12-1 風系統の魔導士試験を受けよう。②
筆記試験が終わり、次は実地試験となる。
広い庭のような場所に来ると、マントを脱いで待つ。
すると、審査官5名と、ユーディス、そしてなぜかルードベルゼンがやってきた。
審査官の1人が、ルークの元へ来ると、挨拶を交わす。
「閣下、お初にお目にかかります。
私の名は、ガイウスと申します。
今回、審査官代表を務めますので、よろしくお願い致します。」
「はい、こちらこそよろしくお願い致します。」
ちなみに、今回の審査官は全員風系統の魔導士である。
つまり、火と水系統の魔導士である、ルードベルゼンは審査官ではない。
では、なぜ、この場にいるのか。
それは、ルークが四系統をマスターするのを、見届けるためだった。
ルークはそのことを知らないのであった。
ルークは、結界内に入ると準備を行う。
まずは、かかしもどきを出現させる。
「閣下は、結界術式に干渉する力をお持ちなのか!?」
ガイウスは驚いていた。
ルードベルゼンは、このことを初回から知っていた。
だが、誰にも言っていなかったのだ。
「では、一つ目の魔法をお願いします。」
ガイウスの言葉に、ルークが反応する。
魔法を唱え、解放する!
「“極大風凝縮爆発波”!!!」
大気中の空気が高圧縮され、かかしもどきが大爆発を巻き起こす!
埃が舞い散る中、かかしもどきは粉々に砕けた。
「うむ、問題ない。」
ガイウスがうなずくと、結界内の埃は一斉に消える。
「では、二つ目の魔法をお願いします。」
ルークは、かかしもどきを複数出現させると、呪文を唱える。
そして、解放する!
「“極大風衝撃破”!!!」
大気中の空気を凝縮し、全方向に極大の衝撃波がまき散らされる!
かかしもどきたちは、衝撃波を喰らった瞬間、バラバラに斬り裂かれていく!
「うむ、問題ない。」
ガイウスがうなずくと、結界内を荒狂っていた衝撃波が消える。
「では、三つ目の魔法をお願いします。」
ルークは再び、複数のかかしもどきを出現させる。
そして、呪文を唱え、解放する!
「“極大雷衝撃波”!!!」
結界内を極大の雷が荒狂う!
かかしもどきに当たった瞬間、焼失したのだ!
「うむ、問題ない。
いよいよ、未知の領域ですぞ、ユーディス殿。」
ガイウスの言葉に、ユーディスはうなずくのだった。
結界内の雷が消えると、ガイウスは静かに深呼吸する。
ガイウスもユーディス同様、四つ目と五つ目の魔法を見たことが無いのだ。
だから、2人にとって、未知と遭遇する前の状態であったのだ。
「では、四つ目の魔法をお願いします。」
ルークは、まず、結界術の強化を行った。
すると、結界が強化されるのだ!
「結界が強化された!?
それほど威力が大きいのか?」
ユーディスは思わずつぶやいていた。
ルークはかかしもどきを一つ用意すると、呪文を唱える。
そして、解き放つ!
「“轟雷”!!!」
瞬間、大気の空気を真空化し、かかしもどきに極大な雷を叩き落されたのだ!!
「ズドォォーン!!」と凄まじい音と、とてつもない威力を誇る雷が鳴り響いたのだ!
あまりの凄さゆえ、皆が驚き固まった。
ユーディスは目を見開いていた。
これほどの威力を誇る魔法だったとは思わなかったからだ。
やはり理解が足りていなかったのだ。
安易に唱えられるレベルの魔法でないことに、気が付いたのだ。
「素晴らしい。
そして、凄まじい!」
ユーディスの感想に、ガイウスはうなずくのみである。
ちなみに、ルードベルゼンは固まっていた。
「いよいよ、五つ目の魔法ですぞ、ユーディス殿。」
「うむ、我々にも理解できなかった魔法か。」
ユーディスとガイウスは唾を飲みこむ。
「では、五つ目の魔法をお願いします。」
ルークは、結界内に複数のかかしもどきを用意する。
次の魔法は全方位攻撃型の魔法だったのだ。
呪文を唱え、解放する!
「“極大風雷破壊滅”!!!」
瞬間、風と雷が荒狂う空間を作り出し、全てを破壊しつくす!
かかしもどきは、一瞬にして破壊し尽くされていった。
これには、皆、口を開けたまま、固まるより他なかった。
結界内は、風と雷が荒狂っている。
結界の外にまで影響を与えそうな勢いである。
だが、ルークが結界を強化したため、その影響はなかった。
ユーディスとガイウスは、ただひたすら見ていた。
これが究極の魔法なのか、と。
「素晴らしいかな、そして、凄まじいものだ。
我々が追い求めていた魔法がこれほどのものとは。
・・・はぁ、まさかこの目で見ることができるとは。
長生きしてみるものだ。」
ユーディスはルークに感謝していた。
生きているうちに究極の魔法を目にすることができたのだ。
これほど素晴らしいことはない。
ガイウスもまた、同じ気持ちだった。
結界内が静かになった時点で、ルークは結界の外に出た。
そして気が付いた。
全員、感動に浸っていることに。
これはしばらく声をかけても無駄かなと思うのだった。