11-2 皇帝陛下の使者。①
翌日。
風系統の上級魔法も覚えたし、次に何をしようか考えていた時だった。
突然、ドアがドンドンと強くノックされたのだ。
急ぎドアを開くと、村長のルドマンがいたのだ。
非常に焦った表情で、ルークに話しかけてきたのだ。
「ルーク、大変だぞ!
皇帝陛下の使者が来たぞ!
おまえ、何をしたんだ?」
「あー、えっと、それは後で説明します。
僕宛に来たということですよね?」
「あぁ、ルーク宛だ。
早く来い!」
ルークはルドマンに引っ張られながら、村の中央広場に連れてこられた。
そこにいたのは、近衛騎士の制服を纏った、レヴィだった。
レヴィは、ルークが来ると、一礼したのだ。
「お久しぶりです、ルーク様。
本日は、皇帝陛下の使者として参りました。
よろしければ、ルーク様のご自宅へ参りたいのですが、よろしいでしょうか?」
「はい、狭いところでよければ、どうぞ。」
ということで、ルークはレヴィを伴って自宅へ案内することになった。
その間、集まった村人にじっと見られる羽目に合うのだった。
家に到着すると、レヴィに椅子を進める。
「狭いところですが、どうぞ。」
「ここが、ルーク様のご自宅なんですね。」
レヴィは家の中を観察しているようだ。
「えっと、汚いとこですみません。
元々は貧乏なので。」
「そうなのですか?
これを機会に、王都に引っ越されては?」
「いえ、それは遠慮しておきます。」
ルークは首をぷるぷる横に振るのだった。
そんなルークを見て、レヴィは思わず笑みを浮かべる。
「それでは、これをお渡しします。」
レヴィは、背中に背負っていた荷物を降ろして、何かを取り出す。
大きめの箱のようだ。
ルークは箱を受け取ると、中身を確認する。
中には、マントが入っていた。
「魔法騎士であることを示す、マントになります。
普通のマントとは異なり、魔力結界が仕込まれています。
使用者の魔力により結界の強さが変わりますが、装備していると発動します。
これも公の場で、お使い頂ければと思います。」
マントの長さは、ルークの背丈に合っていた。
次に、小さな箱を取り出し、ルークに渡す。
「次に、こちらは勲章になります。
皇帝陛下直属の騎士を示す勲章になります。
大事なものなので、保管しておいてください。」
ルークが普段使うことはない代物だろう。
大事に保管しておくとしよう。
そして、レヴィは証書とバッジを取り出し、ルークに渡す。
「こちらは魔法騎士であることを示す証書とバッジになります。
バッジは常に身に着けておいてください。
それがあれば、魔法騎士である証明となります。
お渡しする物は以上になります。」
「ありがとうございます。
そういえば、魔法騎士の制服はいつ頃になりそうでしょうか?」
ルークの質問に、レヴィはちょっと考えた後、答える。
「そうですね、断定できませんが、来週くらいになると思います。
デザインは近衛師団の制服と、ほとんど変わらないと聞いていますわ。
ですからそれまで、お渡しした制服をお使いください。」
「わかりました。
じゃ、来週取りに伺えばよろしいでしょうか?
実は風系統の魔法もマスターしたので、
来週あたりに試験で王都に行こうかと思ってまして。」
それを聞き、レヴィはびっくりする。
「もう覚えられたのですか?
さすが、皇帝陛下が目にかけられる方ですね。
わかりました。
試験後にでも、私に“思念連結”して頂ければ、お持ちしますわ。」
「ありがとうございます。」
これで、レヴィからルークへのお届け物のやり取りは完了となった。