15-13 寂しい別れ。
その日の夜。
ルークはウォーザード伯爵、フェイド、リリアーナの3名を応接室に呼んでいた。
フェイドの修行が完了したのである。
課せられた仕事は完了であった。
「よくやってくれた、ルーク。
まさか、フェイドが魔導士になれるとは思わなかったよ。
君のおかげだ。
これは謝礼だ。
受け取ってくれ。」
「ありがとうございます。」
ルークは金貨の入った袋を受け取る。
「ルーク、おまえのおかげで、魔導士になれた。
感謝する。
今度は剣で勝てるよう、修行するつもりだ。」
フェイドが得意満面に言い放つ。
「たまには、魔法の勉強もしてくださいね。」
ルークが苦笑する。
「ルーク様、お別れなんですか?」
リリアーナは悲しそうな表情を浮かべていた。
そんなリリアーナを諭すように、ルークは優しく述べるのだ。
「リリアーナ殿、以前教えた魔法を覚えていますか?
何かあれば、その魔法を使って僕に連絡してくださいね。」
実は、ルークは、リリアーナに“思考連結”を教えていた。
だから、いつでも連絡可能なのだ。
「はい、連絡しますね。
また、お会いできますよね?」
「はい、もちろんです。」
そう言って、ルークはリリアーナの頭を優しく撫でるのであった。
その後、ルークは、村に帰還することになるのであった。
仕事を終えた以上、いつまでも残っているわけにもいかないのだ。
無論、伯爵も引き留めはしなかった。
リリアーナの修行の名目で、引き留めても良かったのだが、理由として弱すぎたのだ。
ルークは長期にわたって、リリアーナの修行を見てきたのだ。
更に指摘すべきことも無いだろう。
そう判断し、引き留めることはしないのであった。
ただ、リリアーナが寂しがることは予想済であったが。
ルークが去った後、リリアーナは1人、自分の部屋の中でため息をついていた。
リリアーナにとって、ルークとの時間はとても大切な時間だった。
そして、とても幸せな時間だったのだ。
彼女はルークに恋していたのだ。
それがはっきりしたのであった。
だから、この恋を叶えたいと強く思った。
いつか、ルーク様のそばに・・・
そう願わずにはいられないのであった。
彼女の想いは、いずれ叶うのであるが、それはまだ先の話であった。