15-5 修行開始。
翌日。
ルークは、フェイドの部屋に行き、ドアをノックする。
すると、フェイドが出て来た。
ただ、機嫌が悪そうだ。
ルークは部屋に招かれ、ソファに座った。
2人がソファに座った時点で、会話が始まる。
「フェイド殿、おはようございます。
今日から修行の教官を務めさせて頂きます。
よろしくお願いします。」
「おう、よろしく頼む。
で、まず何をすればいい?」
「まずは、どこまで魔法が使えるのか、教えてください。」
これには、フェイドは困ったように、鼻の頭をかく。
「中級どまりだよ。」
「なるほど、了解しました。」
ルークはそう言うと、立ち上がり、部屋の中に正方形の結界を張る。
「な、なんだこれ!?」
フェイドが驚いているが、おかまいなしだ。
「では、この結界の中に入ってください。
そして、中級魔法を唱えてください。」
フェイドは、言われた通りに結界の中に入ると、魔法を唱え始める。
その間に、ルークは結界内に、かかしもどきを用意する。
フェイドはかかしもどきに向けて、呪文を解放する!
「“炎熱剣”!!!」
火炎の剣が出現し、かかしもどきを斬り裂く!
その間、ルークは、“情報収集”で、フェイドの魔力の状態を確認していた。
どうやら、魔力が無駄に多かったり少なかったりと、波があるのが判明したのだ。
これは、基本からやり直しだ。
「どうだ?」
「原因がわかりました。
魔力を使用する際、波があるようです。」
「波?
なんだそれ?」
フェイドにはわけがわからないのだ。
「フェイド殿、まずは魔力を一定に保つ修行を行います。
いいですね?」
「お、おう!」
ということで、フェイドの辛い修行が開始されるのだった。
夕方。
ルークは、今度はリリアーナの部屋を訪ねていた。
すると、ドアが開き、リリアーナが頭を下げてきたのだ。
それは、とても礼儀正しい作法であった。
「リリアーナ殿、失礼しますね。」
「はい、お待ちしておりました、ルーク様。」
リリアーナの頬はほんのりと赤い。
リリアーナはルークを誘導するように歩き出す。
そして、ソファに座ってもらう。
すると、リリアーナは、お茶の準備を始めたのだ。
お茶の入ったティーポットを、ティーカップに注ぐ。
そして、ルークの元まで運ぶのだ。
それは非常に上手であった。
ルークはというと、そのリリアーナの動きをじっと見ていた。
修行と聞いたから、リリアーナの動きを注視する必要があると考えたのだ。
「さぁ、どうぞ、お飲みください。」
リリアーナの言葉に、ルークはこくりとうなずき、紅茶を飲む。
「いかがでしょうか?」
「おいしいです、リリアーナ殿。」
その言葉に、リリアーナは笑顔になる。
そして、リリアーナは自分のティーカップにもお茶を注ぎ、ルークの隣に座ったのだ。
「あの、ところで、リリアーナ殿の修行とは一体?」
「はい、ルーク様のお世話をすることです。
お茶に、お菓子に、お料理も。
作法がきちんとできているか、ルーク様に見て頂きたいのです。」
これには、ルークが焦る。
「あの、僕は作法に詳しくはないのですが。」
「はい、その点は気にしないでください。
ルーク様が、私の動きを見て、おかしいなと思ったら指摘して頂けますか?
ちゃんと説明しますから。」
なるほど、おかしい動きがあれば、指摘するのみでよいのか。
ルークは納得すると、うなずく。
リリアーナはルークが納得したのを確認すると、お菓子の用意を始めた。
こうして、ルークのお世話が夜まで続くのだった。