12-11 合格発表。
合格発表まで一週間かかる。
その間、ルークは、土系統の上級魔術書を読み終えていた。
本来なら試すつもりだったのだが、ミシェリから依頼があったのだ。
“瞬間移動”を使えるようになりたいと。
そんなわけで、再び修行の日々に戻った。
魔法の勉強と実践で2日かかったが、ミシェリは“瞬間移動”を使いこなせるようになっていた。
そこで、更にリクエストがあったのだ。
「ルーク様の家に行ってみたいです。」
「狭いし、汚いとこだけど・・・
それでもよければ?」
「はい、行ってみたいです。」
ということで、ミシェリの“瞬間移動”で来ることになった。
以前、ルークの家の前まで来たことはあるが、入ったことはないのだ。
ルークは家の中を案内する。
しばらく帰っていなかったためか、埃が少し溜まっていた。
急いで、掃除することになる。
掃除後、ミシェリを中に案内する。
「思ったより広いですね。
誰かと暮らしているんですか?」
「ううん、一人暮らしだよ。」
「ご両親は?」
「うーんと、僕はね、親に捨てられたんだよ、4歳の時にね。」
「えっ!?」
ミシェルは固まった。
聞いてはいけないことを聞いたかもしれない。
すぐに謝ることにした。
「ごめんなさい、聞いてはいけないことを。」
「いや、大丈夫だよ。」
ルークはあまり気にしていなかった。
「じゃ、それからずっと1人だったんですか?」
「いや、10歳の時まで、乳母と暮らしていたんだ。
だけど、乳母も病気で亡くなってね。
それ以降は、村のみんなに助けてもらいながら暮らしていたんだよ。」
ルーク自身は、天涯孤独になったつもりはなかった。
常に村のみんなが助けてくれたから、寂しくはなかった。
ただ、乳母を亡くした時は、ホントに寂しかったのだ。
その時、気が付いた。
ミシェリが泣いていることに。
「どうして、ミシェリ殿が泣くんだよ。」
そう言って、ルークはミシェリの頭を撫でてあげるのだった。
残り4日間は、ミシェリの依頼で、簡単な補助魔法を教えた。
ミシェリと“思念連結”できるようにもなったのだ。
ミシェリは嬉しそうだった。
そして、合格発表当日を迎える。
当日、朝。
2人は王都に来て、まっすぐ魔導士協会を目指す。
そして、受付を済ませた後、ミシェリは会議室へ案内されていく。
ルークはここで待つのもアレなので、魔導士協会の外で待つことにした。
待つことしばし。
魔導士協会から、ミシェリが出てきたのだ。
「ルーク様、合格しました。
ルーク様のおかげで合格できました。」
ミシェリはそう言って、証書をみせてくる。
ルークは証書を確認すると、ミシェルの頭を撫でてあげる。
「よくやったね、ミシェリ殿。
これで一人前の魔導士だ。」
途端、ミシェリは泣き出し、ルークにしがみついたのだ。
それは嬉し涙だったのだ。
ルークはされるがままに、ミシェリの頭を撫でてあげるのだった。