15-3 リリアーナの策謀。
その日の夜。
都市ラークネスの城にて、会議が行われようとしていた。
リリアーナは、父親であるウォーザード伯爵と兄のフェイドを応接室に呼んでいた。
「相談したいことがある」、その一言だけ告げていたのだ。
三人が応接室に集まると、伯爵は口を開く。
「さて、リリアーナよ、相談とは何だ?」
「はい、お父様。
実は、ルーク様を呼んで頂きたいのです。
そこで、色々考えました。」
「ふむ、聞こう。」
伯爵は、娘がルークに興味を抱いていることに嬉しく思ったのだ。
これは、何かいい方法でも考えたに違いないと睨んだのだ。
「はい。
まずは、お兄様の修行の名目で、ルーク様を呼びます。
朝から夕方まで、お兄様の修行の面倒を見て頂きます。
そして、夕方から夜にかけて、私がルーク様をお世話します。
いかがでしょうか?」
「俺が、ルークに修行をつけてもらうのか!?」
フェイドは驚く。
「はい。
お兄様は魔法の修行がいまいちだって、いつもぼやいています。
でしたら、最強の魔導士である、ルーク様に学ぶべきです。
ルーク様なら教えるのも上手だと思いますよ。
それに、私は、ルーク様のお世話を試してみたいのです。
花嫁修業の効果があるのか、確認したいのです。」
リリアーナの言葉に、フェイドは気圧されていた。
確かに、彼女の言うことは正しい。
しかし、リリアーナが変なのだ。
ここまで積極的なリリアーナは初めてだった。
「それは、良い手だな。
フェイドが修行中の間は、うちに滞在してもらおう。
そうすれば、無理強いではないと判断されるだろう。
それに、リリアーナの頼みだ、無下に断ることもないだろう。」
伯爵は、前回のルークの反応を覚えていた。
あれは明らかに、リリアーナのことも尊重した態度を取っていた。
ならば、リリアーナの頼みを聞いてくれるはずだ。
「俺の意見は無視かよ!?」
フェイドは抗議するも、リリアーナがトドメを指す。
「お兄様、そんなことでは、いつまで経っても魔導士になれませんよ!」
これには、フェイドは閉口するよりほかなかった。
「ふっふっふ、これは一本取られたな、フェイドよ。
今回は、リリアーナの言うとおりだ。
ところで、リリアーナよ。
ルークにお世話できるほど、勉強できているのかい?」
「はい、お茶の入れ方はもちろん、お菓子の用意まで。
最近は料理も学んでおります。
ルーク様に試したくて、うずうずしております。」
リリアーナはやる気まんまんのようだ。
これは、リリアーナの願いを叶えてやらねばなるまい。
伯爵は、フェイドを見る。
「さて、フェイドよ、兄として妹の願いを叶えるために、ここは折れてやれ。
これは、リリアーナが考えた策だ。
おまえにも利がある以上、断れんだろ?」
フェイドは、妹のことも考え抜いた末、コクリとうなずく。
そう、フェイド自身もわかっていたのだ。
最近、魔法がうまくいかないのだ。
中級魔法どまりなのである。
このままではいつまで経っても、魔導士にはなれない。
専属の魔導士が欲しいところだったのだ。
「よし、決定だな。
私からルーク宛に手紙を書こう。
リリアーナ、楽しみに待つがよい。」
「はい!」
リリアーナは元気よく返事をするのだった。