表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
創造系魔法使いのスローライフ!?  作者: 稀硫紫稀
第16章 大司教の依頼を受けることになりました。
188/526

16-4 大司教の依頼。②

ルークとレヴィはまっすぐに大教会を目指す。

大教会は、この王都でもかなり大きい建物だ。

基本、目立つため、待ち合わせ場所には最適だった。

やがて、大教会の前に到着した。


「到着しました、では、中に入ります。」


レヴィがそう告げると、大教会の中へ入る。

一度入ったことがあるが、相変わらず広い場所だ。

その時、受付の女性がやって来たのだ。

無論、緊張しているのだろう、一礼してきたのだ。


「あ、あの、教会にどのような用件なのでしょうか?」


どうやら、近衛師団の制服は、彼らにとって畏怖の対象のようだ。


「私は、近衛師団のレヴィと申します。

 本日は、大司教ニコラウス様にお会いすべく、

 魔法騎士ルーク様をお連れしました。

 お手数ですが、大司教様に手続き願いたいのですが。」


「はい、伺っております。

 では、案内役を呼んでまいります。」


そう言って、受付担当者は、慌てて姿を消した。


「・・・なんだか、怖がられているんですかね?」


ルークがそれとなく、レヴィに質問する。


「そうですね、私たち近衛騎士が滅多に訪れる場所ではありませんからね。

 怖がられても仕方ありませんね。」


レヴィは苦笑していた。

待つことしばし。

受付担当者が、案内役の担当者を連れて戻ってきた。


「では、ルーク様、ご案内致します。」


案内役も慌てているようだ。


「レヴィさん、ありがとうございます。」


「いえ、この程度のこと。

 では、ルーク様、ごきげんよう。」


レヴィはルークを見送るのだった。



ルークは案内役に従い、三階まで階段で昇る。

三階もかなり広い面積があった。

一応、三階が最上階のようだ。

案内役は、両開きの大きな扉の前で止まる。

そして、ノックし、片側の扉を開き、中に入る。


「大司教様、魔法騎士ルーク様をお連れしました。」


「ご苦労様です。

 さ、ルーク様、おかけください。」


ルークが執務室に入った際、執務中の大司教ニコラウスが立ち上がり、挨拶してきたのだ。

人のよさそうな印象のある方である。


「では、失礼します。」


ルークは勧められたソファに座る。

その対面に、ニコラウスが座る。

案内役は、ドアを閉めて退出していた。


「初めまして、魔法騎士ルーク様。

 私は大司教ニコラウスと申します。

 よろしくお願い致します。」


「はい、ルークと申します。

 こちらこそよろしくお願いします。」


こうして、2人は対談することになるのだった。



「さて、ルーク様、あなたにお聞きしたことがあり、今回お呼びしました。」


ニコラウスはそう告げると、ルークをまっすぐに見る。


「何でしょうか?」


「陛下暗殺事件の件です。」


なるほど。

やはり蘇生魔法の件のようだ。


「あの時、ルーク様は皇帝陛下を復活させるために、

 蘇生魔法を使ったと伺っております。

 事実でしょうか?」


ニコラウスの視線が厳しくなったように見えた。


「事実です。

 陛下はあの時、暗殺者の剣で心臓を貫かれ、即死状態でした。

 残念ながら、回復魔法での復帰は困難と判断しました。

 よって、蘇生魔法により、復活させたのです。」


「なるほど、やはり事実だったのですか・・・」


ニコラウスは情報を吟味しているのか、考え込む。

そして、再び質問を行う。


「では、蘇生魔法について質問です。

 ルーク様は、どのような形で、蘇生魔法を覚えたのでしょうか?」


「はい、実は王都の本屋に、神聖魔法の司祭が学ぶ教本がありまして、

 それを買い取りました。

 そして、自宅で勉強しただけです。

 回復魔法と攻撃魔法の一部しか実践確認できませんでしたが、

 その時、蘇生魔法も学んでおります。」


「なるほど、司祭級の教本のみで、蘇生魔法を覚えたのですな。

 普通、教本のみで理解することは難しいのですが。

 ルーク様はそれを難なくやってみせたわけですな。」


ニコラウスは関心しているようだ。


「魔法の理論の理解は問題ないという認識でした。

 ですが、蘇生魔法はまず使う機会がありませんでした。

 ですから、試すことなく本番だったものですから、少々心配だったのですが。

 とりあえず、うまくいったので、安心しました。」


「そうですか。

 皇帝陛下を看た司教に話を伺いましたが、

 陛下は記憶の齟齬もなく正常だったと伺っております。

 ルーク様の術式が完璧であったという証拠でしょう。」


ルークはそれを聞き、安心した。

あの時は、術式が完璧だという自信があった。

しかし、皇帝陛下復活後の状態確認はしていなかった。

すぐに王城へ連れられたからだ。

だから、問題なく復帰されたのか、心配だったのだ。

だが、翌日、元気な皇帝陛下の姿が見れたので、そこで問題なかったと判断したのだ。

それに、ニコラウスの言う司教の話を聞いて、問題なかったと確信に至ったのだ。


「では、更にお聞きしたいのですが、

 上級に当たる例の蘇生魔法も扱えるのですか?」


例の蘇生魔法と聞いて、ルークは考える。

恐らく、“復活(リザレクション)”よりも難しい、あの魔法しか該当が無い。


「“再誕(リ・バース)”のことですか?

 術式は完璧に覚えています。

 ただ、使う機会がないので、試していませんが。」


「なるほど、やはり理解されていたのですね。

 では、“至天消失波動(ホーリー・ブレイク)”も、やはり?」


「“至天消失波動(ホーリー・ブレイク)”は、発動を確認しております。

 よって、使うことができます。」


ニコラウスはため息をつく。


「そうですか、神聖魔法、最大の攻撃魔法も会得されていたのですね。」


「・・・使いどころが難しい魔法なので、封印していますが。」


それを聞いて、ニコラウスは笑う。


「そうでしょうな。

 発動までに時間がかかる魔法ですからな。

 魔導士にとっては、致命的な欠陥のように映るのでしょう。

 しかし、あれは光属性に近い魔法ゆえ、致し方ないのですよ。」


「なるほど。

 まぁ、威力が大きい分、致し方ないかもしれませんね。」


そこで、一旦、言葉が止まる。

ニコラウスは一息つくと、言葉を紡ぐ。


「ルーク様は神聖魔法をマスターされていると判断致しました。

 司祭以上、司教クラスの能力を持っていると判断されます。

 本来であれば、教会に迎えたいくらいの逸材なのです。

 ここまで、上位魔法を極めた者は、ごくわずかなのですから。」


どうやら勧誘したかったようだが、皇帝陛下の騎士だから諦めたようだ。

そこで、ルークは質問してみることにした。


「蘇生魔法を扱える司祭は少ないのですか?」


「えぇ、少ないです。

 司祭は多くいますが、ほとんどの者が、中級魔法どまりなのです。

 つまり、“回復(リカバリ)”は扱えるが、蘇生魔法は扱えない者ばかりなのです。

 我らも手を尽くしているのですが、やはり術式が難しいのか、

 なかなかうまくいかないのです。

 そこで、ルーク様にお願いがあります。」


「はい?」


何となく、嫌な予感がした。


「司祭候補及び、司祭に蘇生魔法について、

 講座を開いてもらえないでしょうか?

 我らの教え方に問題がある可能性があるかもしれません。

 ですから、外部の方で、蘇生魔法を良く理解された方の助力を願いたいのです。

 そこで、白羽の矢が立ったのが、ルーク様という訳です。」


最近、教官役が多くないか?

ミシェリにフェイドに、騎士団にと。

教えることが多くなってきたのは、いいことなのだろうか?

魔法騎士の役割ではないよな?

などなど、疑問が頭の中を埋めていく。

とりあえず、頭の中を整理し、検討してみる。

魔法の理論を教えるのは、別に構わない。

だが、理解してくれるかどうかは別問題だ。

どこまでうまくいくのか、それが心配だった。


「ちなみに、実践することはたぶんできないと思いますが、

 魔法理論を語って聞かせるのみでいいのでしょうか?」


「はい、その程度で構いません。

 我らも、実践は難しいと考えております。」


ニコラウスも、わかっているようだ。


「わかりました。

 引き受けましょう。

 それで、いつ行いましょうか?」


その言葉に、ニコラウスは感激していた。


「ありがとうございます。

 では、本日午後に講座を開催致しましょう。

 すぐに手配しますので、お待ちください。」


そう言って、ニコラウスは立ち上がり、どこかへ行ってしまった。


「大丈夫かな・・・

 ちょっと心配になってきた。」


ルークはそんなことをひとりごちるのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ