16-5 講習会。
午後。
一階の講堂には多くの司祭候補、司祭が集まっていた。
50人くらい集まっていた。
そこで、ニコラウス大司教が登壇すると、皆一斉に静かになった。
ちなみにルークは、登壇せずに、すぐ近くで待機していた。
「皆さん、本日は、講習会に集まって頂き、ありがとうございます。
本日は、蘇生魔法に関する魔法理論の講座を行います。
講座の説明をしてくれるのは、魔法騎士ルーク様です。」
そして、ルークも登壇し、ニコラウスの横に立つ。
「皆さん、初めまして。
魔法騎士ルークです。
本日は、ニコラウス大司教様の依頼で、
蘇生魔法に関する講座を担当することになりました。
よろしくお願いします。」
そこで質問が飛ぶ。
質問者が手を挙げ、立ち上がると話し始める。
「開始前にご質問があります。
ルーク様は、蘇生魔法が扱えるのでしょうか?」
それに答えたのはニコラウスだった。
「えぇ、扱えますよ。
先日、皇帝陛下暗殺未遂事件の際、皇帝陛下は暗殺されました。
ですが、その時、蘇生魔法をかけたのが、ルーク様だったのです。
これで納得頂けたでしょうか?」
そこで、皆、ざわざわとざわめきだす。
皇帝陛下暗殺未遂事件自体は、既に広まっている事実だった。
だが、実際に死んだという報道はなかった。
そう、つまり一部情報は隠蔽されていたのだ。
しかし、ニコラウスは事実を話してしまったのだ。
皆が、情報と異なることに驚くほかなかった。
ニコラウスは手を2回叩くと、静かになった。
「では、これより、ルーク様に蘇生魔法の魔法理論について話して頂きます。
皆、よく聞いて覚えてください。
蘇生魔法が扱えないようでは、司祭失格ですよ。」
厳しめに言ったが、事実なのだ。
ニコラウスは壇上から降りて、あとは、ルークにお任せという状態になった。
ルークは早速、蘇生魔法“復活”について、話し始めることにするのだった。
ルークの講義は、かなり噛み砕いた内容となっていた。
ちなみに、ルークは教本を見ることなく、話していた。
記憶にこびりついている内容を見返して、話しているだけに過ぎない。
あとは、それがどこまで理解できるか不安ではあったが、極力わかりやすいよう、噛み砕くことにした。
魔法にかかる魔力量、そして、呪文解放時に注意する点など細かいこと注意点も教えていく。
司祭候補、及び司祭は、ルークの話をまじめに聞いていた。
そして自身が学んだ内容と、ルークの言葉に違いが無いか吟味する。
不足があれば、質問をして、ルークに聞く。
ルークは質問に対しても、一つ一つ丁寧に教えていった。
その内容を聞きながら、ニコラウスは、非常にわかりやすい内容だと思っていた。
魔法を教える際、どうしても、教本頼みになることが多い。
それ自体は決して悪い事ではない。
だが、教本の内容はあくまで、教本を創った人間の感性にすぎない。
よって、細かな情報が欠けていることが多いのだ。
それをルークは言葉で補っていた。
ルークは一つ一つ実践した内容をしっかり覚えていた。
よって、より細かいことにも気づいていた。
これは、「学習能力の強化」における賜物であった。
ルーク本人は、そこまで気が付いていなかったが。
やがて、ルークの講義が終わり、質問タイムに入る。
質問もきっちり答えるあたり、正しく認識していることが確認できる。
皆、理解しているようだった。
首を捻っている者はいない。
ニコラウスも、ルークの教えに間違いがないことを確認していた。
それにしても、ここまで正確に理解しているとは、さすがは『魔導を極めし者』であると思ったのだ。
ルークは魔法使いや魔導士の魔法のみならず、神聖魔法もきちんと理解し、使いこなしていたのだ。
そのことをニコラウスは理解していた。
だからこそ、“大魔道士”を名乗る所以なのだろうと思ったのだ。
質問が一通り終わり、静寂が続いていた。
ルークの講義も終わりを迎えた時、事件が発生するのだった。