12-1 風系統の魔導士試験を受けよう。①
翌日。
ルークは、魔導士協会に向かうため、準備をしていた。
目的は、風系統の魔導士試験を受けるためだ。
いつも通り、近衛師団の制服に身を包む。
魔導衣を着るべきかと迷ったが、公の場では制服を着るのが規則だった。
よって、魔導衣は諦め、制服にしたのだ。
バッジも忘れずにつけて、魔法騎士のマントも羽織る。
剣を佩くのも忘れない。
お金の準備もOKだ。
大きめの袋に、いつも通りパンと水袋も詰め込んでおく。
「よし、行こう!」
ルークはドアを開け、村長宅にて一言告げた後、“瞬間移動”で王都に飛ぶのだった。
王都到着後、巨大な門をくぐり、まずは本屋に向かう。
本屋は朝早いのに、開いていた。
ドアを開けると、ユーディスがやってきた。
「おぉ、ルークか。
おや、その格好は・・・」
そういえば、ユーディスには説明していない。
ルークは慌てて説明するのだ。
「あ、その、実は、皇帝陛下直属の騎士になったんですよ。
それで、こんな格好しています。」
ユーディスはそれを聞いて驚く。
「ほう、ということは出世したのかね、おめでとう。
近衛師団に入ったのかね?」
「いえ、“魔法騎士”になりました。」
「なんと・・・!?」
いつも落ち着いているユーディスは、驚きの声を上げた。
「そうか、“魔法騎士”か。
となると、君は、魔剣を極めたのだね?」
「はい。
これがその証拠です。」
ルークは、ユーディスがよく見える位置で、剣を引き抜いて見せる。
赤く煌めく剣を見て、ユーディスは感動する。
「これが、魔剣!?
しかも、強大な魔力を湛えているとは!?」
ルークが剣をしまうと、ユーディスが言葉を続ける。
「君は真の“魔法騎士”となったのだな。
おめでとう。
君は誇るべき存在となったわけだ。」
これには、ルークは困り顔だ。
「ありがとうございます。
そんな、大したことをしたつもりはないんですが。」
だが、ユーディスは首を横に振るのだ。
「いや、そんなことはない。
君はこの国にとって、唯一無二の存在だ。
皇帝陛下も、さぞお喜びだろう。
私は君と知り合えて感謝しておるよ。」
ユーディスは嘘偽りなく、語る。
「ありがとうございます。
その、話を本題に戻してもいいでしょうか?」
「あぁ、失礼した。
今日は何の用事かね?」
ルークはようやく本題に入る。
「今日、風系統の魔導士試験を受けるために来ました。
ユーディスさんとの約束を果たしに参りました。
四つ目と五つ目の魔法を見せるために。」
その言葉に、ユーディスは驚きの表情を浮かべる。
「おぉ、つまり、君は究極にたどり着いたというのか!?」
「はい、扱えるようになりました。
ですから、今から一緒に来てください。」
「あぁ、そうしよう。
では、一旦店を閉じることにしよう。
外で待っていてくれないか?」
「はい、お待ちしております。」
ユーディスは急いで店を閉めると、外で待つルークと合流する。
そして、2人は魔導士協会へと向かうのだった。
魔導士協会に到着すると、受付に向かう。
すると、いつもと様子が違った。
受付の女性がルークを見た瞬間に、敬礼をしてきたのだ。
「そ、その、閣下、どのような用件で、こちらにいらっしゃったのでしょうか?」
かなり緊張している。
ユーディスは少し笑っていた。
ルークはいつもと格好が違うだけで、こんなにも扱いが違うのかと、またもや思い知らされた。
騎士団の時もそうだったけど、一向に慣れない。
「はい、風系統の魔導士試験を受けに参りました。
担当の方をお呼び頂いてもよろしいでしょうか?」
ルークはいつもの口調で、丁寧にお願いする。
「はい、承知しました。
少々、お待ちください。」
ルークの態度に安心したのか、受付の女性は、急いで担当者を呼びに行く。
すると、担当者が飛んでやってきたのだ。
前回と同じ魔導士の方だった。
「ルーク殿・・・いや、ルーク様、失礼致しました。
では、会議室の方へご案内します。」
「あっ、その前に一つ、お願いしてもいいですか?
ユーディスさんを、実地試験の際、同席させてもらうことは可能でしょうか?」
担当の魔導士は、ユーディスの存在に気がつく。
「ユーディスさん!?
お、お久しぶりです、ユーディス導師。
構いませんよ、同席は可能ですよ。」
「あぁ、ありがとう。
じゃ、私は審査官と一緒に待つとしよう。」
ユーディスはそう言うと、奥の方へと姿を消す。
どうやら、色々知っているようだ。
ルークは、ユーディスはお任せにしておいて、魔導士に従い、会議室へと移動するのだった。