11-7 ウォーザード伯爵との会談。①
翌日。
演習6日目である。
模擬戦訓練中に、ルークはラウルに呼び出された。
審判を変わってもらい、ルークはラウル団長の元に向かった。
「どうしましたか、ラウル団長?」
「はっ、伯爵様が今晩、ルーク様と会談したいと申しておりますが、
いかがでしょうか。」
会談?
挨拶ではないのだろうか?
何か重要な案件でもあったのだろうか?
「会談ですか?
何か重要なことでしょうか?」
これにはラウルも首を横に振る。
「残念ながら、私にも会談の内容はわかりません。
ただ、伯爵様からの申し出なので、ご返答頂ければ。」
ルークは考えてみたものの、思い当たるのは、フェイドの事ぐらいだった。
とりあえず、会って聞いてみるべきか。
「わかりました、今夜の会談に参加します。
城へ向かえばよろしいのでしょうか?」
「ありがとうございます。
何でも迎えを寄越すとおっしゃっておりますので、お待ち頂ければよいかと。
また、夕食も共にしたいとのことでした。」
「そうですか。
ありがとうございます。
では、模擬戦が終わったら、隊舎で待ちましょう。」
「はっ、ではそのように。」
そう言うと、ラウルは隊舎へと移動していく。
ルークは審判に戻るべく、訓練場へと向かうのだった。
夕方。
模擬戦は終了し、皆、夕食の準備に取り掛かっている。
ルークは隊舎へ向かうと、執事らしき男性が待ち構えていた。
「ルーク様でしょうか?」
「はい、自分がルークですが。」
「伯爵様のご命令に従い、お迎えに上がりました。
馬車を用意しておりますので、どうぞこちらへ。」
ルークは執事に従い、訓練場の外に出る。
そこに馬車があり、乗せてもらうことになった。
馬車はまっすぐに、城を目指す。
その間、ルークは執事に質問してみることにした。
「伯爵はどういった用件で、僕を呼んだのでしょうか?」
「申し訳ありませんが、私も存じておりません。」
思いっきり謝らせてしまった。
「あぁ、そうですか、すみません、変な質問をしてしまって。」
「いえ、お気になさらず。
執事たるもの、主の考えがわからない時もあるのです。
誠に申し訳ない事ですが。」
何でもかんでも理解している執事がいたら、それはそれで怖い。
ルークは、質問するのをやめるのだった。
やがて、馬車は城に到着し、ルークは城内へと入るのだった。
最初に通されたのは食堂だった。
会談の前に、伯爵と一緒に食事をすることになったのだ。
伯爵はまだ来ていないようだ。
伯爵が座るであろう席の対面に座らされる。
そして、待つことしばし。
ウォーザード伯爵が姿を現し、ルークに深く頭を下げたのだ。
「お待たせして申し訳ありません、ルーク閣下。」
ルークは立ち上がると、挨拶を交わす。
「お久しぶりです、ウォーザード伯爵。
お元気そうでなによりです。」
その言葉に、伯爵は笑みを浮かべる。
伯爵はそのまま自分の席に座ると、ルークも座る。
「お久しぶりにお会いするのです。
ゆっくり語らうとしましょう。」
伯爵はそう言って、夕食の準備を指示するのだった。
夕食を頂いている間、会談内容でも話すのかと思ったが、たわいない世間話ばかりだった。
また、ルークの近況についても聞かれた。
クリシュナ皇太子に会ったことや、近衛師団団長ベルガ―と決闘したこと。
また、皇帝陛下に出会い、魔法騎士の称号を頂いたこと。
そして、正式に叙勲されたことを報告した。
それを聞いていた伯爵は、最初は驚いていたものの、やがて笑みを浮かべ笑っていた。
「なるほどな。
ルーク様も、皇帝陛下に認められたということですな。」
その言葉に、ルークはちょっと困る。
「そうなんでしょうか?
急に陛下が現れて、僕に魔法騎士を任命して去ってしまわれたので。
唐突すぎて、びっくりするほかなかったですよ。」
それを聞いて、伯爵は笑い出す。
「はっはっは。
陛下も人が悪い。
ルーク様を驚かせるために、一芝居打ったのかもしれませんな。」
「そうだとしたら、陛下は流石ですよ。」
伯爵につられ、ルークも笑い出す。
こうして、夕食会は和やかに進むのであった。