12-4 家庭教師をすることになりました。
その日の夕方、都市グルードに到着した。
そのまま城に向かい、城内に入ることになった。
夕食を済ませた後、応接室にて、侯爵、ミシェリ、ルークの3人が集まっていた。
「この子が、娘のミシェリだ。」
「よろしくお願い致します。
ルーク様。」
ミシェリは、礼儀正しく挨拶をする。
「ルークです、よろしくお願い致します。」
ルークが挨拶すると、ミシェリは笑顔になった。
「では、ミシェリ、説明を頼むぞ。」
侯爵に促され、ミシェリは話し始める。
「はい、お父様。
実は、魔術学院で水系統の上級魔法を勉強していたのですが、
全然うまくいかないんです。
先生にも教えてもらっているんですが、全然ダメで。
私は才能がないのかもしれませんが、諦めきれなくて。
そこで、最強と噂されているルーク様に、
教えを請いたいとお父様にお願いしたのです。
難しいって言われたんですけど、まさか来て頂けるとは思っていませんでした。
ルーク様、よろしくお願い致します。」
ここでまた、ペコリと頭を下げる。
「あの、ちなみにミシェリ殿はお幾つなんでしょうか?」
「はい、14歳です。」
ミシェリが即答する。
ルークより一つ年下だったのだ。
ルークは考えてみた。
自分は15歳でできたが、平均は一体何歳でできるようになるものなんだろうと。
そう考えても、答えは出ない。
「とりあえず、了解しました。
一度確認したいので、中級魔法から見させてもらう形でいいでしょうか?」
「はい、お願い致します。」
ミシェリはまたも、ペコリと頭を下げる。
「ルークは、どのように考えているのだ?」
侯爵の質問に、ルークは考えている内容を話す。
「考えられるのは、魔術がまだ未熟の可能性があるということです。
中級魔法を使った時点で判断できます。
もし未熟であれば、すぐにわかりますから。
そうなると、基本を鍛え直す必要がありますね。」
侯爵はうなずきながら聞く。
「なるほどな。
確かに、魔術学院では、『魔法が使えれば良い』という考えが根強いからな。
では、魔術学院に手配・・・いや、不要か。
ルークは今や魔法騎士だ。
その制服を着て、魔術学院に伺えば、すんなり通されるでしょう。
明日にでも行ってみるといい。」
「では、そうしますが、朝から可能ですか?」
「あ、それなんですが・・・」
ミシェリが口を挟み、答える。
「午前中は用事があって無理なんです。
ですから、午後からお願いします。」
ルークはうなずき、返答する。
「わかりました。
では、明日午後、魔術学院に案内してください。
そこで、確認しましょう。」
「はい、ルーク様、お願いします!」
ミシェリは元気よく応じたのだった。
この日からルークは、侯爵の城に滞在することになったのだった。
翌日、朝。
ルークは頂いた魔法騎士の制服を着用する。
無論、バッジも忘れない。
外に出る際は、マントは不要だろう。
外も暖かくなってきている。
マントは朝と夜あれば十分になってきていた。
ルークは、早速、土系統の上級魔法の魔術書を読み始める。
午前中はミシェリが用事があるため、暇となるのだ。
というわけで、午前中は書籍を読み進めることにした。
覚えたら、外で呪文を試すつもりだ。
午後になった。
パタパタと走ってくるミシェリの姿が見えた。
ルークはミシェリの部屋に迎えに行こうとしたところ、ミシェリと鉢合わせしたのだ。
「では、ご案内しますね。」
そう言って、ルークの手をとる。
「引っ張らなくても大丈夫ですよ。」
ルークは、ミシェリにそう注意すると、一緒に歩き出す。
ミシェリは、魔術学院に到着するまでの間、ルークの手を離さなかった。
魔術学院に到着すると、ミシェリに連れられるがままに、歩く。
やがて、先生と思われる男性が、ミシェリに呼び出される。
先生は、ルークの制服を見た瞬間、敬礼をする。
このパターンに慣れないとな・・・
ルークはそう思うのだった。
「閣下、私にどのような用件でしょうか?」
先生は、かなり緊張しているようだ。
「実は、ミシェリ殿の中級魔法をチェックしたいのです。
そのため、こちらの環境をお借りしたいのですが、可能でしょうか?」
「はい、問題ありません。
他の生徒もいると思いますが、それでもよろしいでしょうか?」
「はい、それで構いません。
ミシェリ殿、案内してもらえますか?」
「はい、ルーク様。
こっちです。」
そう言って、また手を引っ張り始める。
ルークはいそいそとついていくのだった。
先生も、後ろからついてくるのだった。
ルークは、屋内の練習場らしい場所に案内された。
かなり広い。
複数の生徒たちが、結界の中に入り、魔法の練習を行っている。
ルークより若い子供から年寄りまで様々だ。
「先生、ここを使っても問題ないでしょうか?」
ルークの問いに、先生はこくこくとうなずく。
「はい、問題ありません。
お好きなだけお使いください。」
まだ、緊張しているようだ。
ルークはミシェリに向き直ると、指示を出す。
「ミシェリ殿、水系統の中級魔法を一つ唱えてください。
何でも構いません。」
ルークは、それと同時に、“情報収集”を発動させる。
情報収集対象は、ミシェリとその呪文である。
ミシェリは結界内に入ると、呪文を唱える。
そして、解放する!
「“水流切断波”!!!」
水の刃が出現し、空間を斬り裂く!
斬り裂く対象はないため、結界にぶつかると消滅した。
ルークは情報収集した内容を分析する。
どうも、魔法力が弱いと判断された。
一つの魔法に使う魔力が、不足しているのだ。
それ以外は問題ないと判断した。
これは、基本を鍛える必要がありそうだ。
「いかがだったでしょうか?」
ミシェリが結界から出てきて、ルークに問う。
「ミシェリ殿、魔法力が弱いと判断しました。
これから、2~3日は、そこを徹底的に鍛えましょう。
いいでしょうか?」
「はい、わかりました!」
ミシェリは元気よく答えた。
こうして、ミシェリの弱点克服のため、ルークは動くのだった。