14-5 闇を蠢く者。
一方、王都の住宅街。
近衛師団の訓練場により近い住宅にて、5人の人間が集まっていた。
住宅の周りには誰もいない。
閑静な住宅街なのだ。
そこの一軒家を借り受け、5人は目立たぬように生活していたのだ。
その彼らが、今動き出す。
1人の男が、話し始める。
「いよいよ、この時が来た。
準備をする前に、最終確認だ。」
4人は、うなずく。
男は、言葉を続ける。
「よいか、おまえたち2人のどちらかが、椅子に座った皇帝陛下を刺殺する。
そしてすぐさま、その場を逃げるのだ。
その間、おまえたち2人が、上空より上級魔法を地上に向けて放つのだ。
さすれば、皇帝はおろか、皇太子と近衛騎士を葬ることができる。
うまくいけば、国家の中枢を大きく揺るがすことができるのだ。
この任務の失敗は許されぬ。
失敗すれば、我々の命はないと心掛けよ。
私は、作戦の成功可否を外に伝えねばならぬ役目がある。
おまえたちに全て託す。
頼むぞ。」
男の言葉に、他の4人はうなずく。
「では、早速着替えてくれ。
着替え終わったら、開始位置に移動するのだ。
よいな。」
4人がうなずくと、それぞれ部屋へと移動する。
部屋に入ると、服を脱ぎ、戦闘用の服に着替える。
それは、暗殺者によくある、黒い服だ。
それに、マントを羽織る。
普通のマントではない。
防御結界が張られた魔法のマントだ。
ブーツも黒で統一していた。
最後に、剣やナイフを装備する。
鎧は身軽な動きを制限するため、不要であった。
4人は着替え終わると、再度集合した。
すると、男は4人の姿をしっかり確認した後、言葉をかける。
「それでは、出発するぞ。
身隠しの魔法を解放しろ。」
4人は、同時に魔法を唱える。
瞬間、4人の姿が消えたのだ。
その魔法は、“隠蔽”だ。
自分の姿を隠す魔法である。
ただし、足音や気配は消せない。
だが、男たちはプロだ。
足音も気配も断つことが可能なのだ。
指示役の男は、普段着の格好で、家のドアを開く。
ドアを開いた瞬間に、4人は外へと出て行くのだ。
指示役の男は、4人が出て行ったことを確認すると、外に出てドアを閉める。
そして、近衛師団の訓練場に向かうのだ。
いよいよ始まるのだ。
そう、皇帝陛下暗殺計画が実行に移されるのだった。