14-6 御前試合開始。
御前試合は開始された。
騎士同士の一対一の真剣勝負が始まったのだ。
その間、他の騎士たちは、その戦いを観戦するのである。
今回はランダムで決まった者と勝負することになっている。
戦うのは、それぞれ一回のみである。
トーナメント形式ではないのだ。
全部で、25試合を行うことになる。
それを皇帝陛下が直々に観戦するのだ。
皆、緊張を覚えつつも、いつも通りに剣を振るうのみである。
皇帝陛下は豪華な椅子に座って、それぞれの戦いを黙って見ていた。
試合が終われば、必ず拍手を送る。
その繰り返しである。
クリシュナも、皇帝陛下同様、騎士たちの戦いを見守っていた。
ただ、クリシュナは勿体無いと思いつつ見ていたのだ。
もし、彼らに魔力があれば、近衛師団に誘えるのだ。
近衛師団の入団条件として、基本的に、剣術だけではダメなのである。
魔力を持っていないと、入団資格がないのだ。
そのため、近衛師団の大半は、貴族の子女に偏る。
貴族の子女は、基本、魔力を持つ者しかいないのだ。
ベルガーのように、家を継がない者が、所属することが多い。
レヴィのように、一般人からの入隊者は少ないのだ。
ちなみに、レヴィは、貴族出身ではない。
別の騎士団に所属していたところを、クリシュナにスカウトされた経歴があるのだ。
レヴィのような魔力を持つ、一般人の優秀な騎士は、ごく稀であった。
ベルガーもまた、クリシュナと同じ思いであった。
これだけ優秀な騎士が多いと、近衛師団に欲しくもなるものだ。
だが、魔力が無いとダメなのだ。
だから、歯がゆい思いだった。
今、この場で戦っている騎士たちは、明らかに優秀な部類であった。
ただ、魔力が無いのだ。
こればかりは、どうしようもなかったのだ。
自分同様、魔力を扱える者がいないことに、ガッカリするのであった。
ルークは、そんな2人とは異なり、騎士たちの動きを「学習」していた。
いかに強くなったとはいえ、基本は無駄にしてはいけないのだ。
よって、騎士たちの動きはいい参考になるのだ。
特に一流と呼ばれる騎士たちだ。
その動きは洗練されていた。
ちなみに、常時“情報収集”は怠っていなかった。
騎士の動きの調査に、周辺情報の調査の2つを行っていたのだ。
やがて、“情報収集”に気になる動きが察知された。
1人の男が、訓練場が良く見える位置で止まったのだ。
具合でも悪くしたのだろうか?
そんなことを考えていた矢先だった。
皇帝陛下の身に起きる事件が発生するのだった。