11-10 誘拐事件!
ルークたち騎士団一行は、クーラク騎士団の隊舎に移動していた。
皆、到着してほっとしていたのだが、隊舎内から出迎えが無い。
いや、人の気配がほとんどしないのだ。
ここには訓練生が残っていたはずだ。
何かおかしい。
ルークはそう感じ取り、1人、隊舎に急ぎ入るのだった。
隊舎内の団長の執務室を訪れると、ミーシャがいた。
「おぉ、ルークか。
今帰ったのか?」
「はい。
そういえば、隊舎内が静かですが、何かあったのですか?」
それを聞いて、ミーシャは驚く。
「あぁ、よく気が付いたな。
事件が起きたのでな、訓練生に出張ってもらっている。
そろそろ全員戻る頃だろう。
夜になっちまうからな。」
「事件?」
「あぁ、教会から子供が誘拐されたんだ。
1人、誘拐されたそうだ。
犯人は山賊の生き残りの可能性が高い。
そのため、訓練生を三人一組で、捜索させているといったところだ。
今のところ、発見に至っていない。」
ルークは事情を理解した。
その上で、自らも動くことを決めた。
「事態は理解しました。
僕も魔法を使って調査します。
ですので、騎士たちにも指示をお願いします、団長。」
「いや、しかし。
もう夜になる。
夜になれば、捜索は難しくなる。
明日、朝にでも騎士たちを動かすつもりなんだぞ?」
だが、ルークは考えを変えないのだ。
「人命優先です。
発見次第、僕は動きます。
よろしいですね?」
その言葉に、ミーシャはうなずく。
「あぁ、任せる。
騎士たちには、街の守護と警戒を行ってもらう。
訓練生じゃ、物足りないからな。
頼むぞ、ルーク。」
ルークはうなずくと、隊舎を後にした。
ルークは隊舎を出ると、“情報収集”を開始する。
訓練生たちが、山の中を捜索しているようだ。
以前あった山賊のアジト付近も探しているようだ。
ルークは、“情報収集”の範囲を拡大しつつ、怪しい動きをする人物を探し出す。
そして、見つけたのだ!
ルークは、すぐさま行動に移す!
「“飛翔”!!!」
ルークは高く飛翔すると、もの凄いスピードで、飛んでいくのであった。
森の中を進む一団がいた。
1人は子供を1人抱えて歩いている。
他5人は、武器を手にした状態で、周辺を警戒しながら歩いていた。
彼らは、クーラクの街から大きく離れようとしているようだった。
格好からして山賊に相違ない。
ただ、この辺の山賊は一度壊滅している。
彼らの正体は、ルーク達に壊滅された山賊の生き残りだったのだ。
彼らの目的は、この捕らえた子供を使って、一稼ぎするつもりだったのだ。
だが、それを許すルークではなかった。
ルークは飛翔スピードを速め、彼らの上空に現れていたのだ。
そして、思いっきり急降下し、森に突っ込む!
森が、がさがさと大きな音を立て始めた途端、山賊たちは慌て始める。
「な、なんだ?
何が起きている?」
1人が声を出した瞬間、それは現れた!
突如、1人が斬られたのだ!
斬ったのはルークだった!
「て、敵!?」
ルークが現れた刹那、1人が叫ぶが遅い!
ルークは次々となで斬りしてみせたのだ!
加減は一切ない。
山賊は全員、斬り殺されたのだった。
ルークは、子供を拾い上げ、抱えるのだ。
子供が生きており、且つ気絶していることを確認すると、“瞬間移動”にて、クーラクの騎士団隊舎へと飛ぶのだった。
夜。
ルークが隊舎に戻った時は、ほとんどの訓練生は戻っていた。
その訓練生を指揮していたのは、ダーナスだった。
ダーナスはルークに気がつくと、声をかける。
「閣下、どちらへ?
その子供は?」
ダーナスは、ルークの両腕に、子供が抱えられていることに気が付いた。
「誘拐された子供を取り戻してきました。
まだ気絶していますから、アリアさんを呼んでもらえますか?」
「へっ?
まさか、もう見つかったのか!?」
その声に、休んでいた訓練生たちが驚く。
ルークは抱えていた子供をゆっくり降ろし、横たえる。
よく眠っているようだ、起きることはなかった。
ルークはほっとするのだった。
アリアはすぐに飛んでやって来た。
アリアは子供が無事であることを確認すると、ルークに頭を下げた。
「ルーク様、本当にありがとうございます。」
「いえ、見つかってよかったです。
その、質問なんですが、この子、貴族の子ですよね?」
「えっ?
どうしてわかったんですか?」
アリアは不思議そうに、ルークを見る。
「実はちょっと魔法を使って、山賊たちの頭の中を覗いたんです。
そうしたら、その子が貴族の捨て子で、
この子を使って身代金をせしめようとしていたんです。
肝心の貴族がお金を払うかどうかは疑問ですが、
この子は以前から狙われていた可能性があります。
もう大丈夫だとは思いますが、今後も念のため気をつけてください。」
「はい、気をつけます。
ルーク様、ありがとうございます。」
この子は、ルークと同じだった。
この子からは、魔力を全く感じなかったのだ。
つまり、ルーク同様、貴族に捨てられたのである。
助けたいと思うものの、ルークにはこれ以上、何もできなかった。
この子は、今後も狙われ続ける可能性があった。
だが、いずれはその呪縛からも逃れることができるだろう。
それまで無事に育つことを願わずにはいられなかった。
ルークは、事件解決をミーシャに伝えた。
ミーシャはそれを聞き、安堵したのだった。
その後、ルークは隊舎にて一泊するのだった。