・・・」
「ともかく、わしが話せるのはここまでだ。
後は、自分で確認しろ。」
ルドマンは話を切った。
これ以上、語るつもりはないらしい。
「・・・わかりました。」
ルークはそれだけ言うと、村長宅を退出するのだった。
ルークは自宅に到着すると、椅子に座り、手紙を開く。
綺麗な文字であった。
内容は簡潔であった。
『ルーク、あなたと話がしたいです。
フェイブレイン公爵領の都市ルクサスメリルへ来てください。
小高い丘にある屋敷で、私は待っています。
母より。』
フェイブレイン公爵・・・?
そこで思い出す。
今回の任務で関係する貴族名だった。
まさか、関与している可能性が?
いや、それはないか。
少し考え過ぎのようだ。
ともかく、母親が会いに来いと言っている。
理由は不明だ。
捨てた人間が、何故、探しているのだろうか?
これは行くべきなのか、ルークは考えた。
村長の言葉では、『捨てた理由を教えてくれた』と言っていた。
何故捨てたのか、聞きにいくべきだろうか?
それに、それだけを聞くために向かうのか?
他に何か企みがあるのではないのだろうか?
ルークは現在、皇帝陛下直属の騎士だ。
この地位を利用しないとも限らない。
だが、考えても埒が明かないのも事実だ。
やはり、会うべきか?
母親と会った時、自分は正気を保てるのだろうか?
理由によっては、誤って斬り捨てる可能性も、なくはないかもしれない。
どうすべきなんだ?
ルークは迷った。
しばらく迷った後、会うことに決めた。
理由を聞くだけにしようと思ったのだ。
何か提案された場合は、きっぱり断るつもりだ。
これでいい。
方針は決まった。
あとは、レヴィの任務先と一緒であれば、ついでとして行くことにした。
それまでは、任務を優先することにするのだった。