14-9 皇太子の考え。
皇帝陛下が去った後、クリシュナらは残り、会議を行うことにした。
「まずは、ルーク、“思考読破”で視た内容を教えてくれ。」
「はい。
彼らの狙いは、皇帝陛下及び皇太子と近衛騎士の暗殺だったようです。
そして、彼らは、ミーディアス王国から来た刺客のようです。
黒づくめ4名の動きを指示していたのが、レヴィさんが捕らえた男でした。
この男を問い詰めれば、更に情報を吐くかもしれません。」
「なるほどな。
尋問は始まったばかりだからな。
新しい情報は今のところない。
ミーディアス王国が動いたとなると、いよいよ、
戦争を仕掛けるつもりかもしれん。」
クリシュナは思考する。
ミーディアス王国とは、ルーニア皇国西部に位置する国家である。
そして、ミーディアス王国とルーニア皇国は仲が悪い。
これまで何度も「条件付き」の戦争をしてきている。
戦力は互いに均衡しているため、領地の取り合いを繰り返してきたのだ。
だが、今回は暗殺という手段に出てきたのだ。
これは間違いなく、ルーニア皇国の国家中枢を崩壊させるつもりだったのだろう。
となると、「条件付き」の戦争ではなく、本物の戦争をする可能性が高くなった。
今回の暗殺劇の失敗で、動きが変わる可能性もあるが、間違いなく何らかのアクションを起こすだろう。
これについては、皇帝陛下も気づいているはずだ。
だから、何らかの手を打つ必要があるかもしれない。
クリシュナは、レヴィを見て、指示を行う。
「まずは、敵の内情を探る必要がありそうだな。
レヴィ、内偵の数を増やしてもかまわない。
ミーディアス王国に内偵を送ってくれ。
それと、内情を漏らした者がいないか、調査してくれ。」
「承知しました。」
レヴィは、うなずく。
「あとは、「条件付き」ではない戦争が発生する可能性がある。
ルーク、ベルガー、念のためだが、考慮しておいてほしい。
特にルーク、君には大きく動いてもらう可能性がある。
君は、皇帝陛下直属の騎士だ。
大きな権限を持っている以上、君は全軍を動かすこともできる。
軍を動かし、この国を救ってもらうかもしれん。」
「了解しました。
軍を動かしたことはありませんが、なんとかします。」
「あぁ、そうしてくれると助かるよ。
ベルガ―、君はいつでも近衛師団を動かせるようにしてくれ。」
「了解です、お任せを。」
ここで、クリシュナは一息つく。
「もし、ミーディアス王国が動けば、全面戦争になる可能性がある。
その時、私たちは全力で戦わなくてはならない。
護るか滅ぼされるかの戦争になるだろう。
その時は、貴君らの力を発揮してくれ。
私は、今のうちにできることはしておく。
頼んだぞ。」
「「「はっ!!!」」」
全員の敬礼に、クリシュナはコクリとうなずくのだった。