12-9 上級魔法を使いこなす。(三つ目)
翌日。
いよいよ難関といわれる三つ目の魔法だった。
そう、ルークが無詠唱で使った、“氷結晶冷破”である。
難関ではあるが、使い手は存在する。
だからこそ、できなくはないのだ。
ミシェリは覚悟を決めて、結界内に入る。
呪文を唱え、解放する!
「“氷結晶冷破”!!!」
だが、何も起きなかった。
かかしもどきも健在だ。
「・・・あれ?」
「ミシェリ殿、魔力が全く足りない。
もっと魔力を使って構わない。」
「はい!」
再度、ミシェリは魔法を唱える!
「“氷結晶冷破”!!!」
今度は、氷の結晶のようなものが、かかしもどきに付着したが、それだけだった。
「ミシェリ殿、魔力が全く足りない。
もっと魔力を使って構わない。」
「はい!」
ルークに同じ注意をされ、ミシェリは、くじけないように返事をするのだった。
その後、何度も続けたものの、氷の結晶が出せるようになるのがせいぜいであった。
ルークは、途中で中止し、魔法の概要を復習することにするのであった。
それから、5日経った。
ミシェリは、一向に使える気配がなかった。
発動はしている。
だが、魔力がうまく調整できないのだ。
そこで失敗していた。
へこたれそうになっていた心を無理やり、奮い立たせていた。
頑張り続けていたのだが、やはりできなかった。
魔法発動を数回続けた後、ミシェリはルークを見て、呟くのだ。
「・・・ルーク様、私は、やっぱり才能がないのでしょうか?」
「えっ?」
「だって、だって、全然、うまく、いかないんですよ・・・
これって、才能、ないんですよね?」
ミシェリはいつの間にか、ポロポロ涙をこぼしながら、語っていた。
ついに、心が折れてしまったのだ。
ここまで頑張っても、失敗ばかりだった。
もう、どうすることもできないのだ、そう思い込んでしまっていた。
その時、ルークが近づくと、ミシェリの頭を撫でたのだ。
「そんなことはないよ、ミシェリ殿。
君は、才能がないわけじゃないんだ。
君は今、挫折を味わっているかもしれない。
だけど、君はこれまで努力してきたじゃないか?
あと一歩踏み出すんだ、それだけだ。
それだけで、君はできる自分になるんだ。」
ルークはその後、ミシェリが泣き止むまで、やさしく頭を撫でるのだった。
その後、練習を中止し、ミシェリの心が落ち着くまで、頭を撫でつつ一緒にいてあげるのだった。
翌日、6日目。
ミシェリは気合が入っていた。
昨日、ルークの前でポロポロ涙をこぼしたが、ルークが励ましてくれたのだ。
泣き止むまで頭を撫でてくれた。
ルークの優しさが、ミシェリの原動力となっていた。
今日こそ成功させる勢いだった。
その結果、見事に成功させるのだ!
ミシェリは魔法を解放する!!
「“氷結晶冷破”!!!」
瞬間、結界内のかかしもどきが全て凍てつくと、砕けたのだ!
「や、や、やったー!!」
ミシェリは大声で喜んだ。
ルークも笑顔になっていた。
ミシェリは、ルークを見ると、声をかけるのだ。
「次、やります。
忘れないうちに。
お願いします!」
その後、ミシェリはことごとく成功させてみせたのだ。
こうして、三つ目の魔法も完成に至るのだった。