11-5 都市ラークネスへ移動。
翌々日。
クーラク騎士団50名は、クーラクの街を出発した。
騎士団のほか、回復術士数名と鍛冶師、テント等の荷物を運ぶ荷馬車が数台同行する。
ちなみに、アリアはいなかった。
何でも、神父様が王都に出かけており、教会の留守を任されたらしい。
なので、騎士団以外には知り合いはいなかった。
この団体で、約3日かけ都市ラークネスを目指す。
ルークは先頭のほうを歩いていた。
無論、事態に備えて“情報収集”は欠かさない。
今のところ、野盗や野獣といった気配はなかった。
山に入る頃、まだ雪が残っていた。
前回、都市ラークネスを訪れた際は、膝まであった雪だが、今はほんの少し積もった状態だ。
非常に歩きやすい状態ではあったが、山の気候のせいか、冷たい風が吹き付けていた。
そんな中を移動し、山を抜け、平地にたどり着いた頃に夕方となり、テントを張ることになった。
テントを張るのは騎士の仕事である。
ルークも手伝おうとしたが、丁重に断られてしまった。
一応、上官に当たるのだ。
下士官である騎士の仕事を、上官が手伝うのはおかしいのだ。
そんなわけで、ルークは手持ち無沙汰になってしまった。
とりあえず、皆が怪我しないように見守るのみだった。
やがてテントが出来上がり、皆が夕食の準備にとりかかる。
「ルーク様、こちらをお召し上がりください。」
ルークは用意されたテーブル前の椅子に座って待っていると、食事を持ってきた騎士に声をかけられた。
「ありがとうございます。」
ルークは丁寧に挨拶すると、騎士はびっくりしていた。
ルークは、どうにも上官らしい態度ができなかった。
それもそうだろう。
突然上官になったのだ。
慣れるのに、時間がかかるのだ。
用意された夕食は、固いパンに肉付き野菜スープだ。
いつもと同じ食事に、ルークは安心する。
「お邪魔しますよ、閣下。」
ルークのテーブルに、ダーナスがやってきた。
「あ、ダーナスさん、どうぞ。」
その言葉に、ダーナスは苦笑する。
「俺のことは呼び捨てでいいんだぜ?」
「いや、そのなんというか、慣れなくて。
さん付けならいいかなぁって。」
ルークは困った表情で答える。
その表情を見て、ダーナスは小さく笑う。
本来大笑いしたいところだが、ルークの前でそうもいくまい。
「そうか、閣下がいいんなら、それでいいと思うぜ。
それよりも、冷めないうちに食べてしまおう。」
「そうですね。」
ルークもダーナスも食事に集中することにしたのだった。
夜。
ルークは自分のテントに戻ることにしたのだが、はてどこだろうと騎士に問う。
そして、案内されたのが、そこそこ大きいテントだった。
しかも、テント前に護衛がついている。
「閣下のテントはこちらです。
今夜はお疲れでしょう。
ゆっくりお休みください。」
「ありがとうございます。
じゃ、お休みなさい。」
ルークは騎士に感謝すると、テントの中に入る。
誰もいない。
どうやら、ルーク専用のテントのようだった。
「うぅ、これにも慣れないといけないのか・・・」
ルークは困るのだった。
一応、ルークは貴族と同じ扱いなのだ。
護衛がつくのも当然だし、専用のテントで休むのも当然なのだ。
それを思い知った1日だった。
2日後、ようやく都市ラークネスへと到着した。
その間、野盗や野獣に出くわすこともなく、平穏な旅であった。
都市内へ入ると、まっすぐラークネス騎士団の訓練場を目指す。
到着すると、ラークネス騎士団が出迎えてくれた。
ルークは何故か先頭を歩いて、ラークネス騎士団団長のラウルと挨拶することになる。
「ようこそいらっしゃいました、閣下。
都市ラークネスへようこそ。」
「ありがとうございます、ラウル団長。」
そう言って、ルークとラウルは握手を交わす。
そして、ラウルはダーナスとも何か語る。
何故、先頭を歩かされたのか、それは一番偉いからだ。
だから騎士団に所属していなくても、最初に挨拶する必要があるのだ。
「閣下、お久しぶりです。
まさか、このような形でお会いするとは思いませんでしたよ。」
声をかけてきたのは、レオンだった。
「そうだな。
まさかこんなに出世されるとは、ちょっとズルくないですか?」
ファンブルは抗議する。
「レオンさん、ファンブルさん、お久しぶりです。
元気そうで何よりです。」
そのルークの言葉に、2人は苦笑する。
「閣下、我らのことは呼び捨てで構いませんよ。」
「そうだぜ。
俺たちは閣下の配下になるんだ。
さん付けは不要ですよ。」
2人にダーナスと同じことを注意され、ルークは苦笑するしかなかった。
こうして2つの騎士団が揃うのだった、
いよいよ明日から演習開始である。