16-9 帰還と村長の行方。
夜。
ルークは、村に帰還した。
さて、村長宅へ向かおうと思った矢先だった。
「ルーク!
どこ行ってたんだ?」
エドガである。
松明を片手に歩いていた。
こんな時間に、何をしているのだろうか?
ルークは疑問に思った。
だが、次のエドガの言葉で、その理由が判明する。
「大変なんだ、村長が行方不明なんだ!」
「えっ!?」
ルークは驚く。
「家にはいないのかい?」
「あぁ、奥さんがみんなの家を回って探していたんだ。
だから、みんなで今探している。
魔法で探してくれないか?」
「わかった、やってみよう。」
ルークはすぐさま“情報収集”を発動させる。
村内、村の外、などなど範囲を拡大させながら探す。
だが、見つからない。
一番近くのクーラクの街まで、範囲を拡大したものの、見つからない。
どこへ行ったのであろうか?
皆も必死に探したものの、全く見つからなかった。
夜も更けてきたこともあり、皆、一旦解散となった。
その頃、ルドマンはとある貴族の屋敷にいた。
そう、ペゾスの村からだいぶ離れた距離に、ルドマンが居たのだ。
だから、ルークの“情報収集”にも引っかからなかったのだ。
そのルドマンの目の前には、一人の女性が座っていた。
明らかに貴族のドレスを纏った女性である。
ただ、少し歳老いた女性だった。
どうやら40代の女性のようだ。
ルドマンは、何故ここに連れて来られたのか、わからなかった。
だが、一つだけ思い当たることがある。
それは、親戚に騙されて連れてこられたということだ。
そう、となると、一つしか思いつかないのだ。
ルークのことだ。
ルークのこと以外、ありえないのだ。
「ルドマンさん、お聞きしたいことがあります。」
女性は、ルドマンに問う。
「ルークのことについて、教えてくださいませんか?」
ルドマンは、目の前の女性を前に、警戒していた。
この女性は初見だ。
貴族の人間であることはわかる。
だが、誰なのか、わからなかった。
だから、聞いてみることにした。
「あなた様は、何故ルークのことを聞きたがるのです?」
その答えは簡単だった。
「それは、ルークが私の息子だからです。
私が生んだ子供だからです。」
その言葉に、ルドマンは驚愕するほかなかった。
まさか、ルークの実母とは思わなかったのだ。
しかも、ルークを探している本人が、かつてルークを捨てた本人だったとは。
「あなた様は、自分の息子を捨てたではありませんか!」
ルドマンは、きっちり指摘していた。
だが、女性は揺るがなかった。
「そうですね。
捨てたと言われてしまえば、その通りになるのでしょう。
ですが、真相は違うのです。
実は・・・」
そこから続く言葉に、ルドマンは驚愕のあまり、固まるしかなかった。
ルドマンは、真実を知った上で、女性にルークのことを語ることにした。
話は、深夜まで続くのだった。