11-9 クーラクの街へ帰還。
翌日。
クーラク騎士団は、街へと帰還する準備を進める。
テントも崩して荷馬車に積み込むと、出発準備が完了した。
ルークはラウル団長らに別れの言葉を告げると、都市ラークネスを離れることになった。
フェイドは、とうとう最後まで姿を見せることはなかった。
彼も彼なりに頑張っているのだろう。
次に会った時、成長していることを期待しよう。
3日の旅程であったが、行きと同様、ルークは上官扱いだった。
これに関しては、変化はないのだ。
初日の夕食時。
ルークがテーブルの上で食事をしていると、カシスが現れたのだ。
「少し伺ってもいいですか、閣下?」
カシスも食事を手にしていた。
椅子に座ると、テーブルにトレイを置いて、一緒に食事を摂るようだ。
「はい、なんでしょう?」
「あの動き、明らかに人を超えた動きでした。
一体どうなっているんです?」
「あ、あれですか。
僕の全身に今魔力が流れている状態なんですよ。
その結果、人知を超えた動きが可能となっているわけなんです。」
それを聞いて、カシスが固まる。
それもそのはずだ。
人ではないモノと戦っていたことに等しいのだから。
「では、あれも魔法騎士の力なのですか?」
「はい、その通りです。
これも魔法騎士の力だったりします。
だから、誰にも真似できないんですよ。」
カシスは大きくため息をつく。
「そりゃ勝てないですよ。
それが最強騎士所以の実力なんですね。」
「そうかもしれませんね。
ちなみに、これは試したんですが、
無詠唱で上級魔法を解放できるようになったんです。
かなり反則だと、自分でも思ってます。」
「はいっ!?」
実は、風系統の上級魔法を確認していた際に、試してみたのだ。
そうしたら、無詠唱にも関わらず、魔法が解放されたのだ。
しかも、上級魔法である。
全身に魔力が流れていると、こんな裏ワザができるようになっていたのだ。
「それじゃ、俺たちが束になっても勝てないじゃないですか。
明らかに反則ですよ。」
「そうですよね。
僕もそう思ってます。
だけど、この力がないと勝てない人もいるんですよ。」
「・・・ちなみにお聞きしても?」
「近衛師団の団長、ベルガ―さんです。」
「近衛師団の団長!?
まさか、戦ったんですか?」
カシスはびっくりしていた。
「はい、戦いました。
結局、攻めきれず、ベルガ―さんが降伏しちゃったんですけどね。」
「はぁ、上には上がいるものだな。」
カシスはため息をつく。
そう、上には上がいる。
ルークもいつかは強敵に遭遇するかもしれない。
今はこの国最強でも、いつかは誰かに抜かされるかもしれないのだ。
それは構わないのだが、悪人でないといいなぁと思うのであった。
それから3日後、騎士団一行は、クーラクの街に無事到着するのであった。