11-3 通達。①
さて、ルークがレヴィを迎え入れていた頃、全貴族及び全騎士団に一つの通達がなされた。
それは、ルークが魔法騎士になったことを告げるものであった。
しかも、皇帝陛下直属の騎士である。
これは、異例の通達であった。
クーラク騎士団、団長の執務室にて、ミーシャは頭をかいていた。
通達の内容を確認し、びっくりしたのもあるが、まさかこの騎士団にゆかりのある少年が、皇帝陛下直属の騎士になるとは思わなかったのだ。
ミーシャは、次第に面白くなったのか、笑い出していた。
そして、笑い収めると、ニヤリと笑みを浮かべる。
「コイツは面白いことになったな。
あのルークが、まさか伝説の騎士になっちまうとはな。
これも、何かの縁なのかもな。」
ミーシャは楽しそうだった。
「さて、隊長たちにも教えるとするか。
あっ、そういえば、ルークを呼ぶとか言ってたな。
今頃、使者が向かっている頃か。
こいつを知ったら、みんなどうするんだろうな。」
そう言った後、また笑い出すミーシャ。
しばらくの間、こんな調子であった。
ウォーザード伯爵はこの一報を聞き、驚きと同時に、期待を強く持った。
自分の睨んだ通り、ルークが皇帝陛下直属の配下になったのだ。
これを喜ばずにいられようか!
伯爵はひとしきり笑うと、すぐさま、フェイドとリリアーナを呼び出すことにした。
「父上、なんだ?
急用なのか?
俺は修行の途中だったのだが?」
「お父様、ご用件とはなんでしょう?」
二人の質問に、伯爵は嬉しそうに答える。
「聞け!
あのルークが、皇帝陛下直属の騎士になりおったぞ!」
「はあっ!?
マジかよ??」
最初に反応したのはフェイドだ。
「ああ、大まじめだ。
先ほど陛下より通達が来てな、
ルークが魔法騎士として仕える事が決まったそうだ。
私の睨んだ通りだ。
リリアーナを早めに嫁に出さなくてはならなくなったわけだ。」
「いや、リリアーナはまだ14歳だぞ。
結婚できるのは、16歳だろ?
まだダメだろ、父上。」
この国では、結婚できる年齢がきちんと法律で決まっている。
男子は18歳、女子は16歳からと決まっている。
それまで、結婚できない決まりである。
「それにだ、ルークはまだ15歳だろ?
あと、3年あるんだぜ?」
フェイドの言葉は最もであったが、どうやら伯爵に考えがあるようだ。
「それくらいわかっている。
だからこそ、この伯爵家に来て頂くのだ。
魔法騎士とはいえ、自由騎士として扱いを受けることになっている。
つまりだ、ここに住んでいても問題ないわけだ。」
「なるほど、そこで、リリアーナと一緒に暮らして、そのままくっつけると。」
「その通りだ、フェイド。
そうすれば、他の貴族どもを出し抜けるというものよ!」
いわゆる囲い込み作戦だが、これにフェイドも納得していた。
その時、フェイドは、問題点を一つ述べるのだ。
「問題は、肝心のルークだ。
あいつは村から離れないと思うぜ。
あいつも頑固なところがあるからな。
どう説得するつもりだ、父上?」
「そこよな。
ふむ、そこはまだ考えておらなんだ。
だが、誘い込んでみせるさ。」
伯爵は悪知恵を働かせる。
「リリアーナよ、よいか、花嫁修業をせよ。
来たるべき日に、ルークの妻となるのだ。
よいか、この伯爵家のために、嫁になるのだぞ。」
伯爵の言葉に、リリアーナはコクリとうなずく。
「お父様のためになるのでしたら、私はルーク様のお嫁になります。
明日から、花嫁修業を開始しますね。」
リリアーナは素直な子だった。
家のためならば、身命を賭す覚悟であったのだ。
「後は、ルークを誘い出し、説得するのみだ。
ふっふふ、気合が入るわ!」
1人盛り上がる、伯爵であった。
ラークネス騎士団にて。
団長の執務室に、ラウル、ファンブル、レオンの3人が集まっていた。
今回の通達を聞き、3人は驚愕していた。
まさか、あの時の少年が、皇帝陛下直属の騎士になるとは。
以前会った際、ラウルが勘違いで近衛師団と話したものの、それよりも上位の魔法騎士を叙勲したのだ。
ただただ、びっくりするしかなかったのだ。
「いやはや、あの時の少年が、まさかな。
近衛師団かと思いきや、その上である魔法騎士だ。
しかも、この国にたった1人しかいない騎士だ。
これは、えらいことになったな。」
ラウルは驚きつつ、ルークが期待以上に出世したことに感心していた。
「いや、すげーな、あのルークが!
こりゃ、今度会った時、軽口叩けないな。
参ったな、口調直るかな・・・」
ファンブルは、言葉の心配をし始めていた。
「ルークが、魔法騎士に・・・
あの時、出会っておいて正解でした。
いや、まさか近衛師団を超える存在になるとは。」
レオンは感激しているようだ。
三者三様であったが、ルークに対する態度を改めなくては、と全員一致するのだった。