11-8 演習最終日。
演習最終日。
ルークは馬車で隊舎に戻ると、すぐに訓練場へ出向く。
「昨日はいかがでしたか?」
ラウル団長に問われ、ルークは頭痛を思い出す。
「伯爵にはめられました。
流石、策士です。」
それを聞いて、ラウルは苦笑する。
「やはり伯爵様らしいですな。
ルーク様、あまりお気になさらないように。」
「えぇ、そうします。」
模擬戦は既に始まっていた。
ルークは審判を務めるべく、模擬戦場へと移動するのだった。
午後、カシスが無茶な提案をしてきた。
「ルーク様、是非とも、ルーク様の腕前を、皆に見せて頂けないでしょうか?」
予定にない行動であった。
これに、ダーナスも乗る。
「そうだな、皇国最強の騎士の腕前、是非とも拝見したいですな。」
ルークはため息を吐くと、しょうがないといった表情を浮かべる。
そして、ちょっと仕返しを考えた。
「わかりました。
では、ダーナス隊長、カシス副隊長にも参加して頂きますよ?
いいですね?」
「えっ?」
これには、ダーナスが閉口する。
カシスもしまったといった表情を浮かべる。
こうして、予定外の演習が行われることになった。
演習内容は簡単である。
10人の騎士がルークと戦闘を行う。
皆、木刀装備である。
ルークは鎧を持っていないので、急遽鎧を借りる。
これで同じ条件である。
そして参加者は、ダーナス、カシス、ファンブル、レオンである。
一流と呼ばれる腕前の騎士を揃えたのだ。
残り6人も一流とは言えないが、ダーナスたちが認めた腕前のある騎士だ。
他の騎士達は、全員見学である。
ルークは木刀の状態を確認する。
無論、魔法は使わない。
木刀のみで全員を倒すのである。
審判役の騎士が旗を振り上げる。
振り下ろされた時点で、勝負開始である。
そして、旗が振り下ろされる!
瞬間、ルークは動いていた!
1人の騎士を横薙ぎで倒すや、次にカシスに向かって駆ける!
「早い!!」
カシスは剣を構えるも、遅かった!
あっさりと木刀を弾かれるや、頭を軽く叩かれたのだ!
その勢いを落とすことなく、今度はダーナスに向かう。
いや、そのダーナスの前に騎士が邪魔に入るが、あっさりと下からの切り上げにより倒される!
そして、そのまま騎士の体が、ダーナスに向かって吹き飛ぶ!
「おいおい!?」
ダーナスが回避した瞬間、ルークの横薙ぎを喰らい、倒れる!
ルークは勢いを落とすことなく、次の標的である騎士を狙う。
横薙ぎで一閃して倒すと、次にファンブルを狙う。
ファンブルはあまりの速さに驚愕していた。
しかし、木刀はしっかり構えていたのだ。
そして、ルークの木刀を受け止めた瞬間、軽く吹き飛ばされたのだ!
「なっ!?」
そして、頭頂部に軽く一撃を喰らって倒れる!
残り4名の騎士も次々倒され、レオンのみとなってしまった。
ルークはレオンの前で立ち止まり、正眼に構える。
レオンは、これまでのルークの動きに、ついていけなかった。
あまりの速さに、目で追うのがせいぜいだった。
明らかに前回とは別人の動きだった。
これが、魔法騎士の実力なのかと、レオンは戦慄した。
途端、ルークの姿が消える!
いや、駆けたのだ。
あまりの速さに、レオンは守りに徹しようとした瞬間、横薙ぎを喰らい、倒される。
これで決着がついたのだった。
あまりの速さ故に、皆、口をあんぐりと開けたまま、固まっていた。
ルークは息切れしていなかった。
全身に魔力を流した結果、人間を超越した動きが可能となったのだ。
結果、一切一撃をもらうことなく、圧倒的な勝利を納めることになるのだった。
「これでよかったですか?
ダーナス隊長、カシス副隊長?」
「参りました。」
カシスは素直に謝る。
「いや、参った。
こんなに差があるなんて、とんでもないぜ。」
ダーナスは潔く負けを認めた。
「強すぎだろ、おい。
これじゃ、一生勝てる気がしないぜ。」
ファンブルの言葉に、レオンはうなずく。
「あまりの速さに見るのがやっとだった。
これでは、勝てぬよ、私でも。」
レオンは、あっさりと敗北を認めていた。
一流と呼ばれる剣士たちをもってしても、ルークの前では赤子同然だった。
そう考えると、ベルガ―は良く耐えていたということだ。
「ちなみに、これが本気ではないんですよね?」
レオンの質問に、ルークはうなずく。
それを知って、全員唖然とするのみであった。
その後、模擬戦、合同模擬戦は続けられた。
夕方になる頃には終了となった。
これで、演習は終了となるのだった。