14-8 真紅の魔剣。
その日の夜。
ルーク、ベルガ―、レヴィは、王城に向かっていた。
状況を確認するため、クリシュナの元に行こうとしていたのだ。
王城に到着すると、クリシュナの執務室へ通された。
「皆、座ってくれ。
状況を話す。」
クリシュナは落ち着いていた。
全員座ると、話し始める。
「父上は、無事蘇生された。
記憶も問題がなかった。
とりあえず、今は安静にされている。
念のため、大教会の司教にも来てもらって様子を見てもらっている。
恐らく問題ないだろうとの判断だった。」
ここで一息つくと、ルークを見る。
「ルーク、君のおかげだ。
君のおかげで、父上は生き返った。
感謝しかない。
ありがとう。」
「いえ、たいしたことはしていませんよ、殿下。」
ルークは焦って言葉を返す。
その言葉に、クリシュナは笑う。
「君は凄いな。
威張らない上、たいしたことじゃないと言い切るなんてな。」
「それと、あの時、ルークが冷静に対処しなければ、
我々は全滅していたでしょう。
敵も考えたものです。
陛下のみならず、殿下や我らまで暗殺の対象にしていたのですから。」
ベルガ―の言葉に、クリシュナはうなずく。
「そうだな、あの時、ルークが冷静に対処してくれたからこそ、
我らは生きているのだ。
ルーク、君には感謝しかない。」
「そうですね。
ルーク様は、何もかも見抜いていらっしゃったのですから。
私も感謝致しますわ。」
そう言って、クリシュナ、ベルガ―、レヴィが頭を下げたのだ。
これには、ルークが焦ることになるのだ。
「あ、あの、頭をお上げください。
僕一人では対処できなかったんで、僕だけの力ではないですよ。
ベルガ―さんやレヴィさんに動いてもらったのも、そういう訳で。」
そこで、ベルガーが突っ込む。
「我らを呼び捨てにしたにも関わらず、今は、さん付けされるとはな。
まるで、あの時と人物が異なるではないか。」
「あ、あの時は咄嗟だったので。」
ルークが焦ると、ベルガーとレヴィは笑い出す。
それにつられ、クリシュナも笑い出すのだった。
「さて、今夜も遅い。
明日には陛下の容体も安定するだろう。
明日、陛下に会ってもらえないか?」
クリシュナの提案に、ルークはうなずく。
「了解しました。
では、明日、王城にまた集合でよろしいでしょうか?」
「ああ。
おっと、ルークは王城に泊まっていくといい。
夕食も用意させよう。」
「ありがとうございます。」
ということで、ルークは王城で一泊することになるのだった。
翌日。
応接室に全員集合することになった。
ルークらが応接室へ行くと、既に皇帝陛下は在席していた。
相変わらず、行動が早いのである。
全員挨拶し、着席すると、話が始まる。
「皆、心配させてすまなかった。
ルークのおかげで、この通り無事だ。
一度は殺されてみるものだな。
生き返った瞬間、何かすっきりした気分がしたものだ。」
皇帝陛下は、そう言って、上機嫌に笑い出すのだ。
「父上、我々は心配したのですぞ。
冗談もほどほどに。」
クリシュナは諫める。
皇帝陛下は笑いを収めると、話し出す。
「わかっておる。
しかし、今回ばかりは本当に死んだと思ったのだ。
あの時、回避不可だったからのう。
敵も見事な手練れであった。
だが、運が悪かったな。
ルークという最強の騎士に阻まれてしまったのだからな。」
そして、ルークを見る。
「ルークよ、見事、余を助けてくれた。
感謝しても、しきれんくらいだ。
ありがとう。」
そう言って、皇帝自ら頭を下げたのだ。
「父上!?」
「陛下、頭をお上げください!!」
クリシュナとルークが慌てる。
皇帝陛下は頭を上げて、少し笑う。
「ここは謁見の場ではない。
おまえたちだからこそ、頭を下げたのだ。
これくらい許せ。」
そう言って、次にベルガーとレヴィを見る。
「おまえたちは犯人逮捕及び討伐を見事遂行したそうだな。
見事な働きであった。」
「いえ、我らの任務ゆえ、当然のことをしたまでです。
今回は、ルーク様の指示が無ければ、我らも陛下同様殺されるところでした。
ですから、今回一番の手柄はルーク様です、陛下。」
ベルガーは正しい情報を伝える。
ルークの指示が無ければ、上空の敵に気付けなかったのだ。
陛下の死に気を取られ、殺されていたかもしれないのだ。
それは、レヴィも同様であった。
周辺警戒を行っていたとはいえ、まさか訓練場の外の男に気がつかないとは、うかつだったのだ。
だから、ルークには感謝しているのだった。
「そうか、全て、ルークの手柄というわけだな。
ふむ、では、それ相応の褒美を与えねばならんな。
・・・しばし、待て。」
皇帝陛下は立ち上がると、応接室を出て行った。
数分後、皇帝陛下は、一振りの剣を持って戻ってきたのだ。
そして席に戻ると、ルークに差し出す。
「ルークよ、これを貴殿に授けよう。
我が家に伝わる宝剣だ。
ただ、この宝剣は少々面倒なものでな。」
ルークは剣を受け取る。
「どのように面倒なのでしょうか?」
そう問われ、皇帝陛下は少し笑みを浮かべる。
「簡単だ。
主と認めた者以外、全く扱えない魔剣なのだ。
それゆえ、我が家では誰も使いこなせない剣なのだ。
ただの宝の持ち腐れというべきだな。
ちなみに、クリシュナも幼少時に抜いている。
だが、何も起きなかった。」
「あの時の剣なのですか?」
クリシュナは思い出したようだ。
「あの時は、ただのボロボロの古い剣だと思いましたが・・・」
「そう、ただのボロボロの剣だ。
だが、この魔剣は生きている。
ルーク、抜いてみるといい。
もし、貴殿が認められた場合、その剣は生き返るだろう。」
「はい、では、抜いてみます。」
ルークは立ち上がると、剣を真横に構える。
そして、ゆっくり抜く。
鞘から抜き切ると、ボロボロの剣だった。
次の瞬間だった!
突然、剣に火がともり、剣全体を覆っていく!
「「「おおっ!?」」」
皆が驚いたのだ。
次の瞬間、剣が鮮やかに色づき、綺麗な真紅の剣となったのだ。
「やはり、ルークを主と認めたようだな。
ルーク、この魔剣の名は「レーヴァテイン」と言う。
これを貴殿に与える。
使いこなしてみせよ。」
「はっ。
ありがたく頂きます。
そして、使いこなして見せます。」
ルークは頭を下げる。
真紅の剣「レーヴァテイン」は、ルークの手により、蘇るのだった。